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幕間その1 王子様との出会い

今日は入学式だというのに敬明はどこ行ったのかしら?あいつはすぐにどこかへ消えるのよね・・・・。まあ、この辺りで待ってたら戻ってくるわよね。


「ねえ君、どうしたの?迷子?」


その言葉に振り返る。そこにはとても短い茶髪で、細身の、身長の高い女の子が居たの。ふわぁ・・・・!?かっこいい・・・・!王子様みたい!ああ、かっこいいわ・・・・。


「おっ和音、こんなところにいたのか。探したぞ。」


もう、敬明がどっか行ったんじゃない。それより、このイケメン、誰かしら。とても興味が・・・・その・・・・かっこよくて・・・・。


「うん、ごめんごめん、ん?ああ、君、名前は?」

「え?名前・・・・ですか?ええと、上白石 さゆりといいます。新入生です。えと、その・・・・。」


上白石、さゆり、さゆり!かわいらしい、いい名前!新入生・・・・クラスはどこなのかしら。・・・・いっしょだと、いいな。

その後、私は敬明と、その友達の光弘と入学式会場の体育館に行ったわ。何度も仕事とかで行ってるから見慣れたところね。それにしても、家では優理といちゃつくか寝てるか部屋に籠ってばかりの美月がきちんとスーツ着て、ちゃんと話をしてるのは、なんだかおもしろいわね。ちなみに美月は童顔で、黒い髪も小さい子みたいにポニーテールにしてるから、子供っぽくてとても学園長には見えないのよね。入学式が終わると、身長の低い私は並び順も1番前ですぐに体育館を出れて、自分のクラスの1-1へ向かった。どうやら、一番乗りみたいね。自分の席は・・・・あそこかしら。家の外だと呪いのせいか、必要以上の行動をしたくなくなってしまう私は、最短距離で席へ向かい、無表情で前を向いて静止する。他の人から見た私はさながらロボットのようなんだろうね。うーん、先生はまだかしら。この姿勢、慣れてはいるけど、少ししんどいわ。退屈だしね。あっあれは・・・・さゆりちゃん!顔は動かしたくないけど、視界の端でさゆりちゃんが見えた!同じクラス・・・・あっ、しかも隣の隣の席じゃない!近いわ、うれしい・・・・!あっ、優理が入ってきた。聞いていたけど、ここの担任なのよね。少し心配だわ。まあ、やるときはやるし大丈夫かしらね。なになに、自己紹介?まあ、一応全員覚えとこうかしら。

・・・・さゆりちゃんの友達は、黒いきれいな髪を後ろに1つでまとめた、中くらいの身長の、頭の良さそうな子が幼方さんで、ライトブラウンの髪をツインテールにした、童顔の、なんだか光弘みたいな気配がする子が籠谷さんね。で、さゆりちゃんの好きなものはかわいいものと体を動かすことね。うーん、かわいいもの、ね。なんだか気が合いそうだわ!


「次、水無月さん。ああ、前に出て来てもらえる?」


あ、私の番ね。私は敬明に書いてもらったこの紙を優理に読んでもらうだけだけど。


「あなたはあの朝の!」


えっさゆりちゃん、覚えててくれたんだ!嬉しい・・・・!


「えーと、上白石さん?座ってくれる?」

「あ、えと、すみません。」


か、かわいい・・・・。シュンって恥ずかしそうにしてて・・・・。あ、これ渡さなきゃ。優理が渡した紙を読み上げている間、私はさゆりちゃんをずっと見ていた。かっこよくて、かわいい、見ていて楽しいわ。読み終えられたのを聞いて、紙を取ってから軽くお辞儀をして席に戻る。すると、私はまた前を向くロボットみたいになった。




「あ、和音ちゃん。僕のことは置いて早く帰って、水筒を持って散歩してきなさいって、敬明からの伝言よ。」


敬明と一緒に帰ることになっていたので待っていた私に、優理がわざわざ教室に戻ってきてから言ってきた。敬明が言ったなら、なにかあるのだろう。・・・・たまに悪戯もあるけど。

私は伝言の通りに帰って水筒に特製のスポーツドリンクを入れて散歩に出た。特製のスポーツドリンクは、水に塩と少し砂糖、それにレモン汁を入れたもので、冷蔵庫に作り置きしてある。

暑い・・・・まだ春先なのに・・・・これは考えて水筒飲まないとなぁ・・・・。

あっ、さゆりちゃん!?なんでここに・・・・。ああっ、汗が滴ってて色っぽい・・・・。水も滴るいい・・・・女?あら、喉が乾いてるみたいね、水筒も空みたいだし。自販機も近くには無いし・・・・この飲みかけの水筒を渡すしかないかしら。私はさゆりちゃんに近づいて水筒を差し出す。


