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2話

 ロックバーンは、見事数発の溜め攻撃で、ドラゴンのHPを0まで削り切った。

ドロップアイテムが一斉に散乱し、ロックバーン以外のプレイヤーは、取得経験値で一気にレベルが上がる。

騎士や槍使いの戦士がアイテムを拾い始め、マジシャンのネクロが、ロックバーンに礼を言う。


「ありがとう、ロックバーンさん。もうすぐでデスペナルティになるところでした」


「ははは、お安い御用。途中でいい出会いもあったし。ただまだこのメンバーで深淵に行くのは早いよ? 腕試しもいいけど、これで何回目のトライさ」


 その問いかけに、アイテムを拾う騎士が答えた。


「11回目です、今週、ほぼ毎日挑んでますから」


「デスペナルティが重なって、取得経験値減少が痛いのは分かる、ただそういう時はやけにならず、必ずギルドメンバーに相談する事。効率重視って話ではないけど、そうじゃないとゲームがつまらなくなっちゃうでしょ?」


「……そうですね、今度からそうします」


「うん、夜しかインできないけど、可能な限り協力するからさ。ゲームはみんなで仲良く、楽しく!!」


「でもそれだとサプライズにならないからなぁ……」


 マジシャンが口を挟むようにぼやいた。

サプライズとは、いったいどう言う意味なのだろうか。

その答えは、槍使いの戦士が答える。


「俺たち、このドラゴン倒して、卵が欲しかったんすよ。ライドスキルの必須モンスターが、俺らだけで挑めるのがこいつしかいなかったんで、まーギルド長の為にやりたかったんす。分かってくださいよ」


「なんだって? わざわざそんな事を…… でもありがとう、最上位職に転職した直後の大事なスキル振りなのに、わざわざ俺の為にそんな事をしてくれたんだ」


「そっちの方が、甘い汁を啜れる頻度も上がりそうっすからね」


「ははは、存分に吸ってくれ」


 他愛もない話をしつつ、パーティーは街へと帰還した。

チャット欄のログには、パーティーリーダーの騎士の名と、その―パーティーがドラゴン討伐を成功させた祝杯のログが流れ、課金アイテムのワールドチャットアイテムで、複数の有名プレイヤーが祝杯してくれた。

