日常1
月日が流れ、六月。
学校には少し慣れてきたかなと思う。
ようやく、わたし自身にも周りを見渡す余裕が生まれてきた。
入学した当初は、クラスの人たちと部活の先輩との関係に一抹の不安を感じていたが、いまはそれがない。うん、順風満帆だ。
多くのクラスメイトも、いまではある程度打ち解け、ところどころで青春の花を咲かせている。
けど、全員がそうではないみたい。
よく見ると、二極化しているなって思う。ある者は、頬杖ついて窓を見て呆けており、また、ある者はスマホにひたすら視線を固定している。
この二人に共通しているのは、耳にイヤホンをし、人に視線を合わせないようにしていること。まるで、『 自分のことは放っておいて 』と主張するかのように。
…… まぁ、気持ちはわかるけどね。
ただ、いまはいいかも知れないけど、これからの学校生活で絶対に支障になると思う。
視線を二人から、ある者に移す。
彼はよく分からない……。
彼らと同じく人を避けているのか、それとも…… 。
それよりも…… 。
名前はえっと…… 、なんだっけ…… 。
「 青葉どうしたの、木戸くん見て? 」
突然声を掛けられ、びくっとする。
そういえば、そんな名前でしたね、と内心、木戸くんに謝りつつも
「 …… いや、木戸くんって、へんだよね…… 」
と、毒舌をはいてしまう。ごめんね、ついっ。
「 へんって失礼でしょ。けど、実際そうだよね。なに考えているのか、よくわからないし 」
と同調する、高島さん…… 。
わたしには、よく連れあう友達が二人いる。一人は、わたしと比較的趣味も考えも近いと思う高島さん。
もう一人は、
「 木戸は、あいつらと同じコミュ障じゃないの。いつも机に伏してんじゃん 」
と、先の二人に視線を振りながら、話す小松さんだ。
なかなかズバッと、ものいう姿勢に男子含め一部の人から引かれてはいるが、逆に竹を割ったような、その性格に好意を持つ人もいたり。
ただ、あまりにもストレート過ぎて、ややビクつくんだけど。
「 うーん、どうもコミュ障ってわけじゃなさそうなんだよね。このまえ清水さんだっけ… 、掃除当番でもないにも関わらず、その子の手伝いをしてたり。昨日わたしが授業の備品運んでいたら、手伝ってもらっちゃったし…… 」
「 へぇ~、女子のポイント稼ぎか 」
「 うーん、どうだろう?先週、野球部の柴田くんが、原付のカギをなくしたみたいで、それをたしか、夜までいっしょに捜してたみたいで…… 」
小松さんが腕を組み、唸る。
先の二人のやり取りに、わたしも彼のイメージ像を膨らませるが、いまいち掴めない。
「 聞いているかぎりだと、普通に話せるし、いいやつだと思うんだけど、どうも解せない。
なんで、そう、人と絡む機会がありながら、あいつは休み時間いつも一人なんだ? 」
今度は、高島さんが考え込む。
なんでなんだろう。人嫌い?
でも、それだと、なんで『お節介』… って、失礼か、それが腑に落ちないし。
そして、そんなクラスメイト一人の話題で考え込む互いの様子が、おかしかったのか、みんなクスっと笑みをこぼしてしまう。
木戸くんは最終的に、変人扱いされるのでした。