「はあ、はあ、これ、くれるの?」


ええ、あげますよ・・・・なんて、伝わらないのよね・・・・。私は頷くことで意思を伝える。"はい"と"いいえ"は伝わるのよね。変な呪いだわ。


「ええと、ありがとう。」


彼女はそう色っぽく言って、私の水筒を・・・・って、かかか、間接、キス!?あああああ・・・・。さゆりちゃんは喉を鳴らしながら私の水筒を飲む。あああ、大丈夫かな、不味くないかな、変な臭いとかしないかな、間接キスだってことバレないかな?・・・・嫌がられないかな?

やがて、飲み干したのか、口から水筒を離した。


「ぷはぁ、おいしい、ありがとう!助かったよ。」


おいしいなら、なにより、です。よかった。うん。気持ちが込もって強めに頷く。


「ええと、洗って返せばいいかな?」


私は首を横に振って、水筒を掠め取った。それから恥ずかしくて恥ずかしくて、早く帰りたくてそのまま走って家に向かった。




うーん、洗わなきゃ、でも、保存しときたい・・・・。


「どうしたの、和音ちゃん、それ、洗わないの?」


あっ、光弘!あっいや、これはその・・・・洗わなきゃ。


「和音ちゃん、大丈夫?落ち込んだり、赤くなったり。」


私は頷いて大丈夫だと伝える。


「それなら、まあいいけど、体調悪くなったら伝えてね。」


私はまた頷く。それを見て安心したのか、光弘は元の掃除の作業に戻っていった。ふう、洗おう。でも、この水筒・・・・さゆりちゃんの口が付いた水筒・・・・。ちょっと口付けるくらい、誰も見てないし・・・・。


ちゅっ


ああああ・・・・なんてことを・・・・恥ずかしい、うう、暫くさゆりちゃんのことちゃんと見れないかも・・・・。


カタッ


私は素早く音の方を向く。そこには角から私のことを覗く敬明と光弘がいた。


「あ、いや、その、和音ちゃん、ごめんね。その・・・・いや、何も見てないから・・・・!」


私は無心で泡をすすいで、片付けてから自分の部屋に戻って鍵をかけて籠った。


「和音ちゃん!ごめんって!ほら、敬明も!」

「くくく、和音、水筒はどんな味じゃたか?上白石君が口を付けた、水筒は。」

「ちょっと!敬明!」


外で何やら騒いでるけど、知らない!私は何も知らない!・・・・敬明はあとで殴る。・・・・ちなみに、水筒はスポーツドリンクの甘酸っぱさと、ほんの少ししょっぱい味がした。




あれから3日後学校から帰ると、敬明が水筒を持って散歩に行ってこいと言ってきた。ははーん、今日も散歩したらさゆりちゃんに合えるんだな、と察した私は、敬明に


<私のことは和音ちゃん、と呼んでください。それから、水筒、いりますか?>


と紙に書いてもらった。さゆりちゃんともっと仲良くなりたいからね。それから、水筒にスポーツドリンクを入れて外に出た。私は一口だけ水筒を飲み、この前の場所へ向かって歩き出した。

この前さゆりちゃんと出会った場所に着くと、すぐにさゆりちゃんが角から顔を出した。


「え、和音さん、なんでいるの?」


私は、その和音"さん"に少しむっとしながらポケットから紙を出す。彼女は紙を読み出した。あれ、こんなに長かったかな。途中でさゆりちゃんが顔を赤くするし・・・・まさか、敬明が悪戯した?後でまた殴っとこう。と、とりあえず、水筒は渡そう。私は紙を片付けてさゆりちゃんに近付く。彼女は水筒を受け取ってくれた。うーん、どんな格好でも絵になる美人さん、かっこいい・・・・。


「あっ、えと、もらうね。水筒。」


と、さゆりちゃんは水筒に口を付けて飲む。今日はあまり汗をかいてないけど、それでもかっこいい・・・・。写真とか、写生?とかしてみたいな・・・・なにか物にして残しておきたい。いつでも見れるように。私にはできないから、いつか、光弘に描いてもらおうかな。そんなことを思っていると、外だというのに、少し、頬が赤くなったような気がした。


「かわいい・・・・。」


えっあっ、そんな。いや、え、こんな私が!?こんな、無表情な私が!?

私はさっと水筒を取って、走り出した。

お読みいただき、ありがとうございました。

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