その人物らは、やり込んでいるプレイヤーならだれもが知っている程有名なプレイヤーたちであり、同時に、ロックバーンの知り合いでもあった。


「まさか俺たちがランカーから祝杯される日が来るなんて…… とか言ってみたかったなぁ。結局ギルド長頼りだし」


「大丈夫! これから頑張れば3人でも行けるって。何か月かかるか分からないけど……」


「今回のドロップアイテムで強化すれば、多少強くなるっしょ。あとは気長にレベ上げしようぜ~」


「君たちは本当に仲がいいなぁ」


「あれ、言ってませんでした? 俺たち、リア友同士なんですよ。ぴちぴちの高校生です!!」


「そうなのかい? って事は俺は一回り上のおっさん…… いやいや、俺もまだ若い、うん! でも、と言う事はネクロさんはネカマプレイ?」


「それを言ったらダメですよぉ~」


「ごめんごめん。いやぁ、いいなぁ。若いって。こんな時間まで毎日ゲームをしていたい……」


「そういや時間大丈夫なんすか? ギルド長、明日も仕事っすよね?」


「12時、か。そろそろ寝るかなぁ」


「お疲れっす! 今日はありがとうございました!!」


「うん、でもこの後はさっき知り合った人と狩でも行ってくるよ。ライド頼んだけど、料金払いそびれちゃったし」


「それなら、俺たちはアイテム売りに行くか。それじゃあギルド長、乙でしたー」


「おつー」


 こうしてロックバーンは、3人のプレイヤーと別れると、先ほど知り合ったプレイヤーにメッセージを送り始めた。


「用事も済んだので、狩りでも行きませんか? っと。こんな遅くだけど、大丈夫かなぁ」


 その後、ロックバーンは日が昇るまで、新たなフレンド達と、狩りを楽しんでいた。







 翌日、片桐は複数の目覚まし時計のアラーム音に気付き、目を覚ました。

一つずつ手探りで目覚まし時計のアラームを消し、一息入れて布団から出る。

朝食に食パンを齧りながら、寝間着から着替えて家を出る。

まだ完全に目が冴えたわけでは無いが、急がなくては遅刻してしまう、そんな焦りを感じつつも、片桐はバイクにまたがり、エンジンをかける。

かるく空ぶかしをしながら、眠気をさまそうと顔を叩く。

そうしてヘルメットをかぶり、走りだした。

走行中、片桐は昨晩の事を考えていた、昨晩と言っても、日が変わってからもプレイし続けていたため、性格に言えば、ほんの数時間前の先ほどの事であるが。


 新しいフレンドとは話が合い、久々に楽しい狩りが出来た。

普段は作業と化していた狩りだが、教えながら狩ると言うのは予想以上に楽しく、新キャラ作成の手伝いまで手を出してしまった。

長い間プレイすると忘れてくる、わくわく感が久々に感じられ、羽目を外してしまった事は今でも反省している。

しかし、次の休みの日には、新たなキャラを作成しようかと悩ます程には、反省の色は薄かった。

そんな想像をしている時、片桐の側面から、巨大な影が猛スピードで接近してきていた。

その事態に気付いた時には、ハンドルを切るもすでに遅く、片桐はトラックに激突し、吹き飛ばされた。


「赤信……号…………?」


 目の前に広がる色が、その事実を彷彿とさせる。

しかしその赤色の正体が、自分の血液だと気が付く事もなく、朦朧とする意識の中、かすかな声を聴き分けていた。


「やっ…まった…… 誰k……車を!! 早く」


「……無視か……ッラクの人も災難だな……」


 その時、ようやく事態を理解した。

片桐は信号を無視し、トラックと激突し、自分は血を流しながら倒れている。

それに気が付くと、痛みが一気に込み上げ、出し切れていないかすかな呻き声をあげながら、必死に手を動かした。

退屈な毎日だったが、嫌いでは無かった、リアルでなくても、楽しめる空間があり、仲間たちがいた。

それはまるで、それすらも消してしまう程の激痛で、それを思うと、一筋の涙が頬を流れる。

おまけに、事故に合わせてしまったトラックの人物、その人にも人生がある、自分が毎日、もがくように送っている日々を、その人物も送っている。

それを壊してしまった、自分の愚行、それがどれほどの痛みなのかは、皮肉にも轢かれた時の痛みが証明していた。

暗く、寒く、感覚が徐々に消えていく。

これが死だと気が付いた刹那、片桐の意識、が無くなった。







「ここは……?」


 片桐は、死んだはずだ。

そう自分で認識したはずなのに、片桐は目を覚ました。

真っ白な天井、一瞬、そこが病院なのかと思ったが、その異様な白さは病院のそれとはまるで違う。

おまけにけがは無く、周囲も真っ白な、何もない空間。

片桐は何事かと体を起こすと、うっすらと光る人型の何かがある事に、気が付いた。


「あなたは……? 俺の幻覚……?」


「幻覚ではない」


 その人物が、言葉を返した。

