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キスくらいで……

作者:

 「じゃ、私、先行ってるから……」


 と言って、返事も聞かずにその場を飛び出す。

 自分の閉めたドアの、ぴしゃん、という大きな音で、はっと少し頭が覚める。

 何度もさっきの光景が蘇る。


 また彼氏が女友達とキスしていた。


 罰ゲームだけど、どちらも、嫌がる素振りもなくキスをして、見ていて妙に嫌な気分になった。


 前の飲み会の時もそういうノリになって、女の子とキスをしていた。

 後で咎めると、彼氏は「なんだよ、キスくらいで。その場のノリだろ」と「嫌がる方が何か変な空気になんじゃん」「マジなやつじゃねーからいーじゃん」と笑って誤魔化そうとした。


「でも、嫌なの」


「気にすんなよ。ちゃんと好きなのはシノだけだからさー」


 と言って結局有耶無耶にされてしまったんだった……


 思い出しながら廊下を歩く。怒りなのか悲しみなのか……抑えられない感情が膨らんでいく。


 そもそも、分不相応な恋だった。恋人ができること自体、私にとっては奇跡みたいなもので、しかも、こんな格好良い人と。


(なんで、こんな私となんか付き合ったんだろう……。)


 元々、私は大勢と遊んだりするよりは、一人か少人数でゆっくり過ごしたいタイプだった。大学に入ってからも授業ごとに知り合いは増えたものの、一緒に行動する程の友達はおらず、それで別に苦にもならなかった。

 でも、何がきっかけだったのか、急に呼び出されて告白されてしまった。


「ごめん、よく知らないから」と断わろうとしたら、


「じゃー、知っていけばいいよ」


 と了承したように受け取られてしまった。

 そのまま、彼の友達とも遊ぶようになる。

 ノリが合わないようで、彼の友達からは"マジメちゃん"と言われることが多かった。


 客観的に見ても、どう考えても、釣り合ってる気がしなくて、頑張って洋服やメイクを合わせようとしてみても、「前の方がよかったな」と言われる。


(私の何が良かったんだろう。何回聞いても教えてくれないし……)


 そのまま、時間が経ってしまった。


 いつも遊ぶメンバーは、増えたり減ったりすることはあるが、変わらず定期的に集まって遊んで、いつものトコで飲み会が開かれる。

 

 最近は、罰ゲーム付きの遊びが流行っているようだった。私はノリが悪いからそういうのにも参加せずに傍観していることが多い。


 で、今回、また同じことになってしまった。


(やっぱりわかってくれなかった……)


という絶望が頭の中を占める。


(我慢できるならしてるよ……。でも何ともできないんだもの……。嫌なものは嫌なの。)


 涙が落ちそうになり、慌てて人気のいない部屋に入る。


 手の力が抜けてバッグがどさっと落ちる。


(あの場で気づかれたら、変な空気になっちゃうから。)

 気を使われて変な空気になるのも嫌だし、あのまま普通で、なんていられなかった。

(どうしたらいいんだろう。ああいうのっていつか慣れるのかな。)

