115《バンドコン本番》
10月14日(月)西山堂バンドコン本番当日、ざわつくロビーの隅で。
「いいか!?ラストデイズに台風のせいで練習できなかったのはどこも同じだ。だから、だからっ…全力な!」
秋が真剣に言うと健&七は
「イエッサ!」
3人で円陣肩組みの最中に日浦が
「ははっお前ら超青春」
「日浦!お前も加われ!その方が円陣が大きくなる!」
「ほら!」
間をあける七&健。
「!そうか?なら」
本当は羨ましかった日浦はすんなり入る。
「全力出すぜ!」
秋が言って3人は
「おー!」
そして七郎が
「皆の目に僕らを焼き付けるっ」
健が
「練習の成果を出す!」
日浦が
「今日から全ては始まる!」
秋が
「頑張ろーな!」
3人の肩や背中をバシバシ叩く秋。
「いてて」
「もうええわ!」
日浦が秋の後ろから頭をロック!
「気合い入っただろーっ!?」
「もう充分だよ」
健はニコニコ。
「僕の気合いはこれで入る」
七郎はピンクリップを出して塗り秋は
「俺にも貸してっ」
今日のnanacoはラメ入りグレー薄手ロングカーディガン・鎖骨見せ白T・つぎはぎデニムサルエル。
日浦は黒ジャケット・黒ノースリーブ・ブラックデニム・黒コンバース。
秋は七分ボーダーロンTの上に赤T・ハーパン。
健は灰色パーカー・ダメージデニム。
ここで改めて西山堂バンドコンの説明をしよう。
準備含め持ち時間15分以内ならOK。
RUIはバンド部門で「希望」「スターライト」「エバーグリーン」、日浦はシンガーソングライター部門で「サクラ」「ミラクルレモン」「君がみて」をやる。
バンド部門が先で日浦は午後。互いに客席で応援する約束で…
RUIの番である!nanacoのかけ声から入る。
「いくぜっ!」
♪~…
希望は健ボーカル。ドキドキしつつ胸で拳を握りしめる日浦。
(うむ、健のやつマイクにかじりついて歌うやり方なんとか様になってんな。nanacoのかけ声可愛いかったし)
キィーン、と残響で終わりすぐさま目配せし合ってスターライトに入る。思わず頷く日浦。
(秋は流石だな、安定感ある)
アウトロで健が跳ね、秋もアクションを入れた。かっこつけたポーズで終わりまた間髪入れずnanacoのカウントはスティックを高い位置で。
エバーグリーンは疾走曲らしく軽快に走るドラムとギター。秋はマイクに口を付けたまま魚みたく体を左右に動かし、健も頑張って跳ねまくり。
演奏終わり、日浦は目一杯拍手した!はけたRUIを迎えにいき…
「あーんもう超緊張した~っ」
「けど失敗無かったな!よくやった!」
秋が七郎の頭ワシャワシャ。健も高揚した顔で
「nanaco本番強いんだねー」
そこに日浦が合流して
「お前ら超良かったから!も最高!かっこいい!」
パチパチ
「サンキューっ!客席にお前がいたのちゃんと見えてたからすげー心強かったぜ!」
抱きつき。
「日浦の時も思っきし拍手するね♥」
「うむ、しかし緊張してきたー!」
「ある程度緊張してた方が逆にいいよ」
もうリラックスしてジュースを飲む健。
「ほんとはお前自信あんだろ?これがあるからデモ作んなかったんだし」
秋に言われ日浦はギクッ!
「いやしかし緊張はするよ!?それだけに!」
秋は流し目で両手指差し。
「それだけに?ちゃんと実力百パー出しきれよ?」
「日浦っ頑張って♥」
「うむ、客席にお前らがいるなら出来る気がするよ。ははっ」
「じゃあ飯くおーよ」
「よっし腹ごなしすっか♪」
日浦のステージは颯爽としていた。愛嬌等は一切振り撒かず、クール一徹!
「あいつこんなとこでクール演じてるし」
「でも全然愛想無いけど情熱は痛いくらい伝わる」
「日浦真面目バージョン」
「かっこよすぎじゃない?日浦なのに」
「演技の練習したんだな、化けの皮が剥がれねーように祈ろうぜ!」
祈る3人。
ミラクルレモンだけちょっぴり愛想振った他は終始ビシッとクール!
「ありがとうございました!」
「いいぞー!」
秋をチラッと見て小さく頷きはける日浦。迎えにいくRUI。
「やったな!完璧クールだったぜ!」
「うむ、あれが俺の本来の姿だ」
「超良かった♥」
「サンキュ。あと残り見に行こーぜ」
結果…日浦はシンガーソングライター部門で、なんと2位!1位は赤沢佑耶。RUIは名前が呼ばれなかった…
トロフィーは自由の女神にちょい似のミューズ像。ゴールド、シルバー、ブロンズでサイズ同じ色違い。約4㎝の台に部門が書いてあり、像は約15㎝。
(2位だ!ヨッシャー!これで契約なるか!?)
日浦はドキドキしながら表彰式を終える。ところが…
「赤沢くーん!」
「赤沢くん」
「赤沢くん!」
「待って赤沢くんっ」
「赤沢くんこっちいいかなっ」
日浦を素通りして記者やら業界関係者やらが、みーんな赤沢の所へ!
(ガビーン!何ソレー!!オレは!?)
もう完全に赤沢ワールド。
秋が日浦の肩をポン。憐れみの目を向けた。
「残念だな…」
だが目が若干笑っている。健も
「赤沢は都会的イケメンだもんね、日浦は田舎っぽいってゆうか…しょーがないよ」
七郎も
「赤沢は今すぐでも雑誌とかに写真載せたいもん」
「だから落ち込むな」
「慰めになっとらんわ!(泣)」
結局日浦は契約に至らず、ため息をついた。
「はぁ、やはりレコード会社にデモを送るしかないのか…」
帰りに励まし合って別れたRUI&日浦。
だが日浦は気持ちが収まらず、家に帰るや沸き上がる想いで「刻の雪」という曲を一気に書き上げた。
そして悲しみが収まるまで部屋で弾き語った。
勿論、庭のリキは真を励ます為、ずっと合わせて遠吠えをしていた…
♪静かに降り積もってゆく 刻の雪が
日が当たればすぐにでも 溶けてゆきそうな
密かな願い 確かな想い
明かさぬ未来への希望
互いにそれを知っていた ただ刻は止まらず
… ああ消えないで消えないで
降り続ける刻よこの先も
ああ消えないよ消えないよ
心に降る雪は 積もるだけ
「ワオーン、ワンワン、ワオーーーン…」
こうして結局、RUIと日浦のバンドコン順位対決は日浦WINで終わった。
だが実は、RUIは三位内には入れなかったが次点だったのだ!
当人達は知らないのが切ない。
今夜は食パンと抹茶オレで寝ます。夢でRUIと日浦のライブ見たいです。