間違いない、彼は確かに存在している。

その事実を確認すると、片桐はその問に続けて答えた。


「まさか、俺は死んだのか? するとあなたは、神か何か?」


「理解が早くて助かる。そうとも、私は神だ」


 片桐自身、崇拝する宗教がある訳ではないが、日本の一般的な神仏崇拝の習慣を20年以上送っていると、納得できない事でもない。

しかしこの超常的な現象には違和感を覚えるが、その答えは神が答えてくれるだろう。


「お主は自らの過ちを犯し、そして死んだ。その事実に異論は無いか?」


「はい…… 理解しているつもりです。今更弁明する気もありません」


「……よかろう、その心意気に免じ、お主の過ちを責めたりはせん。だが使命を与える」


「使命……ですか?」


「ああ、使命だ。お主は、魔族と戦い、魔王を倒し、世界を救って貰う」


「魔族? 魔王? そんなの、ゲームとかの話ですか」


「ゲームではない、だが、お主の知るゲームとやらの知識は約に立つ、そんな世界だ。お主は新たな世界に転生し、その世界を救って貰う。それがお主の使命だ」


「もし…… 救えなかったら?」


「その時はその時だ。何も本当に救えと言っているわけでは無い、ただ、お主の罪滅ぼしをせんといかんと言っているのだ。その世界で、お主は人々を救い、導き、貢献しなければならない。もし、一度でも破った時は、今度こそ本当の死が訪れると知れ」


「本当の死…… つまり、消滅すると?」


「その通りだ」


「なるほど…… つまり、文字通りの勇者誕生って訳ですか」


「怖くないのか? 何も特別な力を授ける訳では無いのだぞ?」


「大丈夫です! むしろ感謝の言葉さえ出てきます、人のために生き、死ねるのなら本望です。その時は自分の死を受け入れます。俺なりの反省の気持ちは、この言葉通りです」


「ほう…… そこまで言うのなら、期待しておこう。ロックバーン、世界を託したぞ、人々を、ワシの愛した世界を…… 救ってくれると、信じておる」


 神と名乗る影は、次第に色彩を失い、消えていった。

そして片桐は、いや、ロックバーンは光に包まれ、目を覚ますと、とある街並みの、路地裏に佇んでいた。








 ロックバーンが目を覚ました街は小さく、また貧相な街並みが続いていた。

レンガ造りの家にもひびが入り、華やかなゲームの世界とは打って変わって、清潔感の感じられない、重い空気の吹き抜ける場所だった。


「まるでスラム街だな……」


 ひとまずロックバーンは、自分の状況を確認する。

体系は、前世とさほど変わらない、若干の若返りはある。

魔族と戦うために送られたとは思えない、平凡な服装、この世界では一般的な物だろうが、前世の服装よりは明らか着心地が悪い。

ゴアゴアとしたシャツに、半袖のパーカーらしき上着。

しかし上半身に比べ、ズボンや靴は充実していた、頑丈そうな素材でできたズボンに、履き馴れえていない硬い革靴。

さらにベルトにも、本革と同じ感触がある、装備を付ける部分なのだろうか、しっかりとした作りだった。

上着の懐には、小包が一つ入っており、中には少量の金貨が入っていた。

そして気になるのが、目を覚ました時から持っていた一冊の本。

古く、植物の面影が残る分厚い紙と、硬い厚紙に動物の皮を縫い付けたようなその本は、色彩落ちかけているが、確かに細かな模様が記されているのが分かる。

紙は何も与えないと言っていたが、これはそれほど役に立たない物なのだろうか?

中の文字は何も読めない、ただ気になるページがあった。

そのページには、前世に存在した画風とは違い、見ずらい事もあったが、地面に固まる黒い影を、一人の人間が空から下り、影を薙ぎ払っているようにも見える。

これは勇者召喚の儀式なのだろうか、それとも、自分の旅の記録でも記しているのだるか。


 本を閉じ、路地裏から通りへと出る。

不思議な事に、この世界の価値観は、自然と理解できた。

言葉、金銭感覚、街の情報と、魔物の存在、そして、この町が、魔物が占領する草原に孤立させられている事も。

まずは武器が無くては戦えない、ロックバーンは、街の武器屋を目指す事にした。


どうも、ブックです。

この度憧れの脳筋戦士を読んでいただき、ありがとうございます。

数年前、創作活動に熱中していた頃の熱が再び目覚め、活動再開してみました。

読みにくい面もあるかと思いますが、お付き合いいただけると嬉しいです。

人の感情や世界観を細かく書いていきたいので、テンポ事態は遅くなりそうですが、8話完結(4万文字くらい?)の話をこまごまと書いていこうと思います。

多分、魔王討伐やったーエンドでは無いと思います。

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