9話 ボランティア部会議と夕食
次の日、放課後に教室で談笑していると、教室に先輩2人が入ってきた。
「やあ、君達。とりあえず、依頼の箱作っておいたから、見てくれ。」
「突然ごめんね~。」
教室にいた人の目は武正先輩の方に向いているがそれを気にする様子は無い。慣れているみたい。
「よいしょっと。」
私の机に置かれたのは、目安箱と書かれた木目柄の箱だった。
「許可されてないからまだ設置はできないけど、これでいいかな?」
「はい、箱はいいと思います。ただ、依頼書を作るか、白紙を用意するといいと思います。」
「・・・・ああ!そうだね。ありがとう!気付かなかったよ。」
「ふむん、終わったか?・・では帰ろうか。」
入ってきておきながら、退屈そうにしていた敬明先輩がさっさと外へ向かって歩きだしてしまった。
「あっ、まって、僕達も帰るから!」
慌てて私たちも敬明先輩を追いかけた。
それから数日して、部活の申請が通り、3階の空き教室が割り当てられた。そしてそこに、全員が集まった。
「では第1回、ボランティア部会議を始める!」
「はい!」
「お、おう?」
「で、では第1回・・。」
「いや、もういいですよ、ってかなんなんですか?そのテンション。」
ゆ、優ちゃん、辛辣・・・・。
「ふむん・・・・そうか・・・・そうか・・・・武正、あとは頼んだ。」
そう言い残して、敬明先輩は倒れこんだ。
「おう。あ、こいつは気にしなくていいから、すぐに立ち直るさ。」
「そ、そうですか。」
「うん、じゃあ、話し合いを始めようか。今回は、依頼書の内容についてを議題にするよ。えーと、じゃあ、籠谷さん、書記をしてくれ。はい、紙をあげるよ。シャーペンは・・・・持ってるね、よし。」
「はい。よ、よろしくお願いいたします。」
こうして、第1回ボランティア部会議は始まった。
「よし、まとめるとこうだね。反対かなにかあるかな?」
会議は粛々と進んだ。・・・・優ちゃんと武正先輩だけで。起き上がる度に変なことを言う敬明先輩は優ちゃんが淡々と対処していた。和音ちゃんはそもそも話に参加できないし、私には参加できるほどの頭は無かった。穂高ちゃんは白紙に静かに会議の内容を書いていっていた。ただ、あの顔はよくわかってなさそうだ。途中から目が死んでたし。あ、敬明先輩が起きてきた。
「ふむん、デザインを変えたいのだが。もっと、ボランティア部らしい、デザインに・・・・。」
「ボランティア部らしいってなんですか?それをする意味は?」
「ふむん・・・・そうか・・・・。」
また敬明先輩が倒れた・・・・。
「よし、じゃあ、いいね?これを元に、作ってくるよ。」
「はい、よろしくお願いします。」
「じゃあ、解散だね。敬一は・・・・僕が何とかするから、君達は帰っていいよ。」
「は、はい。じゃあ、帰ろっか。」
和音ちゃんに目を合わせて話しかける。もう、和音ちゃんも私と会話することに慣れてきていた。
『うん!帰ろう。あー早く明日にならないかなぁ。』
「うん?なんで?」
『だって、さゆりちゃんが泊まりに来てくれるんだもん。』
嬉しい!和音ちゃんがこんなに楽しみにしてくれているなんて!相変わらず無表情のため、和音ちゃんの顔や動きから楽しそうな雰囲気は感じられないけれど、なんだかいつもより心の声が弾んでいるような感じがした。
『・・・・どうかした?』
「んーん、何でもないよ。さ、帰ろっか、あっ2人はもう先行ってる!」
『えっ、急がなきゃ!』
なんだか、体がうずうずして、とても走りたい気分!