 一人でぐるぐる考える。


 突然「おーい、大丈夫?」と言う声がする。一瞬、彼氏かと思ったが、そんな訳がなく、ハマノくんだった。


「ご、ごめん、気にしないで」


 もう泣いちゃいそうで、そう言うしかなくて、声が震えてたけど、取り繕えなくて、頑張って両手で扉を閉めるが、

 さすがに向こうの方が強く、扉を開けられてしまう。


 泣き顔を見て、はっとして、


「余計気になるし」


 とぎゅっと手を引かれ、そのまま、落ちるように、彼氏とは違う男の感触に包まれた。あ、抱きしめられてる。と気付いた。

 そのまま、涙が落ちる。


「ご、ごめん、服汚しちゃう」


 と、離れようとするのを


「いいよ」


 ぎゅっと抱き締めなおす。そして、促すように、背中を撫でられると、もう涙が止められなくて相手の服に変なシミを作ってしまうくらいに泣いてしまった。


 我に返って、どうしよう、と思っていると、


「キスする?」


「えっ、ちょっ、まっ」


 静止の声を聞かずに、顔が前まで迫っていた。


「まっ、まって」


 懸命に背けて、さけようとする。頬に柔らかく唇がかすっていった。


「なんで?」


「なんでって」


「向こうもしてるんだからいーじゃん」


「そうだけど、でも彼氏が……」


「キスくらいなら浮気じゃないんでしょ、むこーのリロンでは」


 た、確かに。なんとも言えなくなり、うっと言葉が詰まってしまう。


「じゃ、一方的にするからさ」


「えっ」


 と思っているうちに、唇に柔らかい感触が落とされる。耳元に、


「シノちゃんは被害者、何も考えなくていいから」


 と続ける。こちらの様子を伺うように優しく、触れるように、数回キスして。


 驚いて見つめていると、落したバッグから飛び出した物を拾い集めて、はい、と手渡される。


「またね」


 とぽんと頭に手を落とされる。

 しばらくして廊下がざわざわと賑やかになり、集団が通り過ぎて行った。きっと、彼氏や残ってたメンバー達なのだろう。


 その後、どうやって帰ったのかもわからず、気がつけば、自分の部屋の布団の上にいた。


 どうしよう、という罪悪感が心の中をしめる。

 どうしよう、別な人とキスをしてしまった。

 彼氏と女友達のキスなんて吹っ飛ぶ程の衝撃だった。


 キスくらいで。彼氏とは何度かしたことがある。その時も、する、しないで、わたわたしていたのを黙らせるように、唇を塞いで、それがファーストキスだった。


 けど、彼氏以外となんて……ハマノくんは、これまであまり話したこともない子だった。

 そもそも、同じグループて遊んではいるものの男友達とはあまり話したことがない。

 あんまり男の子が得意じゃないから。小さい頃から、男の子は乱暴でいじめっ子ばっかりだった。大きくなると、背もずっと高くなり体も大きくなって、チビで体も大きくない私にとっては余計に怖い存在になった。

 だから抵抗できなかったんだ、と思いたいが、全然、嫌ではなかった。彼は気遣うようなキスで、慰めるようにやさしくて、気持ちに任せるような痛いくらいの彼氏のキスとは違ってた。


 何も考えなくていい、と言ったけど、ぐるぐると考え続けてしまう。


 (バレちゃったらどうしよう、どうなっちゃうんだろう)


 そんなことを考えていると、スマホがプルルと震える。彼氏からメッセージが着ていた。

「おやすみー〈絵文字〉」


 いつも通り、おやすみ と返そうとして迷う。


 (この返信で今日のこと、言っちゃう?)


 スマホを持つ手がじんわりと汗ばむ。


 (でも、キスくらいで……)という言葉が頭をよぎる。


 (いちいち、言うと変な空気になっちゃう、よね。

 会ったら言う? でもいつ? 呼び出す? どこに?)


 その晩は返信できず、一睡もできないまま布団の上で座り込んで考え続けてしまった。

 傍らで、


 寝不足のまま、夜が明ける。

 少し早く家を出たら気持ちも落ち着くかもしれないと思って早めに準備をする。


 明らかに酷い顔をしてたのを、必死に調べて、タオルとかで冷やして、メイクで誤魔化す。


(ちょっと濃い? いつもと違うってバレちゃうかな。)


そういう余計なことを考えてしまって結局、いつも通りになってしまう。


 この時間だと彼氏に会ってしまう。


 案の定姿を見つけて、避ける訳にもいかず、一瞬だけ迷って自分から声をかける。


「おはよう、ごめん、メッセージもらったのに。昨日……寝ちゃってて気付かなかった!」 


「おー」


 全然気にしてないような感じで流されて、そのまま別な話になる。


 誰々がどうとか誰某がこうとか……


 出てくるのは女の子ばっかりで、いつもは、ムカムカしながら聞くのを、自分の中の罪悪感からか、全然気にならず「そーなんだー」と自分でもわざとらしい、と思うくらい明るく返事をする。


