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夜神アリスの日常  作者: スルメちゃん
夜神アリスの家
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二章:夜神アリスの家C

次の日、アリス達の家の者はリュウガを除く兄弟全員が平日だというのに休んでいた。アリスは基本、早起きが苦手なので午前十時になっても起きなかった為、寝起きのシュロがこっそり起こしに行った。

「おーい、アリスー。起きろよ。」

シュロが大きめの声で言ってもアリスは全く返事をしない。仕方ない、こうなったら、とシュロが無断でアリスの布団に入り込む。

「おい、アリス起きろよ。」

耳元で微かに囁くと、シュロはアリスから強引に布団を奪い、馬乗りになる。

「ぐふっ。なんですか、、。え、きゃあああ。」

アリスが目を擦りながら眼鏡をかける。途端に抵抗しようとするがシュロによって身動きがとれない。

「へへ。アリス、起こしてやったんだぜ。昨日の続きがまだ残ってたなあ。」

ニタっとシュロは笑うと、アリスの胸に手を乗せようとする。

「い、いや。やめてください。」

「やめなさい。」

バチコンと思いっきりシュロはトラッシュによって叩かれた。

「シュロさんはなんでそんなに女の子に手を出したがるの?キモイんだけど。」

「いってえ。お、おはようトラッシュ。なかなか可愛いじゃねえか。」

「おはようございます。ふああ。じゃ、朝ごはんを頂きましょうか。」

「おうよ。」

 アリスはシュロと、トラッシュは共に螺旋階段を降り、大広間に向かう。アリスとシュロの髪はどちらとも寝起きの為ぼさぼさだった。それを見かねたセリカが、早く顔を洗って髪を整えてこいと怒る。仕方なく、二人は玄関に続くバスルームへ。そこに設置してある四台の洗面器を使い、顔を洗う。アリスはくしで髪をとき、その後自らの手を髪にかざす。アリスのダミーの機能である、超光熱が発動しアイロンの役割を果たす。

一方シュロは腰までかかるロングヘアーをくしでとき、黒いリボンでとめ、ポニーテールにセットする。洗顔フォームを顔につけ、念入りに髭を剃った後水で流す。そして、うがいをする。

「はあ、やはり朝は苦手です。」

「そうか?俺が毎朝添い寝して起こしてやるぜ?嬉しいだろ?」

「嬉しくないです。」

「ああ、そうかい。ちっさい頃は添い寝してたのに。今ではもう成長しすぎて恥ずかしいのか。お兄ちゃん、がっかりだぞ。その成長姿を生で見られなくて。」

「シュロ君、それセクハラですよ。あと、添い寝してたのっていつの時代ですか恥ずかしい。」

ジト目気味にアリスが歩きながら言う。

「いや、感情がこもってねえ。くそ、そうゆうとこは可愛くねえええ。」

その反応をアリスは無視し、再び大広間に戻る。

大広間は甘い蜂蜜の香りがうっかりよだれをたらしそうな具合に漂っていた。どうやら今日は蜂蜜かけフレンチトーストと、ホットミルク、そしてブルーベリージャム入りのヨーグルトが朝ごはんのようだ。

「おはようございます。皆さん。」

「おはようアリス、シュロ君。アリスはシリアちゃんとトラッシュの真ん中ね。」

「おはようアリス。それと、ロン毛の人。もう、アリス遅いよ。お兄ちゃん行っちゃったよ。」

「おはー。やっぱ、遅起きなのは変わんないんだねー。」

こうして朝食の時間が始まった。リュウガは先に食べて出勤したようだ。まあ、そんなことよりフレンチトーストが目に入る。

「んー、美味しいですね。このフレンチトースト。」

(やばい、ほっぺたが落ちそうです。)

