83《健が恋患い?》
8月12日の帰りの電車(紀勢本線)で少し会話した際、明らかに健を意識してたひよりの様子にちゃんと気付いてた健。※勿論秋は全く気付いてない。
帰宅後、時間が経つにつれてひよりの事が浮かんできてしまう健。
目が合った時の表情と、その時恥ずかしげに髪を耳にかける仕草が頭の中で無限リピート。
(俺の事意識してる…?なんて、俺の自意識過剰!でもひよりちゃんって可愛いな)
ずっとこの調子で、登録販売者の勉強の復習も上の空であった。
そして翌13日夜、仙台の父から電話が。
『健ーっ前は帰れないって言ったけど、調整したらお盆帰れることになったわ。でも明日は無理でな、だから15日のお昼にそっちの家に着くと思うから。健家にいるか?』
「14はバイト休みだけど15.6は入ってる。仕方ないから家には合い鍵で入って?」
『そうか、OK』
かくして14日は朝から家中大掃除の健。特に汚い訳じゃないけど…
なぜマッハでしてるかというと、それは今日も路上があるから!
七郎は今日はモンプチがあるから秋と二人。
秋曰く“お盆にやるってのが重要なんだよ!帰省客の目や耳にとまる事でお盆明けは全国に拡散だ!”という事だが勿論、とらぬ狸の皮算用…
さて時計を見ながら急いでたけど、気付けばギリギリ。
「やっべ!」
急いで雑巾を片付け、手を洗い、チャリに飛び乗った。
東松阪駅で健を待ってた秋は。
「あ、おーいっギリギリだぞ!」
「ごめんごめん、大掃除しててさ」
「って、お前ギターは?」
「えっ、あ!!」
サーッと血の気が引く健君。
「まあ兎に角行こーぜ、電車に遅れるっ」
ホームに駆け込むと丁度電車が来た。
「ふー、超ギリギリ。間に合って良かったー」
「どうしよ、ごめん秋ちゃん、今日は俺見てる係するよ」
「何言ってんだよ!俺達二人でRUIだろ!」
「秋ちゃん…」
台詞に感動しちゃったけど。
「でもギター無くちゃ…」
「お前今日はアカペラで唄え」
「え」
「それしか無いじゃん」
「やだっ恥ずかしーよ~」
しゃがみこみ。そんな健を見て考える秋。
(にしても珍しい、健が忘れるなんて、よりによってギターを)
「大~丈夫だって。恥ずかしくないフリしてれば。俺に一人でやらす気か?」
「…分かったよ…忘れたのは俺が悪いし」
ため息。秋は
(ま、冗談はここまでにしてと)
「お前なんか悩んでんの?」
「えっ?べ別に?」
「ふーん。あっやし~」
「何でもない、ホント」
「そうかぁ?けど何でも言ってくれよな!まあ、もうこんなポカすんなよ?らしくないし」
30分後at津駅前。
「でもアカペラって言うからついやだって言っちゃったけど、冷静になったら単に1本のギターで二人で唄うだけじゃんね。別に普通じゃんね」
「なんだ、よーやくそれに気付いたか。お前今日ホントおかしいな」
「だよね、反省してる」
(自分でも、俺ホントどしたんだろ…だって、ひよりちゃんを思い出すと…)
頭をフルフルッとする健。
秋はギョ
(なっ、なんだ!?)
「おいタケ!」
「あっごめん何?」
「いや、何でもねーけどまたボーッとしてさ。マジで大丈夫?家の鍵ちゃんとしてきた?」
「あ、それはした記憶あるから大丈夫」
「そか?でもそれにお前なんか顔赤くね?」
「!!ほら暑いし!?」
Tシャツの襟をパタパタさせた。秋は目をパチクリ。
「でもさ、そうゆうのって恋患いとか言わねーか?」
「!そんなこと…無いよ」
小声で俯き。これには流石の秋でもピンときた。
(健が恋?相手誰っ!)
健を横目で見て、
「ふーん。んじゃー始めっぞー?」
「うん」
ライブが始まると普通の調子を取り戻したように見えるタケ。
秋はちょっぴり心配だけど、それ以上は突っ込んだりからかったりしませんでした。
――帰りの電車内――
「そーいや日浦のやつ茜とどうなってんのかなー?メールしてみっか!」
(ドキ!ひとの事なのになんで俺動揺してんだよ)
健は赤面。
「ん?なんで健がドキドキしてんの?」
「いや別に!?ひとの事でも自分の事のように緊張するよね!」
「は?(笑)何ゆってんだよ(笑)」
メール送信の秋。
3分後。
「日浦のやつ“頼むからその件について突っ込んでこないで”だってさ~ウケる」
「あはは。意外な弱点だね」
(ああでもひよりちゃんて俺の事どう思ってんだろ、だってあの態度気にするなって方が無理じゃん)
健の頭はもうひよりループに戻っていて半分上の空。
at東松阪駅。
「じゃーな健!戸締まりとか火の元は気をつけろよ?」
「うん大丈夫!じゃね!」
一応いつも通りに颯爽とチャリで去るが…
(俺…ホントどうかしてる…もう恋なんてこりごりなのに…)
ゆっくり立ちこぎで、またひとつ頭を振って、健は唇を噛む。
(どうしよ俺…ひよりちゃんが気になる)
その後ろ姿をちゃっかり見送って秋は
(恋患い…間違いない。しかし一体誰に)
そこには気付かないのだった。
誕生日の失恋で臆病になってる健。自分の気持ちを認めるが戸惑うのだった。
ここ数日の超小春日。スピカは今日も近所の散歩。空き地の草の上で仰向けに寝転がってる若い人がいた。よい人物に違いない…
イケメンもいるし、美女もいるし、町内も中々のもんだなと思った。
そうゆうのって生きる力になるよね。




