117《ドリームアイランド》
10月15日(火)健朝帰り後、秋からきたメール
〈まだポニーから返事きてないし頑張ろうな〉
健の返信は
〈望みは捨てずにね〉
ところが昼過ぎ、秋にポニーキャニオンからまた不採用という返事が…
PM5時
帰宅した健は自転車から降りてギョッとした。
「秋ちゃん何してんの!?」
秋が玄関前で膝を抱えて膝に顔を埋めて丸まっていた。
「いつからいたの!?」
「健…」
顔を上げた秋は憔悴した顔をしていた。
「何?どしたの?」
「…っ」
ガバッと飛び付いてきて健にしがみついた。
(秋ちゃん震えてる?)
健は気付く。
(またデモ不採用だったのか、今まで落ちてもいつも明るいままだったけど本当は)
ぎゅ…
健は秋を抱きしめ返してやった。夕陽の中玄関前できつく抱き合う。
「秋ちゃん…やっぱ駄目だった?」
「…うん…」
「秋ちゃん…」
「健…俺、俺…っ!まだ歌いたいよ…ずっと歌ってたいよ…!」
(泣いてる…どうしよ慰めなきゃ、いつも元気な秋ちゃんがこんなのって、調子狂う)
「…うん、秋ちゃんがそうするんなら俺はどこまでも一緒に行くよ」
「っく、健ぅ~っ」
顔を上げた秋は涙ぐんでエグエグしてた。
「ほら、なんて顔してんの」
「わりぃ、でもずっと我慢してて。俺小説もイラストもやってるけどそん中じゃやっぱり歌が一番なんだ」
「うん…歌は、ずっと続けようよ、一緒に」
秋の目からスーッと涙が流れた。
(秋ちゃんは本当にミュージシャンになりたいんだもんな、こんなの初めて見た)
放心状態の秋。健は改めて秋を抱きしめてやった。
(うんうん、分かるよ)
5分程そうして―――
ワンワン!
「!」
パッと離れて秋は下を向いて。
犬は手前で吠えたので飼い主には抱き合う所は見られなかったはず。
「とりあえず中入ろ。顔洗いなよ、目冷やした方いいよ、今夜バイトでしょ?」
「うん、わりぃな健」
秋が涙をぬぐった。
ジュースとポテチでもてなす健。
「まださ、望みはあるよ。だから21までちゃんと頑張ろ?」
「健…天使の笑顔に見えるよ」
またエグエグしそうになる秋。
「あっほらもう泣かないでってば」
「うん」
「もしプロになれなくても路上はやれるしホムペで曲出してるし」
「うん、確かに路上は今後も頑張ろーな。続けれるだけ続けるけどマジでついてきてくれるんだよな?さっきそう言ったよな?」
なぜか笑えるジト目。
「あー、言ったね(笑)
とにかくまだ最後じゃないからさ、元気出して」
その夜、秋を想いながらギターを抱いた健。
(なんかしてあげたいな。でも言葉じゃいくら言っても足りないから…なんか曲、プレゼントしたいな)
秋に今伝えたい気持ちをイメージして健は曲を作り始めた。
そして日付が変わる頃―――――――
「できたっ!」
(秋ちゃんに早く聴かせたい、タイトルは…)
少し考えて。
「そうだよ、ドリームアイランドだ」
こうしてあの名曲ドリームアイランドは出来たのだ!