 もっちりとしたパンに染み込んだ牛乳の風味と、卵が口に広がり、さらには蜂蜜が甘さを強く引き出す。きつね色の焦げ目が食欲をそそり、次から次へと手が止まらない。

その口の中に、ホットミルクを注ぐと牛乳が口に残った僅かな蜂蜜と混ざり一気に舌の上を踊って、胃まで運ばれる。体がほのかに温かくなり、眠気を吹き飛ばす。そして、極め付きがヨーグルトである。甘さは控えめで、かつ自家製のブルーベリージャムを入れてあり、これだけでも十分なのだが今までの食料の味を綺麗に消し取り、サッパリと口をリフレッシュする役割を果たしている。この組み合わせ、新鮮な食材の利用、これはもう素晴らしいとしか言い様が無かった。そしてアリスは唇に残る蜂蜜を器用に舐めとり、食事を終えた。

「セリカ、美味しかったです。昼食も楽しみにしておきますね。」

「そうだな。やっぱ自慢の妹だぜ。」

「シュロ君に言われても嬉しくないです。」

「セリカー、食べ終ったから着替えてくる。」

「ええ。分かったわよシリアちゃん。一緒にお着替えしましょうね。」

「やだ。アリス―、トラッシュー行こ。」

「はあい。」

三人とも席を立ち上がりキッチンに料理を下げに行く。その後シュロとセリカも一緒に向かった。

 三人はアリスの部屋に集まり、それぞれの衣服を着替え始める。アリスもトラッシュも同じ体系なのでシリアは二人のふくよかな乳房をじっと眺め、むうーと唸る。アリスはその様子を気にする事もなく、パジャマを脱ぎ、戦闘スーツに着替える。アリスにはサイズがピッタリだったため、余計に乳房とくびれ、そして尻が浮き出る。同様にトラッシュも戦闘スーツに。二人は白と黒の色違いを着た。因みに黒がアリスで白がトラッシュである。そしてシリアは半袖短パン姿になり、三人とも訓練準備は完了した。


 三人が地下の訓練場に到着し、準備体操をしているとセリカとシュロが入ってきた。

セリカはアリスよりもやや大きめの、短パン型のスーツを着用している。彼女の体は、まさにボンキュッボンであり一瞬モデルと間違えてしまいそうだ。その長い足といい、白い肌といい誰もが羨むような体系である。一方シュロはというと両手にハンドカバーを着用し、半袖型のスーツを着ている。このスーツは兄弟で訓練をする際に肌を保護するためのもので、シリアはまだ小さいためアリスの特別防護術を付与している服を着ている。そしてこの訓練場は大変丈夫で兄弟達が訓練を行う程度ならば普通の部屋よりも壊れない。だが、アリスのように短時間で何発も最大出力攻撃を打てるような者が互いに戦い合うときはよく壊れる。

 アリスは早速ぽきぽきと関節を鳴らし、やる気満々で準備を完了した。トラッシュも同様に攻撃の準備を始める。セリカは、地下四階の武具管理室から持ち出した大剣で、素振りをしている。セリカは兄弟の中でも力がある方で、アリスのように魔力は使えず、戦闘時には太刀を用いる。シリアやシュロも同じように魔力は殆ど使えない。だが、それぞれに得意不得意は普通あるものなのでたいして気にしていない。

シリアはぴぼちゃンと呼ばれる人形を抱きしめている。これはシリアが常時持ち歩いているもので開発したのもシリアなのだ。ぴぼちゃんはゲームのコントローラーのような形で真っ白なボディーに青い線が入っている。更には、額と思われる場所にハートマークがついており、なんとも愛らしい。

 「よし、皆準備できたかしら?」

「おうよ。ばっちりだぜセリカ。」

「私もいつでも大丈夫です。」

「私も大丈夫です―。なんかワクワクしてきたなー。」

「ん。おっけい。はやくやろ。」

それぞれがセリカに合図を送る。すると、セリカがはじめっと叫ぶ。

 その瞬間全員の形相が一気に変わった。アリスはシュロに向かって一直線に走り、強烈な魔術砲をくらわす。しかし、シュロも素早く対応し、防御態勢に切り替わる。アリスが一瞬の隙を見せた瞬間に鳩尾に一発。だが、決まったわけではなかった。シュロの蹴ったそれは、アリスではなくアリスの作った影で当の本人は空中に浮き、右手を上げると即座に下げた。すると、上空から巨大な黒い手が現れシュロを押しつぶす。