待ちに待った金曜日の夕方。私たちは自分たちの家に1度寄り、お泊まりセットを持ってから和音ちゃんの家に向かった。相変わらず、大きな家だなぁ。
「「「おじゃましまーす。」」」
「うん、いらっしゃい。」
とりあえず、リビングに案内された。あぁソファふかふかだぁ・・・・。と、和音ちゃんが私の膝の上に座ってきた。なんでこんなにいい匂いがするんだろう・・・・。
「うーん、先生が帰るまでは各自のんびりしてもらうか。」
そう言われても、和音ちゃんが降りてくれないと私は動けないなぁ。まあ、和音ちゃん軽いしこれでものんびりできるんだけどね。
『ねえ、お話し、しよう?』
和音ちゃんが首を回して私と無理矢理目を会わせてきた。
「それだと、首痛めるから、こっち向きに座って話そうよ。」
『うん。』
和音ちゃんは私から降りずに、体の向きをこちらに向けた。う、顔が近くて・・・・なんだか、恥ずかしい。
「あの、この体勢だと、その・・・・顔が・・・・。」
『そう?私は、さゆりちゃんのかっこいい顔がよく見えて、この体勢好きだわ。』
「あう・・・・。」
和音ちゃんは微笑んでいた。とってもかわいいけど、いつもと雰囲気が違う。なんだか、吸い寄せられるような・・・・。和音ちゃんから目を反らせない。胸がドキドキする。顔が熱い。
『ふふふ、どうしたの?さゆりちゃん。耳まで真っ赤よ。』
和音ちゃんがふわりと耳に触れる。
「ふぁ・・・・。」
『あら、かわいい。いつもはかっこいいのに、いまはとてもかわいらしいわ。』
さゆりちゃんが耳を撫で続ける。
「ぁ、やめ・・・・。」
「なに、してるの?」
「ひゃっ。」
『あっ。』
あ、ああ、みんなに見られてた・・・・。
『あ、その、えっと、そ、そうだ、そろそろ、夕食の準備しなきゃ。じゃあね。』
和音ちゃんはさっとリビングを出ていった。
あー・・・・うー・・・・。
「あー、ふむん、何か、見るかね?テレビドラマか、映画か。」
「あ、はい、では・・・・。」
優ちゃんが敬明先輩の方に選びに行った。
「えーと、これにします。」
「ふむん、そうか。では、見ようか。」
見せてもらった映画は宇宙人と少年の友情を描いた、有名なものだった。その映画がちょうど終わったときに先生方が帰ってきた。
「ただいまーあー疲れたー。」
「ただいま。優理、彼女らが見てるからしっかりしてくれよ。」
「えっあー、もう手遅れじゃない?」
「それもそうか。」
先生方、仲いいなぁ。あ、お腹空いてきた。
「よし、じゃあ、ご飯にしようか。」
「あ、じゃあ私、手伝ってきます。」
リビングでも香りがしていたからわかっていたけど、今日はカレーライスのようだ。そして、お皿にはご飯を盛り終わっていた。どうやら、先生方が帰ってくるのに気が付いていたようだ。和音ちゃんはサラダを作っていた。
「手伝うよ。えーと、カレーを注いで、運ぶね。」
『わかったわ。よろしくね。』
「えっと、運ぶお盆は、これでいい?」
『うん、それそれ。運べる?』
「うん、これくらい、大丈夫だよ。」
2往復して全員分のカレーライスを運んだ。
「美味しそー!」
「うん、今和音ちゃんがサラダ作ってたからもうちょっと、待っててね。」
「うん!」
穂高ちゃんが目をキラキラさせてカレーライスを見ている。うん、とっても美味しそうだ。
和音ちゃんと手分けして全員分のサラダを運んだ。サラダはコールスローサラダで、こっちもとても美味しそうだ。
「それでは、感謝を込めて。」
「いただきます!」×7
「んー美味しい~!」
辛さは程よくて、肉はホロホロ、じゃがいもはホクホクで味が染みてておいしい!コールスローサラダも程よい酸味と野菜の甘さがマッチしてて食が進む!
カレーライスはすぐに無くなってしまった。
『おかわり、する?』
「うん!」
立ち上がろうとしたら手で制された。
『座って待ってて。』
和音ちゃんは私の皿を持って台所に行った。
少しして戻ってくると、カレーライスは大盛りにされていた。やったぁ!
『ふふふ。』
「ん?和音ちゃん、顔に何か付いてる?」
和音ちゃんがこっちを見て笑っていた。
『いいや、とても美味しそうに食べるなぁって。』
「うん、だっておいしいんだもん!」
そのあとサラダの方もおかわりした。とっても美味しかった。
「ごちそうさまでした。」×7
「あー美味しかったぁ・・・・。」
「ふむん、では、これからそれぞれの仕事をしようか。上白石君、和音は地下だ。」
「はい!」
今回も模擬戦出来るんだろうか?楽しみだなぁ。
お読みいただき、ありがとうございました。
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