8話 荒ぶる穂高と部活動
「お、おじゃまします。」
「ふふ、そんなに緊張しなくても、取って喰ったりしないさ。」
「は、はい。」
私は今、武正先輩の手伝いをするために先輩の部屋に来ています。
「えっ?」
私は驚いて、部屋の入り口で止まってしまった。部屋の中にはペンタブの接続されたパソコンがあり、そのモニターには、私が見間違えるはずのない、大好きなてかりんさんの書きかけの原稿が写し出されていたのである!
「こ、これは、てかりんさんの新作の人外百合シリーズ!?え、えっうそ!もしかして、えっ?」
「本当にファンなんだ、嬉しいよ。」
「エッアッ、ほんとに、あなたが、あなた様がてかりん様なんですか・・・・!?」
「うん、そうだよ。」
「ハアアアアア・・・・ま、毎日あなた様の漫画を読み返してますうぅぅぅ・・・・。あの、えっと・・・・。」
憧れの漫画家さんとの出会いに頭がショートしそう・・・・。
「ははは・・・・。えっとね、僕の手伝いなんだけど。」
「ひゃっ、はい!」
「料理以外の家事をするんだ。料理は和音ちゃんがするからね。」
「はっ、はい!がんばります!」
「ははは、そんなに緊張しないで、あと、様とか付けなくていいから。」
「ひゃい!」
なんとか返事をすることで精一杯だった。
「「「おじゃましましたー!」」」
「うん、また明日、学校でね。」
もうすぐ日が暮れるため、私達は帰ることになった。和音ちゃんはまだ私との会話に慣れてないのか、見送りに来ることはなかった。
「おはよう、さゆりちゃん。」
「おはよーさゆりちゃん。」
「うん、おはよう!」
「やあ、おはよう、君達。」
「おはよう。」
「えっ、た、敬一先輩?お、おはようございます。あ、和音ちゃんと武正先輩もおはようございます。」
敬明先輩、と呼ぼうとしたら手で制された。外では偽名で呼ばないといけないんだった。
「おはよーございます、先輩方、和音ちゃん。」
「おはようございます。」
和音ちゃんはまだ慣れてないみたいで、私と目を合わせようとしてくれない。
「今日から、共に登校しようと思ってな。一緒に登校してくれるか?」
「はい。いいですよ。」
「ああ、そうだ、今週の金曜日から日曜日まで、泊まりに来てくれないか?」
「ええ、まあ、帰って親に聞かないとわかりませんが、おそらく大丈夫です。」
「そうか、よかった。」
それからは、武正先輩の話が上手く、話題が途切れることもなく、楽しく登校できた。
「あー、この文章を・・・・上白石さん、読んでください。」
「はい、ええと、・・・・。」
「ここ、12ページの始めからだよ。」
「あ、ありがとう。」
少しボーッとしてしまっていた。気を付けないと・・・・。
「はい、そこまで、上白石さん、ありがとう。座っていいわよ。」
座るときに横から視線を感じた。横を見ると、和音ちゃんが私のことを見ていた。
『やっぱり、かっこいいなぁ・・・・。』
慌てて前を向いた。か、かっこいい、なんて・・・・。
授業をなんとか乗り気って、放課後。
「連れてきたぞ。」
私たちは、敬明先輩に連れられ、学園長室に来ていた。なんでも、手伝ってほしいことがあるみたい。
「やあ、よく来てくれたね。」
「あー、早くしてちょうだい、まだ仕事が残ってるのよ・・・・。」
部屋には、武正先輩と藤田先生がいた。とりあえず、ソファに座る。
「今日、君達を呼んだのは、部活動についてだ。この学校では文科系の部活動は中高入り交じって出来るようなっている。」
「ええ、そうみたいですね。」
「へー、穂高ちゃん、知ってた?」
「ううん、私も初めて知ったよ。」
優ちゃんはなんでも知ってるなぁ・・・・。
「ふむん、それでな、我々には秘密も多い、部活動は何かと一緒になって行動するから秘密が漏れる危険性がある。それに、妖怪が出ても対処しやすくなる。だから、ここのみんなで1つの部活動を作ろう、という訳なんだ。それに、面倒な行事も部活動を理由に逃れられる。」
「絶対あとのことが本命の理由じゃないか・・・・。」
「こ、顧問は乃木先生がやる。」
「おい。」
「い、いいではないか!」
「ちょいちょい、早く終わらせてって言ったよね?」
敬明先輩って、以外と面倒くさがりなんだ・・・・。
「ふ、ふむん、と、ともかく、みんなでどんな部活動にするか決めようと思ってるんだが、何かないか?」
「はいはーい!私、マラソン部がいいと思いまーす!」
どやっ、いい案でしょ!
「それ、あなたがやりたいだけでしょ。それに、普通の人は四六時中走りたい、なんて思ってないわよ。」
「えっ!?」
回りを見渡すと、全員が深く頷いていた。
「えぇー・・・・。」
そんなぁ・・・・運動したいよぉ・・・・。
「ええと、さゆりちゃんがすみません。話を始めましょう。まず、文化部は今なにがありますか?」
「ふむん、確か、美術部、演劇部、文芸部、家庭科部、軽音楽部、コンピュータ部、茶道兼華道部、写真部、将棋部、書道部、クイズ同好会、漫画同好会だな。」
多いなぁ・・・・中高一貫だからかな?
「うーん、思い付きそうなものは一通りありますね・・・・。」
「そこで、だ。ボランティア部、なんてものはどうだ?」
「ボランティア部、ですか?そうですね・・・・便利屋、みたいなものですか?」
「ああ、そうだ。」
「いいですね!楽しそうです!」
「まあ、いいんじゃないでしょうか。自由に動けやすいですし。問題は、これに許可が降りるかどうか、ですが。」
「私が許可を出すから大丈夫よ。そのためにいるんだから。じゃあ、この紙に部活動のこと書いてね。ふわぁ。」
藤田先生が武正先輩に紙を渡す。
「はいはい。」
武正先輩は、さらさらと部活名とメンバーを書いていく。
「部長は、敬明でいいよね?」
「ああ。」
「うん、あとは部活の内容だね。どうしようか。」
「そうですね、校内に箱を設置して、それに依頼書を入れてもらうような形にしたらいいのではないでしょうか。」
さすが、優ちゃんだ。すぐにこういうこと思い付くなんて、すごいなぁ。
「なるほど、それでいいかな?じゃあ書くよ。」
武正先輩は優ちゃんが言ったことを文章として纏めながらすらすらと書き始めた。
「はい、先生、これでいいですか?」
「ふわぁ・・・・早いわね。どれどれ・・・・うん、誤字脱字も無いし、いいんじゃない?じゃあ、かいさーん、さーて、仕事しなくちゃね・・・・。」
眠いのか、あくびをしながら部屋を出ていった。
「では、僕たちも帰ろう。」
先生に続いて、私たちも部屋を出た。
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