「ぐう、それは反則だろ。」

シュロがうめく。と、その時アリスは床から発砲をくらった。シリアだ。


 ぴぼちゃんは銃を上手く使うシリア専用の特殊武器である。人形の突起の間には引き金があり、そこを引くと、人形の口から巨大なスナイパーライフルが出現する。空中で動くアリスであってもシリアの狙撃の腕には敵わない。しかも、制作時に魔力を弾丸に込められるようにアリスが改造したため、簡単に魔力防壁は破られる。更に、スナイパーライフルだけでなく、どの銃にも変化可能なため厄介な存在である。

 「不意打ちとは酷いですね。シリア。」 

アリスはシリアの方に向き直り、魔術で作った弓を引く。連続で打ち続けるがすばしっこいシリアはすぐに回避し、アサルトライフルに切り替える。しかし、横からトラッシュの攻撃が繰り出される。アリスよりも戦闘能力は低いが、脳内プロジェクターにはある程度の戦闘知識が詰まっているため強烈な一撃となってシリアに直撃する。が、シリア用に作られたぴぼちゃんの防御バリアが発動し、無傷で済む。

「シリアさん。チートじゃないですか。」

「備えは常にしておくの。じゃ、いくよ。」

その光景を眺めていたアリスは、足を掴まれたことに気付いた。

「アリス、お前の敵は俺だぜ?」

シュロが力強くアリスの足を引き、床に叩きつける。そして、鳩尾にめがけて拳を振るう。

「きゃっ。やめてくださいよ!」

アリスが転がりながらなんとか回避する。今さっきアリスが寝転がっていた床には穴が空いている。

「おいおい、俺は優しいから顔は狙わなかったのに逃げるなよ。」

「もらった♪」

すかさず完全に気配を消したセリカがシュロに向かって大剣を振り下ろす。

「惜しいぜセリカ。」

シュロが素手で受け止め、そのまま押し倒す。アリスは隙をついて飛躍し、術を唱え始める。

「甘いよアリス。」

アリスに向かってトラッシュが咆哮を放つ。アリスは耐え切れず壁に激突。

「うう、トラッシュ。そういえば貴女もいましたね。」

「ん?アリス、どうゆう意味よ。」

「弱すぎて忘れてました。」

「んなっ。ぶっ殺してあげる!」

猛スピードでトラッシュが向かってくるが、アリスは動かずトラッシュの顔を見ると、にいっと笑った。

「ざーんねん。ゲームオーバー。」

その言葉と共にトラッシュの足元が爆発する。次々に床が爆破し、トラッシュは戦闘不可能に。

「かはっ。嘘でしょ、いつのまに。」

「さっき貴女に飛ばされた時に設置しておいたんです。」

そう、アリスがにやにやしていたのは飛ばされた瞬間に設置し、魔力で限りなく透明に近い保護色をつけた地雷にトラッシュがのうのうと引っかかることを予想していたからである。戦っている最中にもアリスはそこら中に設置したため、ものすごい量の地雷が一気に爆破した。特にトラッシュは一番地雷の多い場所に居たため、腕が両方とももげ落ち無残な姿に変わっていた。他の兄弟達にも爆破の被害は出ており、全員一時的な酸欠に陥る。その瞬間を見計らい、アリスは術を唱え、巨大な魔方陣を展開する。これは、アリスの最も得意とする黒魔術の最高峰の魔法で、魔方陣から無数の巨大な黒いドラゴンが出現し、周囲の人間を食い散らかす。また、触れるだけで手足が焼けるためまず、確実に死ぬだろう。

ドラゴンたちは一斉に兄弟達に襲い掛かる。だが、彼らはいつもどうりだという表情でドラゴンをいとも簡単に倒しにかかる。

「おい、ちょっとなまってるんじゃねえのか?こいつら、前戦った時より弱いぜ?」

「そうね。なんだか殺すのが可哀そうだわ。」

「そうですね。性能が大分衰えてるみたいなんでもう少し魔力量を増やします。」

アリスがトラッシュをおいて、スタスタと兄弟達の方へ向かう。この訓練は、一人でも戦闘不可能になった場合は一旦中止して休息をとる。アリスは、ボーっとしているシリアを見て、部屋に二酸化炭素が充満していたことに気付き、慌てて空気を入れ替える。

