7話 模擬戦と読心術
学校が終わり、敬明先輩、武正先輩、和音ちゃんの3人に連れられ、私たちは昨日来た屋敷に来ていた。昨日の笑顔の和音ちゃんとは違って、学校での和音ちゃんは無表情だった。無表情でもかわいいけどね!それでも笑顔の方がかわいいからね!
「「「おじゃまします。」」」
「はい、どうぞ。」
屋敷の中に入ると、和音ちゃんが突然笑顔になった。え?なんで?
「和音ちゃん・・・・?」
「ん?ああ、和音は呪いのせいか、外では表情を出すのが難しいんだよ。」
「そう、なんですか。」
なんだか、少し悲しい、外だと笑うこともできないなんて・・・・。そんな気持ちを悟られたのか、和音ちゃんが私に抱き付いてきてくれた。手を目一杯伸ばして、私の背中に手を回してくれる・・・・。
「あー、その、まだ玄関だから、とりあえず、リビングまでは入ってくれるかな?」
「あっ、は、はい。」
和音ちゃんが私から離れる時の顔も赤かった。
「あー、先生方は夜まで帰ってこないか、幼方さん、どうしよっか?」
リビングのソファに座ってすぐ、武正先輩がそう切り出してきた。
「ふむん、なら、僕のところで訓練を見るか?」
「あ、そうします。」
「では、始めようか。・・・・聞いていたか?和音、上白石君。」
「え、は、はい。・・・・たぶん。」
今、私の膝の上には和音ちゃんがいる。今、私の膝の上には和音ちゃんがいるのだ。うん、つまりそういうことだ。
「ああ、やはり聞いていなかったか・・・・。訓練を始めると言ったのだ。付いてきてくれ。」
「はい、すみません。和音ちゃん、降りて?」
和音ちゃんが素直に降りてくれる。それを見て敬明先輩も立ち上がり、リビングの奥へ進む。付いていかないと。
「あれ?優ちゃん?」
「はあ、私は見学よ。手伝いをする先生方がいないもの。」
「あ、そうなんだ。」
「ええ、行きましょ。」
私たちは敬明先輩達に付いて、地下室に入った。
「さて、ではまず、和音と模擬戦をしてみたまえ。本気を出してくれ、とまでは言わないが、ふざけるんじゃないぞ。」
「はい!」
こんなに楽しそうなこと、ふざけるわけがないじゃないか。和音ちゃんも強いらしいし、全力で挑もう!
とても広い地下室で、私と和音ちゃんは向かい合う。
「では、始め!」
私は一息で距離を詰めて腕を掴む。そのまま投げっ!?・・・・突然体がふわりと浮き、私は和音ちゃんに馬乗りにされ、倒されていた。首に手が置かれている。
「勝負あり、だな。」
私の敗けだ。一瞬何が起きたか分からなかったが、恐らくあの状態から足を払われ、そのまま倒されたのだろう。今まで大人にだって勝ってきた私がこんな小さい子に敗けるなんて、なんだか楽しくなってきちゃった。
「では、次に魔法を教えよう。魔法と一言で言っても様々だ。とりあえず今日は読心術を教えよう。立って、こっちに来てくれ。」
「はい。」
和音ちゃんにどけてもらい、服を軽く払って立ち上がり、敬明先輩に近付く。すると敬明先輩が私の頭に手をかざした。
「覚えろ。」
「い"っづ」
頭に電流を流されたような激痛が走る。痛みのあまり頭を抱えてよろめいてしまう。
「さゆりちゃん!?」
優ちゃんが心配して走り寄ってくるのが目の端に見えた。
「大丈夫、大丈夫だから。」
「本当に?!」
「幼方君、安心したまえ、痛みは一瞬で、後遺症もない。ただ、心を読めるようになっただけだ。」
「そのよう、ね。」
「うん、大丈夫だよ、優ちゃん・・・・?」
優ちゃんを安心させようと、いつも通り目を見た瞬間、『声』が視えた。
『さゆりちゃん、大丈夫そうね。よかった。』
「ふむん、言ってなかったな。読心術は誰かと目を合わせるだけで発動するのだよ。なあに、代償なんかはないから安心したまえ。」
「え、じゃあ今さっき目を合わせたとき、心を読まれたの?」
「う、うん。」
「なんだか恥ずかしいわね。やましいことはないのだけれど、普段は目を見ないでね。」
「うん、分かった。」
「ふむん、これで君も和音と会話ができるはずだ。話してみるか?」
「はい。」
今度は、和音ちゃんの目を見て話しかける。
「えと。こ、こんにちわ?」
『かっこいい・・・・はっ、えと、こんにちは?なんて、届かな・・・・。』
「えと、視えてるよ。」
『はうっ・・・・あ、え?敬明に、教えてもらったの?』
はうっ、って、かわいい・・・・。
「うん、そうだよ。」
『あ、えと、その、ごめんなさいいいいいいいい。』
和音ちゃんは走って地下室から出ていってしまった。
「あっ、ごめんなさい。私、なにか・・・・。」
「ふむん、いや、大丈夫だ。少し、驚いただけだろう。なにせ、ずっと僕以外と会話してないのだからな。じきに慣れるさ。とりあえず、君はリビングのソファで休むといい。疲れただろう。和音は今はそっとしといてやってくれ。」
「は、はい。では、お先に失礼します。」
私はさゆりちゃんが出ていってから敬明先輩に話しかけた。
「和音ちゃん、本当に驚いただけ、なんですかね?」
「ふふ、まあ、面白そうではないか。」
「はあ、そうですか。まあ、さゆりちゃんが怪我しないならいいけれど。」
呆れた、妹のような子も面白そう、で片付けるなんて。まあ、面白そうってのは、確かね。さゆりちゃんも和音ちゃんもお互いのこと好印象を持っているみたいだしね。
「ふむん、君はいいのかね?上白石君が取られても。」
「ふふ、あなたにもわからないことはあるのね。私とさゆりちゃんはただの幼なじみよ、それ以上でも、それ以下でもない、ただの、ね。」
「ふむん、そうか。」
「それに、これ以上の関係なんて、真っ平ごめんだわ。これ以上トラブルに巻き込まれるのでしょう?ああ、そのときはあなた達が助けてくれるのかしら?土曜日のように。」
「ああ、そうだが、気が付いていたのか?あのときの妖怪が、上白石君を狙っていたこと。」
「ふふ、まあ、そんなところよ。」
さゆりちゃんの周りだけあんなに暑かったのが土曜日のあれからきれいさっぱり消えたんだもの。少し考えれば気付くわ。
「ふむん、まあ、ここを出ようか。少し喉が渇いた。」
「そうね。」
部屋を出る敬明先輩の後ろに付いて、私も地下室を出た。
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