16話 騒動
「ふう、さっぱりした。」
あの広いお風呂場から出てくると、和音ちゃんが廊下で待っていてくれた。
「ありがと、じゃあ、どうする?」
『えーと、私の部屋でお話ししよ?』
「うん、じゃあ行こっか。」
2階にある、和音ちゃんの部屋に向かう。
『うーん、とりあえずベッドに座って。』
「うん。」
前に入ったときはあまり見てなかったけど、部屋には大きな天蓋付きのベッド、引き出しの多い学習机、漫画の多く入った本棚があった。それでも部屋にはまだまだスペースがあった。そして、部屋からは和音ちゃんみたいないい匂いがした。
「ふかふかー。」
『ふふふ、かわいい・・・・。』
「うぇっ!?そんなことないよ!」
そんな、そんなことないよ。だって、和音ちゃんの方がかわいいし・・・・。
『あっ!危ない!』
突然、和音ちゃんが私に飛び付いてきた。続いて、和音ちゃんの背中になにかが強く当たるような衝撃があった。
「えっ和音ちゃん!大丈夫!?」
和音ちゃんは少し痛そうな顔をしたけど、頷いて、大丈夫だと伝えてくれた。
とりあえず、何が飛んできたのかを確認・・・・本が、浮いてる?足元にはさっき飛んできたと思われる本が1冊。本棚にあった本のほとんどが浮いてこちらに照準を合わせてきている。
「か、和音ちゃん、逃げるよ!」
和音ちゃんを抱えて走る!
走るすぐ横を本が掠めていく。なんとなく感覚で本を避けていく。
「ど、どこ行こう?」
『え、えーと、とりあえず敬明のところ!』
「ど、どこ!?」
「キャー!」
「優ちゃん!?」
先生方の部屋から、優ちゃんと気絶した藤田先生を抱えた乃木先生が飛び出してくる。
「優ちゃんもなの!?と、とりあえず走るよ!」
優ちゃん達と一緒に駆ける。階段を駆け降り、そのままリビングに入る。いつの間にか、本が飛んでこなくなった。
「と、止まった?」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
「こ、今度はなによ!」
台所から、武正先輩の叫び声と、皿が割れる音がした。
「ひ、ひいっなんで!敬明はどこ行った!?」
「助けて!さ、皿が!」
武正先輩と穂高ちゃんがリビングに逃げてくる。宙に浮く皿逹を連れて。
「みんな!に、逃げるよ!」
「うん!え、あっどこに?」
「外!外よ!」
優ちゃんの提案により、みんなで一目散に玄関へ向かう。
「う、うそ・・・・。」
今度は、みんなの靴が宙に浮いていた。さらに、後ろからは皿が向かってきている。よし。
「和音ちゃん、立てる?」
『ふぇ、ああうん、大丈夫だよ。』
今までずっとだっこしてきた和音ちゃんを降ろした。
「みんな、私が靴を叩き落とすから、付いて出て!ハアアアアア!」
魔力によって上がった身体能力を使って高くジャンプして靴を叩き落としながらドアへ向かう。ゆっくりとした動きのため、簡単に落とせた。
「ほら、出るよ!」
ドアを開けてみんなを振り返る。しかし、みんな何故か呆けてしまっていた。
「ちょっと、みんな!?」
「あっ、うん!」
みんなで屋敷を出る。最後に出た武正先輩が出たあと、ドアを閉める瞬間、ちらりと玄関の中を見ると、落とした靴がゆっくりと再び浮かび上がってきていた。
「ふう・・・・。さて、これからどうする?」
「とりあえず、藤田先生の治療をしましょう。本の攻撃を背中で受けたんです。」
「うん、わかった。和音ちゃん、出来る?」
和音ちゃんが頷いた。えっ、なにが出来るの?和音ちゃんは、乃木先生にだっこされている藤田先生に近付いて、背中に手を添えた。すると、今まで苦しそうだった藤田先生の顔が、穏やかな寝顔になった。
「え、今何したの?」
『魔法だよ。敬明が教えてくれたの。』
「へえ・・・・。」
今度教えてくれないかな。
「よし、じゃあ、どうする?和音ちゃんは何か分かる?」
『ええと、たぶん。』
和音ちゃんがゆるく頷く。そして、私と目を合わせてきた。
『たぶん、妖怪がいる。ポルターガイストみたいな?それが私の部屋にいるから、それを倒したらいいと思う。』
和音ちゃんの言葉をそっくりそのままみんなに伝える。
「そう、じゃあ・・・・あれ、敬明は?」
「あれ?ポストに紙が・・・・。」
優ちゃんが紙を見つけて、取ってくる。その紙にはこう書かれていた。
<やあ、みんな、僕は・・・・ちょっと・・・・うーん、か、買い物に行ってくるよ!留守は任せるね!>
「逃げたか・・・・。」
「私と和音ちゃんで対処しろ、ということでしょうか・・・・?」
「いや、単純に面倒なだけだと思うけど・・・・。」
「まあ、今は私と和音ちゃんで対処するしかないですよね。和音ちゃん、行ける?」
『うん、大丈夫だよ。』
「じゃあ、みなさん、ここで待っててください。」
「うん、気を付けてね、さゆりちゃん。」
「さゆりちゃん、頑張ってね。」
「うん、じゃあ行ってくるよ。」
和音ちゃんと玄関のドアを開ける。やはり、靴達が落ちてきた。
「私に任せて!」
和音ちゃんの前に躍り出て、靴達を叩き落としていく。
「さ、今のうちに、行くよ!」
『うん!』
和音ちゃんと屋敷の中を走り抜ける。皿は叩き落とすと割れて大変だから、と叩き落とすのを止められたので、避けて通る。
2階に上がると、今度は本達が襲いかかってきた。
「う、数が多い・・・・!」
『大丈夫、半分は私がどうにかするよ。』
「・・・・うん、わかった!じゃあ、いくよ!」
『うん!』
素手で本達を落としていく。和音ちゃんはというと、手を向けるだけで本達を落としていた。
そして、私たちは、妖怪がいるという、和音ちゃんの部屋にたどり着いた。
部屋の中には、人間サイズのマリオネットが宙に浮いていた。
『こいつが妖怪ね。』
「私はどうすればいい?」
『たぶん、胸に核があるから、落として、核を取り出して。』
「わかった!」
もうぶつけられるものも無いのか、マリオネットは困ったようにふわりと浮くだけで、なにもしてこない。
こうなれば、走ってジャンプすることで、簡単に叩き落とせる。
「よし、えーと、核、ね。これかな。」
マリオネットの胸の辺りに、なにか玉のようなものがあった。
『そのまま押さえててね。よいしょ!』
和音ちゃんがマリオネットの胸に手を向けると、そこから玉がゆっくりと出てきた。
「それが、核?」
『そうよ。これで終わりね。さあ、みんなを呼んで、片付けしなくちゃ。』
屋敷のそこかしこから物が落ちる音がした。
『あー・・・・大変ね。』
お読みいただき、ありがとうございま
した。
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