今10月16日AM2時16分になったところだ。健は秋に早くプレゼントしたい一心で夜中なのにチャリに飛び乗った。
チャリを飛ばして秋のバイト先である垣鼻町のセブンイレブンに駆け込み、たかたかっと急いで健は入店した。
「秋ちゃん!」
他に客はなく秋はモップをかけていた。
「あっれー健ぅ、どした?明日のポテチが無かったの?よっぽど急いで来たんだな~」
健は軽く息を弾ませて
「そんな事よりこれ!」
秋にルーズリーフを押し付けた。
「へ?」
秋は見て目を丸くした。
「これ!新曲じゃん!」
健ははにかみ、
「さっき出来上がったんだ。とにかくすぐ秋ちゃんに渡したくて…」
「ドリームアイランド?」
ざっと読んで
「健ぅ…」
ウルウルしちゃう秋。
「あっも~泣くなよ仕事中だろ、秋ちゃんにね笑顔になって欲しくて作ったんだ。だから元気出してよ。RUIは秋ちゃんが引っ張ってくんなきゃダメだ」
「健ぅ、だめだ俺泣いちゃう~~~」
本当に泣いちゃう。
「あーも~ほらティッシュ」
かいがいしく世話する健。するとガチャ!バンッ
トイレから勢いよく人が出てきて両手指差しで
「君達超Eねー!!」
体を回しながらエアつつきしてくる。
驚く健、全然平気な秋。
「先輩帰りスか?」
よくトイレにこもる先輩は今日も上がりの1時からトイレでスマホゲームをしていたのだった。
「いーね麗しき友情!この目にちゃ~んと焼きついちゃったもんね!
友の為に徹夜で曲を作り上げ出来たてを渡す為に深夜なのにチャリで駆けつける!最っ高だよ~!」
キメの親指立てウインク。
健は冷静に会釈。
(テンションたけぇな)
「ども、深夜なのに無駄に元気スね」
左胸を押さえてよろめきジェスチャーの先輩。
「今なんか刺さったぁ!まあいーけど」
すぐケロリとすると
「君が秋ちゃんの相方の健君かぁ、イケメンだね合格っ!」
「別に審査されに来たんじゃないっス」
「また刺さったー!
健君て天然?じゃなきゃさー、俺っちガラスのハートが傷付いちゃうよー」
「?何が?」
「天然なんだよね!?天然ってゆって!」
迫って拝まれ引く健。お構い無しに真面目に読んでた秋は…
「健、これマジにいいぜ…すぐ路上で使おうぜ」
目がキラキラ。
「見して」
先輩はギター分かりません。
「うん俺歌詞しか見れないけどいいね、“君”って秋ちゃんのこと?」
「はい一応ちょっとだけ含みで」
「そっか!“イメージを取り払った秋ちゃんはそのままで美しいから頑張って♥”て意味か~」
「いや~照れるぜ」
「いや、そうなんスけどね」
「秋ちゃんがよく“健はカッコいい”て言ってるよ。
君達赤毛と金髪で見た目やる気満々だよね!路上でモテるんじゃない?」
「俺らはチャラくないっス」
「すがる女は袖にふるしな」
「まだすがられた事無いし木村が来て逃げちゃうけどね」
「へー(笑)でもドリアイもめちゃEし~他の曲もEし、あ、ホムペで聴いてるよ秋ちゃんに教えられて」
「!ありがとーございます!」
ガバッと礼。先輩はキメて
「俺もうRUIのファンよ?」
「!…っ」
健は慌ててまたペコリッとした。満足げな先輩は
「んじゃ俺帰るわ」
「トイレ先輩また明日なー」
「さようなら」
「またねタケ♪」
リュックをひっかけ振り向きながら笑顔で手を振り、ドア横の壁にぶつかるという芸を披露してから去っていった。
「トイレ先輩って木村と感じが似てない?」
「かもな、ま、楽しい先輩だぜ」
日浦に電話すると、深夜3時前に起こされても…
『それは良かったな!いや俺もな?実はコンテストから帰ってすぐ曲作ったんだよ。“刻の雪”ってんだ。後で聴かすから覚悟しとけよ?(笑)勝負だ!』
「日浦もRUIも新境地に踏み出したって訳だな。よしゃ、俄然やる気湧いてきたー!」
「やったね秋ちゃん復活っ!」
「ドリアイ=夢の島=埋立て地、最終処分場」です。
東京に昔 夢の島 て埋立て地あって、今は運動公園とかになってるらしいですね★




