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人形(ひとかた)~伊瑠香の帽子~  作者: なんこつとりで
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第九話:海賊帽子

「な、なんと……。では伊瑠香様は誘拐されたのではなく奴らを通じて帽子探しを……」

「だからそう言ってるじゃないの。早とちり人形」

「私は護衛人形だ!しかし、それでは我々が悪人みたいでは……」

「充分悪人よ!全く……」

「――すまん」

しびれが取れてきたのか舞はゆっくりと起き上がる。

「とにかく海賊帽を探すからあなたも手伝ってくれるかしら?」

「ああ……」

「その必要はないわ」


突如、聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。振り向くと、そこには車椅子に乗った恋姫とそれを引く雅の姿があった。

「「恋姫様!」」

「ね、姉さん!」

皆が驚いたような顔で恋姫達を見る。普段は外に出ないので恋姫の姿を見た者は少ない。故にあまり認識のない陸子や玲於奈はありえない光景に見えたのであった。

「久しぶりの外というのは気持ちいいわね雅」

「そうですね。今度、皆でピクニックに行ってはいかがですか?」

「そうね。そうしてみようかしら。てなわけで皆さん。どうです、今度の日曜日に私達とピクニックでも」

恋姫はにっこりと微笑み問う。

「は、はあ恋姫様がそうおっしゃるのならば別に構いませんが。しかし恋姫様、今はちょっと取り込んでますので…」

「わかってますよ絵梨佳。海賊帽の事でしょ。さ、でてきなさい」

恋姫は笑顔で背後にある巨大な岩の方を振り向く。と、その時岩の背後から一人の女性が姿を表した。

すらりと背が高く、右目に眼帯を装着し、髪をポニーテイルにした女性だ。服は白のタンクトップにオレンジ色のマントを羽織った奇抜な服飾である。肩には大きなバックをかけている。

「あ………」

その姿を見て伊瑠香が声を上げる。

「お姉ちゃん!!」

「伊瑠香!」

その瞬間、女性は駆け、伊瑠香を激しく抱きしめた。

「伊瑠香!伊瑠香!無事か!無事なんだな!あーよかった!心配したんだぞ!」

「あう……」

激しく頬ずりする女性、戸惑う伊瑠香。はたから見ると怪しい行為にしか見えない。

「伊瑠菜さん……」

恋姫が苦笑いで伊瑠菜を見る。

「あ、ああ。すまない。つい嬉しくてな」

そう言って伊瑠菜は慌てて伊瑠香を解放し、バッグから黒い大きな帽子を取り出した。

「それは!」

 写真で見た伊瑠香の被っていた海賊帽子がそこにあった。

「!」


伊瑠香は驚いた顔で伊瑠菜を見つめ、受け取る。

「どういうことです?帽子は行方不明だったのでは?」

陸子は首をかしげる。他の者も答えを待つかのように伊瑠菜と恋姫を見る。

「実はあの後、伊瑠菜さんが訪ねて来てね。海賊帽子を持って真っ青な顔で。どうやら伊瑠香ちゃんを探してる途中で見つけたみたいよ」

「へ?」

一同唖然とする。それはそうであろう。見つからない帽子を手がかりを見つけながら、闘いながら探し出したのだ。それが既に空賊団の手元であったとなると納得いかない。

そんな皆の混乱の中、伊瑠菜は彼女らに向き合い頭を下げた。

「私は伊瑠菜。空賊人形・伊瑠菜だ。空操遊戯団の船長であり、伊瑠香の妹でもある。この度は、私の勘違いにより皆に多大な迷惑を被ってしまった事を謝りたいと思い、ここに来た。本当に申し訳ない!」

深く頭を下げた伊瑠菜を一同は黙って見ていた。しばらく無言が続き、やがて絵梨佳が前に出る。

「今回伊瑠香さんより依頼を受けました、青春人形の絵梨佳でございます。結果として、現時点で帽子が見つかったので私は依頼を達成したことになります」

そして絵梨佳も静かに頭を下げた。

「以上で私の仕事は終了となります。よかったわね伊瑠香」

絵梨佳は帽子を被り満足顔の伊瑠香に微笑みかけた。

「うん!」

「え、ええっとだな。絵梨佳殿……怒ってないのか?」

「――まあ怒ってますけど、でもまあいいです。久しぶりの大きな依頼で、戦闘も出来ましたし、いい経験を積んだと思えばね、皆」

 絵梨佳は笑顔で少女達に問いかける。

「そうね。久しぶりの暇つぶしだったわ」

「ちょっと怖かったけど、新鮮な体験が出来たからいいです」

「運転スキルが上がったと思えばこのくらいどうってことないっすよ!」

「絵梨佳の椅子に座れたからよかったの」

「とまあ、皆こう言ってるんだから許すわよ。貴重な経験をありがとうね」

笑顔でお礼を言う絵梨佳。そんな姿を見て伊瑠菜は絵梨佳に抱きついた。


「きゃっ!」

「何て!何ていい人形なんだそなたは!長年空賊をやってきたがにっこり笑って許してくれる人形がどこにいただろうか?いや、そなたが初めてだ!この空賊人形・伊瑠菜!必ずやお礼をして差し上げようございます!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて!日本語めちゃくちゃ!」

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