「けほけほ。アリスやりすぎ。トラッシュ戦えないじゃん。」

「すみません。今から治癒しますから、その子と遊んでおいてください。」

アリスが指を指した先には小さめのドラゴンがいた。先程の禍々しいオーラは消えており、触っても大丈夫なようだ。

「うう、なんだか皮肉なこと。やられた相手に治してもらってるなんて。」

「はいはい。貴女がキレて理性を失うからですよ。もっと注意深く見ていればこんなに怪我しなかったでしょ。」

「そうね。うう、痛いよ!」

「あ、すみません。神経繋ぐとこ間違えちゃいました。よいしょっと。あ、骨が折れてますね。あとその破片が筋肉に食い込んでいますから、新しいボディーを用意しますね。」

「もう!生々しく言わないでよ。怖いじゃん。」

「はいはい。じゃあ、このパーツ外しますね。あ、首とコアだけ取り出せば問題ないか。いきますよ。」

そう言ってアリスはぐちゃぐちゃと器用にトラッシュの胸に手を入れ、中のコアと呼ばれる部分を取り出し、更に首を引き抜く。完全に停止したトラッシュの血まみれのボディーを破壊し、アリス専用の実験及びコピー人形製作室で作られた新たなボディーを瞬間移動させ部屋に出現させる。アリスはトラッシュの首をボディーにつけると、特殊な治癒魔法で傷口を綺麗に塞ぐ。そして、コアを胸にはめ込み、胸も綺麗に塞ぐ。更に、生命維持用ロボパーツを両顎に着用させる。本来ならば、この時点では主電源と予備電源を入れていないため動かないはずだが、トラッシュは動き出す。アリスはよいしょっと言って、破壊しきれなかった肉片をくちゃくちゃと食べ始めた。

「あ、アリス。怖いよ。手も血塗れだし。」

「そうですか?私は悪魔の血が通っていますから本来は人肉を食べるんですよ?」

「怖えよ。あと、トラッシュの服は?」

「え?きゃあ!」

今更かと思うほど遅くトラッシュが真っ裸であったことに気付き、座り込む。アリスが仕方なく、適当に作ったジャンパーを渡す。

「ほほう、なかなかエロいな。裸ジャンパーってのは。」

「シュロ君はあっち向いててください。」

「えっち。」

「最低。」

兄弟の強烈な視線がシュロを攻撃し、シュロはため息をついて背を向けた。

「じゃあ、下着とスーツを用意するのでしばらくここにいてくださいね。」

と、アリスは一瞬にして消えた。リビングに戻ったのである。この家では瞬間移動はリビングから訓練場までと決まっており、それ以上先へ行こうとすると、ダメージをくらう。先程アリスがボディーだけを出現させたのは、物の移動だから許されるのだ。だが、先程はどこに何があるか明確にわかっていたため、出現させられたが、アリスの下着や、スーツの場所はバラバラなため一度に移動が不可能なのである。一つずつ移動させればすむと思われるが、それは透視能力と瞬間移動能力を同時に使い分けなければならないため負荷がかかる。

 アリスが行ったあと、兄弟たちはしばし準備体操に励んでいた。シリアはドラゴンに乗って移動時の狙撃練習、シュロは攻撃の回避と視覚が遮られた時の気配を感じる練習、セリカは近接攻撃の練習をしていた。

アリスが戻ってくると、トラッシュは早速着替え、ジャンパーをアリスに返す。

「皆さん、次は一対一でやりませんか?」

「おう、いいぜ。」

「いいわよ。トーナメントね。」

「うん。アリス、このドラゴン戻してあげて。」

「はーい。では、初めはシリアとトラッシュでいいですか?私が作った影人形達も入れるので人数は気にせず。」

「いいよ。」

「うん。治してもらったばっかだけど、本調子だから問題ないよ。」

「では、スタート。」



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