入隊
「……ぅ……んっ」
優しいお日様の光が俺の顔に注がれ目を覚ます。
外では小鳥が囀る声が聞こえる。
「ふわ~っ」
俺は欠伸をする。
ねむい……。後10分眠ろう。俺はそう思いたち目を瞑る。
「おいっ、ルークっ……。いつまで寝てるつもりだよっ!!」
下から怒鳴り声が聞こえてくる。
あ〜、無視無視。今の俺は眠いんだ。だから寝る。
「ルークっ!!」
その声と同時にドアが思いっきり開け放たれる。俺は目を開けてドアに目を向ける。そこから、亜麻色の短髪の少年が出てくる。
「ん……貴方誰ですか? 見覚えが……ちょっ、待ったっ!?」
少年が腰に挿している剣に手を掛けてるのを見て俺は慌てて静止の言葉を口にする。
「お〜っ、よく見れば、我が大親友……サイ・ブラントじゃないかっ!!」
少年……サイ・ブラントは剣に這わせていた手を離すと俺を睨みつける。
「全く……。いつまで寝れば気が済むんだよっ!!」
「いつまでってそんな時間経ってな……」
俺は近くにあった時計を見ると0830と記されていた。
「まじかっ!! 後、10分しかねぇじゃんっ!!」
「だからさっきから起こしてんだろうがっ!!」
そう息巻くサイを他所に俺は目を閉じ額に手を当てる。
「おい、何してる?」
「考えた結果、いっそ諦めて寝るべきかなと」
「いいからさっさと着替えろっ!!」
サイに言われ俺は仕方なく寝間着から今日から入る事になる軍服に身を包む。
上下ともに青い軍服で俺は少しこの軍服を気に入ってる。まぁ、日中の偵察とかには向かない色だけどな。
「サイ、着替え終わったぞ」
俺は胸を張って告げる。
「自慢気に言うなっ」
怒るサイに俺は手をブラブラと振りながら
「早いとこ行こうぜ、遅刻しちまう」
「誰のせいだよ、誰のっ……ほら、捕まれよ」
「ごめん俺そっちの趣味は……」
「ふざけてんじゃねえってのっ!!」
サイはそう言いながら俺の頭にゲンコツを叩き込む。俺は涙目になりながらサイの肩に手を置く。……痛い。
「彼の者……。我等を彼の地へと誘え……。テレポーションっ!!」
サイがそう唱えると俺達の足元に幾何学的模様の陣が展開され、そこから青白い光が発される。そしてその光は俺達を包み込む。
「……っ」
俺は眩しさのあまり目を瞑る。
眩しさを感じなくなり目を開けるとそこは今日から入る事になる、俺の暮らしてる国家ラルザルクの軍の入口前だった。
「は〜っ、相変わらずお前の転移魔法は凄いよな」
「お褒めに預かりどうもっ……さっさと行くぞっ」
俺達は軍内部に走り込む。
「確かっ……中央広場っ、だったっけっ」
俺は走りながらサイに問いかける。
「そうだっ……なんとか、ギリギリ間に合うかなっ?」
目の前に目的の場所……中央広場が見えてきた。
中央広場には俺達と同じこれから軍に入るであろう男女達が立ち並んでいた。
俺達は中央広場に着くと2人揃って安堵の息を吐く。
「良かったぁ、セーフっ」
「全く……初日から思いやられるな」
呆れたように言うサイ。
「静粛にっ!!」
広場に大きな声が響き渡る。
目を向けると壮厳そうに見えるほど眉間に皺を寄せている男が立っていた。
「ラドルフ総司令だ……」
呆気に取られたようにサイが言う。
「へえ~っ、国の大英雄のお出ましか……」
俺はラドルフ総司令を見つめる。
ラドルフ・カーン。200センチもある巨体の持ち主で服を着てる腕からでも分かるほど筋肉が盛り上がっている。
先の大戦……ウィル戦役と呼ばれる戦いで多くの敵を薙ぎ倒した事によりこの国、ラルザルクでは大英雄として語られ教科書などにも載る生きる伝説の人物だ。表向きは……。
俺はラドルフ総司令を見つめる。憎悪の念を込めて。
「……ルーク?」
無言で見ていた俺を変に思ったんだろう。サイが声を掛けてくる。
俺はサイを見ると首を横に振る。
「なんでもねぇよ……」
こんな事を思ったって仕方ない。
俺は胸に上ってきた憎悪の感情を必死に抑える。
「諸君達はは今日から我が軍……ラルザルク軍に入ってもらう。だが甘い気持ちで訓練に臨むことにないようになっ!! 下手をすると怪我だけでは済まなくなるぞっ!!」
ラドルフ総司令が必死の形相で俺達に演説する。
ここは遊びの場所ではないんだぞ……と。
「諸君達の中から英雄が生まれ、1日も早くザズ帝国を血祭りに上げてくれる事を切に願うっ!!」
ラドルフ総司令の言葉に周りの連中が雄叫びを上げる。サイもその中の1人だ。
俺はその光景の中……1人の女の子の姿を思い浮かべる。
『ルークっ!!』
楽しそうに微笑みながら俺を呼ぶ小さな少女の姿を。
――ごめんな……。あの約束は果たせそうにないや。
俺はそう思いながら、今日を以てラルザルク軍に入隊した――。