 結局、言えずにその日が終わって、機会を逃すともう、言えなくなっちゃって、やっぱり自分ってダメだなという、思いだけが残った。


☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・


 次の飲み会の時、やっぱり、そんな流れになって、彼氏は別な子とキスをしていた。

 思わず、ハマノくんの方を見てしまう、一瞬、目があってしまい、慌てて逸らすように俯く。


 そんな不審な行動に誰も気付いていないようで、ゲームが進行していくのを見ながら、何かのついでのようにこっそり席を立つ。


 賑やかな集団から離れて、ほうとため息をつく。

 今逃げたのは、彼氏に対する嫉妬なのか、自分の背徳感からか。区別がつかないまま、もう、普通の顔して、みんなの所にら戻れないような気持ちになっていた。


「今、オレのこと見てたでしょ」


 背後にハマノくんがいた。


「べっ、別に……」


 見てないとは言えずにいると、そのまま顎を固定されて、目をギュっと閉じると、柔らかい感触だけ唇に残る。強引な仕草になのに、触れる時は優しくて、不思議と少し気持ちが落ち着く。何度か繰り返すのを待ってしまう。


 急に離れて、なんでだろうと思って見上げると、ハマノくんはポンポンと私の頭に手を落として去る。


 他の足音がして、自分がそれに気づかないほど夢中になっていたんだと気が付く。


 そういえば、抵抗をする振りすらしなかった……。


 頭から振り払って、元の部屋に戻る。

 みんなは戻ってきたことすら気付かず、元いた場所は別な人が座っていて、彼氏からもハマノくんからも遠い場所が空いていた。心の中でどこかほっとする。


☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・


 文句を言わなくなったら、彼氏との関係は良好になった。

 考え方のすれ違いなどが起こらないことを良好と呼ぶならばまさしく良好。やっぱり私はこの人の彼女だと自分で言い聞かせる。

 キスも普通に出来るし、一緒にいても余計なことなんて一切考えない。

 

 前とは違って、他の女の子と話していてもあんまり気にならない。これがあの人の彼女として正しいあり方なんだ。他の女の子距離感とかボディタッチとかも気にならなくなる。そういう人だし。これでいいの。


 そして、何回か、彼氏が誰か別の女友達とキスをする度に、私はこっそりハマノくんとキスをするようになった。


☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・


 ある飲み会で、彼氏が女の子とキスをしていて少し嬉しい気分になっていることに気が付く。

「あっ、またハマノくんとキスできるな」と。思って直後、後悔に襲われる。

(ちょっと待って、今、自分、何を思ったんだろう。うそうそ、今のは嘘。)

 

 なんで、どうしよう、と戸惑う。


「ごめん、先帰る」


 と、言ってお金を置いて、飛び出す。


 自分の彼氏は、あの人なのに。


 いつからだろう。二人っきりの時間がなくなっていたのは。


 前までは、デートすることもあったし、学校で2人きりで登下校することもあった。

 今は、誰かがいるのが自然で、彼氏に対して二人っきりでいることを望むこともなくなっていた。


 そういえば、クリスマスも正月もみんなで集まった。その後、一応、二人の時間がある予定だったんだけど、結局みんな解散することなく夜が明けていて、その予定は簡単になくなった。

 儀礼的に予め決めておいたプレゼントをささっと渡し合って、カップルの行事は終わり。


 明日になれば、自分が見なかった振りをすれば、今まで通りの日が続くのに、どうしても、疑問が浮かび上がってしまう。


 それを必死に押し込める。


「どうしたの」


 ハマノくんが後を追いかけてくる。

 こんな時すらも、彼氏ではなく、ハマノくんだったことを喜んでる自分がいた。


「何でもない」


 逃げようとするが、捕まって


「シノの何でもない、はなんでもなくないでしょ。何?」


 答えられずにいると、


「なら、気にせずキスできるね。」


「だめだよ、だって」


 だって、何でだろうと思う。


 "あの人と付き合ってる意味ある?"


