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デッド・エンド・ライン  作者: 家猫えづき
6/7

オモテとウラ(1)

 少なくとも俺は覚えてない・・・が、最初エレナに会ったとき、初めてな感じがしなかったのはそういう事か?


「・・・ごめん、覚えてない。」

「いいんです。会ったのは本当に一回だけなので・・・。」

「それよりも拾われたって言ってたけど、どういうことだ?」

 何より気になったのが、そこだった。親父からそんな話は一回も聞いたことがない。それと、一回しか会ったことがないことって繋がってるのか?

 ふとエレナを見ると、しっかりと俺を見て伝えようとしていた。


「・・・私がまだ、7歳だった時です。私は父と母を刀治さんに殺されたんです。あ、殺されたと言っても別に恨みとかはなくて、むしろ救われたんです。・・・父と母は、裏社会の人間でテロリストやマフィアに投資をしているような人でした。表向きは世界的に有名な資産家だったんですが、その裏は人身売買や臓器売買でお金を儲けているような人達だったんです。」

「・・・」

 ここまでは珍しい話じゃない。裏社会の人間は、必ず誰かの反感を買っている。もちろん恨みがある人間もいる。言ってる俺も、裏社会の人間だし、親父やここにいるエレナもそういうことになる。俺が殺してきた人にも家族がある人もいただろうし、俺も失いたくない人だっている。それでもエレナは救われたって言っている。

 俺がエレナの話を静かに聞いていると、エレナは一呼吸置いて続けて話し始めた。


「まだ幼かった私は理解できませんでしたが、悪いことをしているのは分かっていました。・・・そんな時に、両親が居間で話しているのを聞いてしまったときがあったんです。父が私を売ろうとしている話を母にしているのを・・・。母はそれをいい考えだと言っていました。その時に思ったんです。私はただの商品なんだと。」

 殺しの稼業には、いつだって犠牲が付き物だ。この場合、エレナは犠牲になるところだったってことか。でもどうやって、被害者にならずに済んだんだ?いくらなんでも、子供が依頼を頼むには経済的にも不可能なはずなんだけど、エレナはなぜ助かったんだ?


「・・・私がなぜ助かったのか気になるんですか?」

「あれ?声に出してたか?」

「いえ、顔に書いてありましたよ?『なぜだ?』って。」

 そんなにわかりやすい顔してたのか・・・恥ずかしい。

 エレナは俺の疑問に答えるために、再び口を開いた。


「・・・助かったのは、ホントに運がよかったんです。両親の仕事柄、色々な方面から恨みを買っているのは知っていました。そのうちの誰かが、依頼したのとタイミングが合ったんだと思います。私が売りに出される前日に偶然、刀治さんが任務で来たんです。・・・ホントは私も殺されるはずだったと後で聞きました。」

「・・・なるほどな。それで助かったわけか。」

「驚かないんですか?なぜ任務に忠実な刀治さんが、私を殺さなかったのか。」

「別に珍しいことじゃないしな。エレナが男だったら殺されてたかもな。」

 親父は無類の女好きだからな。過去にも女の子逃がして爺さんにこっぴどく怒られてるの見たし。・・・ただ、エレナが助かったのは女だったからって理由だけじゃない気がする。


「エレナの事情は分かった。あと、問題って言ったら・・・雪乃だな。」

「ごめんなさい・・・。」

 エレナが心地の悪い顔をして謝った。


「エレナは悪くないよ。俺がここまで隠してきたことのツケが回ってきただけだ。」

 こんなことならもっと早く言っておくべきだったかな。ただあいつに言うと巻き込みかねないんだよな・・・。

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