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無口な少女は心で語る  作者: かあいかとさ Kais
2章 和音ちゃんはかわいい
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幕間 陸上部マネージャー

お待たせいたしました。今回は幕間です。




(まさかあの上白石さんが来てくれるなんて・・・・)


彼女は陸上部のマネージャーの名古。この学校の噂話のほとんどが耳に入る情報通だ。

今回ボランティア部に依頼したのは、所属している新入生の噂がとても気になったからだった。実は彼女のけがはそこまでひどいものではないから手伝いなんていらなかったのである。


(噂ではどこかの国の王子様だとか何とか突拍子もないこと言われていたけど、これはあり得るかも、なんて思ってしまうわね。)


名古は走るさゆりに見惚れながらそう思った。


(かっこよすぎる・・・・!彼女のすべてが輝いて見えるわぁ!)


さゆりはかっこよすぎた。周りの人々は無意識に彼女のことを目で追ってしまっていた。

陸上部全員がさゆりを見ながらかろうじていつも通りのことをしている。例外といえば、見慣れてきているがむしろ目に焼き付けるために自分から目で追っている和音と、美しさよりも噂を確かめたかったということが上回った名古くらいだった。


(もはやまぶしい・・・・でもここはこの学校一の情報通の名誉にかけてはっきりとさゆりちゃんのこと見極めて見せるわぁ!)


そう決意して、走り終わった陸上部の人たちの後片づけを手伝いながら、さゆりに話しかけた。


「お疲れ様、どうだった?」

「ん、あ、お疲れ様です。楽しかったです。走るの、大好きなので!」

(かっこいいけど笑顔はかわいらしい・・・・反則だわぁ。)

「そう、よかったわぁ。ところで、走った後に帰るの、しんどくないの?家どの辺?」

「ん、いえべつに、むしろこの後帰ってから走ろうかなって思ってるんで。家は・・・・」

「そ、そうなのね。さて、そろそろ帰っていいわよ、あとは挨拶するだけだから。」

「あ、なら挨拶も参加しますよ!」

「そう、ならあそこで待ってなさいねぇ。すぐに部長が始めるから。」

「はい!」


さゆりは元気に走ってむかう。ぜんぜん疲れていない。名古はその様子を見送る。


(まだ走るのね・・・・それで、家のあるところは確か、普通の住宅地ね。やっぱり王子様、なわけないわよね。)


元より信じていなかったが、王子様、という噂が真実でないことを確信した。

それと同時に、さゆりの隣、というよりは引っ張られて、という方が正しいが、和音がいることにやっと気が付いた。一緒にここに来たのだからいることは知っていたけれど、途中からさゆりに夢中で見えていなかったのだ。

問題は、その和音も無表情でありながらどこか嬉しそうだったこと。そしてそれ以上に、さゆりの和音に向ける表情がなんていうかもうそれはとてもかわいらしい笑顔だったことである。


(かっ、かわいいぃ!てかあれ付き合っているんじゃないの?そうよね、きっとそう。これはすごいスクープだわぁ!)


実際にはまだ付き合っていないのだが、彼女のように隣の和音にまで目が行った人には確実にそう思えるような甘々な空間がそこにはあった。


(ふふふ、これはいいネタができたわぁ。)



その後、甘々な空間に幾度となく遭遇しつつ、一週間が過ぎた。


(初めに一週間って言ったのは失敗だったわね・・・・)


なんて思っている名古に、見学のボランティア部の面々が集まってきた。


「改めて、初めまして。さゆりちゃんとは幼馴染の幼方です。こっちは同じく幼馴染の籠谷です。」

「むえっ私の自己紹介・・・・」


優菜は口だけで笑って睨んできていた。


(こわっえ?私何かしちゃったかしら・・・・?)


「初めまして、僕は武正です。こっちの縛っているばかは心石です。よろしくお願いしますね。」

「は、初めましてぇ、マネージャーの名古ですぅ。よろしくね。」


優菜は少し見定めていた。名古がさゆりに害するような人かどうか、と。実際噂を流した、ということはしていたが、さゆりと和音が付き合っているように見えることは彼女にとって普通のことだったので別にどうとも思っていなかった。


「あ、あのぉ、どうかしましたか?幼方さん?」

「ああいえ、べつに、おきれいだな、と思って。」

「へ?あ、どうも、ありがとう。」


優菜は自然に笑ってそう言い放った。

普段さゆりの隣にいるため霞んでしまっているが、優菜も一般的に見れば超が付くほどの美少女なのである。さらに、ナチュラル女たらしのさゆりの隣で育ったためか、口説き文句がさらりと出るようになっていた。


(く、口説かれた?いえ、社交辞令的なやつよね・・・・?)


優菜はとりあえずこの人にさゆりを害する行為はしないかな、と直感で理解したのでそれ以上なにもすることはなかった。

睨んできていた優菜が自然に笑ったので名古も仕事を続けることにした。今陸上部がしていることの説明である。

やがてそれも終わり、後片付けもおわり、解散となった。さて帰るかといったところで、名古に優菜が話しかけた。


「お疲れ様です。名古先輩。」

「あ、ええ、お疲れ様、今日は楽しんでもらえたかしら?」

「ええ、はい。ところで・・・・」

「はい?」

あの程度(・・・・)の噂なら別にいいですけど、面倒なことはしないでくださいね?」


目を細めて凄んだ。とてもこわい。


「えっ?あっ、はっはい!ごめんなさい!」

「いえいえ、謝ることはないのですよ。大丈夫です、別に何かするわけじゃないので。ただ、仲良くしていきたいなって思ったのですよ。」


優菜は、念のためにくぎを刺しておくことにした。全然心配なんかしていないが、噂好き、というのはやや怖い、というのを知っていたからだ。


「は、はい、今後ともよろしくですぅ!」


名古は今後優菜たちボランティア部を要観察対象として噂をよく集めることに決めた。怖いことは怖いが、それと同じくらいの好奇心があったのだった。


(といっても、あまり接触はしたくないわぁ!)


お読みいただきありがとうございました。


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