プロローグ:虹の湖A
彼女は微笑んで墓から抜け出した。ボロボロのはずのその体は若々しく、足元まで伸びた真っ黒な髪は以前のような艶と美しさを取り戻し、最期に着せられていた質素なドレスが白い肌を覆っていた。
眼前には無限に広がる虹色の湖。光を放っているのはその湖のみ。他のものは一切ない。
ピチャリピチャリと歩くたびに湖は波紋と共に姿を変えて美しく変化する。
彼女は暫く歩いていたが、やがて抜け出すことが限りなく不可能に近いことを悟りその場に座る。いつの間にかベンチが一つ置かれており、ふんわりと純白のドレスを揺らして彼女は座った。
「ねえ、どうやったらここから抜け出せるのかしら?」
彼女がこちら側に訪ねてくる。だが、返答はない。
「そう。貴方はまだ答えを知らないのね。」
俯きながら彼女は少しの間沈黙した。
「少しお話しましょ。私の隣に座ってよ。」
考えた結果、彼女は自分の隣を指した。こちら側にやはり反応はない。
「あらあら。恥ずかしいの?」
困ったように彼女は笑う。
「まあいいわ。こっちにいらっしゃい。」
そう、言って彼女は手招きした。
「もお!誘っているのに…。来ないんだったらそこでいいわ。」
透き通るその声が怒りを表す。
「これは、ある女の子のお話なんだけど…。」
どこか面白そうに彼女は語る。
「その子はとっても優しくて、とっても強いの。私が求める「完全」に一番近い存在よ。」
完全、その言葉が口から出てきた時、彼女は一層楽しそうに笑みをこぼす。
「けれど、完全ではないわ。残念ながら。ゲームの駒としてはとっても使いやすいけどね。」
そして、途方もなく続く虹の湖で彼女は語り出した。
夜神アリスという少女について。
更新頻度悪いです。
ご了承ください。