 疑問は完全に言葉になってしまった。


 そのまま、自分からハマノくんに身をゆだねてしまう。


「キスして」


「いいよ。」


 少し驚いてから笑って、顔を近づける。

 キスしながら、彼氏とは別れようと決めた。


☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・


 次の日、呼び出そうとするが、忙しいようでなかなか捕まらない。

 で、何とか呼び出して、


「なんだよ」


 と不機嫌そうな彼氏に、


「忙しいところごめんね、あのね……」


 少しだけ迷って


「別れよう」


 その言葉に一瞬止まる。すぐに、受け入れてもらえると、思ったのに。


「何でだよ!」


 なぜか逆ギレされる。


「だって一緒にいる意味なくな……」


「そんなに嫌なのかよ! 何がそんなに嫌なんだよ!」


「言ったよ、けど、わかってくれなかった」


 その後、「言った」「聞いてない」の応酬をする。


「他の子とキスするのやめてって……」


「そんなことで別れるなんて!」


「聞いてもくれなかった………」


「言わなくなったじゃん! わかってもらえたと思ってた。」


 静まり返る。


「次からちゃんと直すから」と聞いても、「あ、ちゃんと直せるんだ」と冷めた気持ちでいる。


「別れたいの……」


「俺は別れない、別れなくない」


「もっと、イイ人いるよ」


「なんでだよ! そんなこと言うなよ!」


 と恫喝するように言われる。彼氏は予定があったようで、時計をみて舌打ちしながら「別れないから」と念を押すように言って席を立ってでていった。


 一人取り残されて思う。

 あんな風になるとは思わなかった。


 向こうだって、関心ないようだったから、簡単に別れられると思ったのに。


 家に帰って一人で考える。

 プルルと震えて、彼氏からメッセージがきていた。


 メッセージを開くと「絶対別れないから」という言葉だった。


 あんなに放っておいてたのに、今更、という気持ちでいっぱいになる。


 もう、つらくなっちゃって、グループ全員と連絡()って、逃げ出しちゃおうと思っていた。

 飲み会なども行かないことに決める。幹事をしている子に、欠席の旨を伝えようか迷って迷って、結局やめる。元々、ドタキャンが多くて人数は、不安定だったし。


(ハマノくんとも会えなくなるな……)


 心が少しずきりと痛む。でも、もう接点を持ちたくなかった。


 その後、通学の経路や時間を変えれば簡単に会わなくなって、お互い履修している科目も学科も違うから姿も見なくなる……。


 こそこそとしていたのは数日で、しばらくしたら普通に過ごせるようになった。 


 忘れて自分の将来のことを考えようと決める。


 就活とか始まれば余計に通学の時間もバラバラになる。


 ある日部屋のチャイムがなり、ドアを開けると現れたのは、ハマノくんで、驚いて、慌てて閉めようとする。


 が、向こうのほうが力が強く、開けられて結局、家に招き入れることになる。


「ちゃんと出る前に確認したほうがいいよ、オレがいうのもなんだけど。」


 少し笑いながら言う。「でも、元気そーでよかった」

 と真顔で言う。「で、何があったの?」


「何も……」


「なくはないよね。」


「彼氏に別れようって、言って……でも、別れられなかった。」


「いつ頃?」


「二週間くらい前かな……」


「そっか。」


「付き合ってる意味ないって思って、向こうもすんなり受け入れてもらえると思ったのに……」


 ぎゅっと懐かしい温もりを感じる。

 そしていつものようにキスする流れになって、


「だ、だめ……」


「なんで?」


「だって好きになっちゃったから……ハマノくんのこと好きになっちゃったから」


と言うと、ハマノくんは、


「なんだ、よかった」と微笑む。「ずっと好きだったから」とぎゅっと抱きしめる。


「よくないよ! だって、別れられなかったし!」


 結局、泣きじゃくってしまう。

 背中をトントンと叩きながら


「そっか、がんばったね」と欲しい言葉をくれる。


 落ち着いた時、結局、キスをしてしまう。


「あとは、オレにまかせて」と。


「だっ、だめだよ。」


「なんで。」


「そしたら……」


 どうなっちゃうんだろう。「グループのみんなが……」でも、私はそのグループから離れる予定なのに……。「彼氏も怒って……」でも、その彼氏と別れようとしてるのに気にする必要はあるのだろうか。


