文化祭2
ところどころでは、文化祭に向け準備をしている。
もう、お祭り騒ぎだね、準備の段階から。
授業もそれでほとんどが潰れ、クラスごとで出し物にむけて準備を推し進めているところであるが、普段椅子に座っての相手から一方的に受ける授業よりかはいいと思ってしまう。あれは実に眠気を誘う。特に、午後の授業はかな~りしんどい。こういった肉体労働のほうが実は自分に合っているのではないか、そう思うこのごろである。
一日の作業を終え、ある者は部活へ、またある者は帰路につく。作業を続ける者もいたりはするが、今日のところはすまないが、あがらせてもらう。
さてと、屋上に向かうとしますか。
向かう理由は、いつもの演奏ではない。
呼び出しを受けたからだ。
なぜ?
これまで呼び出しを受ける、そういった思い当たる節はない。
からかい?
いや、『 からかわれる 』そんな親しい関係はあったか?
ない。絶対ない。我ながら悲しいほどに。それは実感してる。
呼び出し……。
なんでこうも、そっち方面に思考が傾くのか。期待しないように心掛けるのだが、どうしても心の隅では淡い期待を持ってしまう。
はぁ~、くだらないな。
複雑な心持で足を運ぶのだが、また心のどこかでは、どうもそれと相反するのか、帰りたいと訴えている。
ほんとに、ころころと変わって疲れる。
そんな自分に少し嫌気が差す。
しかし、誠実ではありたいとは思う。
それが自分を突き動かし、ドアノブに手を掛け、ドアを開ける。
いまの時間帯は下校時刻。
ちょうど、山々に沈む前に陽が一日最後の光を放っていて、奥に佇んでいるひとりを差し込んでいる。
それを見て、淡い期待に重みが増す、そんな感覚に襲われたが、うん?
「 あの~、自分に用ってなに? 」
視線を遠く、色づく山々に定め、頬を掻きながら背を向けた相手に話しかける。
呼び出したのは、同じクラスメイトの青葉だった。
「 木戸くんって、たしか、あるグループで音楽活動してるんだよね? 」
……
…… あぁ、そういうこと。しかし、少し勘違いしてそうなので
「 活動してるよ。っていっても老人ホームや、子ども会で演奏する程度のものだけど 」
その回答に笑みを浮かべ
「 うん、十分だよ。話しは逸れるけど、私が文化祭の運営委員だってのは知ってるよね 」
話しが、いまいち掴めないが、
「 実は公募型の時間枠で申請してた一般の2組が急に出演できなくなったみたいなの 」
まさか……
「 それで、もしよければ、そのグループの人と参加してもらえないかなって 」
うーん、と腕を組み、唸ってしまう。個人的には、できれば控えたいのだが。
「 まぁ、とりあえずメンバーには連絡してみるよ。それより…… 」
「 ん、なに? 」
手を後ろに組み、笑みを浮かべて前かがみ姿勢で聞いてくる。
「 自分への呼び出し方だけど、あれ、やめてくれませんかね。絶対誤解するよ。今どき下駄箱に手紙って…… 」
「 ごめんごめん。木戸くん相手だと、ついつい、からかいたくなっちゃって。だって聞く話しでは、女子に興味ないって話しだよ 」
なんだ、その話しは。まぁ、そういった類の話しは避けてきたからな。
はぁ~。というより、こういったいたずらは疲れるので、やめてほしい。
ちなみに、グループメンバーにLINEで連絡とったところ、即オーケーが来た。
…… 避けられんらしい。
そういえば、あいつらの文化祭は月末だっけ。