「大丈夫だよ。何とかするし。オレは彼女を一番に考えるヒトだから。」


「か、彼女いるの!? それじゃ、もう帰った方が……」


 おろおろすると、ぎゅっと抱きしめられる。


「やだ、もう少し彼女をたんのーする」


 と耳元で囁く。


 結局、その後、元彼やグループのメンバーとは一度も会うことなく、卒業してしまって、今どこで何をしているのかすらもわからない。


【恒例の男性目線】


 女達が「最近、アイツ来なくなーい?」みたいな話をしている。

 アイツとは、シノのことだ。参加しなくなって結構経つのだが今頃気付いたのかと別な会話に参加している振りをしながら耳をオレは澄ませる。


「うちらがやってんのバレたんじゃね?」


「んな訳ねー あいつがわかるわけねーし」


 とケラケラ笑う。下品な会話だが声を潜ませる気もないようだった。


「お前らのせいだろ」


 その輪の中心にいる男が言う。これが、シノの元彼だったヤツだ。


「うちらのせいにしないでよー。ヤマもノリノリだったじゃん」


「あ、さすがにバレたんだぁ、うけるー」


「ざけんな! 最近、返信すら来ねーし!」


 だんっと机に八つ当たりする。

 スマホを忙しそうに操作しながら言う。

 数秒もしないうちに、オレのカバンの中がプルルと震えて、メッセージ受信を告げる。

 シノが気にしてしまうので預かることにしたのだ。ちなみに、シノは既に新しい物を使っているので、一切見ていない。


「別れるとか、ないない、アイツにそんな根性ないってー」


 女が横で笑う。


 山本(彼女の元彼)はシノと真剣に付き合っていたつもりらしい。だが、本人たちが知らないところで、悪趣味なゲームが始まっていた。

 元々、山本を好きだったある女が、「奪い取れるか試してみない?」と言い出したことからはじまったらしい。

 でも、あいつらにとっては、あくまで"遊び"であって、"本気"ではないのだ。咎められたら"マジじゃないから"という逃げ道を残しているのだ。

 

(前はもう少しまともな連中だったんだけどな……。)


 中高生の頃から遊んでいた仲間だった。みんなでバカやったり怒られることも多かった。

 が、気がつけば、そういうメンバーばっかりになっていた。


 ノリで、いじめに近いことを色々やって、指摘をすると「遊んでるだけ」だと言い張る。ノリが悪いそっちが悪いように指摘するのだった。

 

 オレがこいつらの遊びの道具(ターゲット)にされかけた時もそうだった。強い酒散々飲まされて、マジでヤバいと思った時も、苦しんでるのをみて、「ウケるー」とか笑ってた。

 「もう、やめとこう」とか、「大丈夫?」と聞いてくれてたのは彼女だけだった。

 その時も「真面目か」とか「ノリじゃん」とからかわれても、怯まずに対処してくれた。そのお陰で今オレは生きている。

 そんな彼女が、あいつらのターゲットになるのはそう時間はかからなかった。


 女達がゲームを始めてから、山本もモテるのは満更でもない様子で平気で他の女と遊び出す。彼女を守りもせず、苦しんでるのも気づきもせず。


 別れるのを拒否して彼女に執着してんのは、どーせ、自分が振られたという事実を認めたくないだけだろ。


 まだ醜い会話は続いていた。


 それを聞いていない振りをしながら、一応録音しておく。

 何かあった時に役にたつかもしれないし……。


 笑ってしまうが、こいつらは、世間では清楚系で通っているのだそうだ。しかも、結婚の話まで出ているヤツもいるそうで。


 これが表に出たら、そーゆーの、どうなっちゃうんだろうなー、と仄暗い想像を膨らませる。


「じゃ、オレ帰るからー」


 そう言って出ていく。女達は、えー、もうちょっと遊ぼーよー とか言うが、


「よーじあるからごめんねー」


 と出ていく。もう物証も充分揃ったし、こいつらと、関わらなくていい。


 清々しい思いで、明るく暖かい部屋に帰る。

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