――聖受歴1,538年 雪耀月2日 雪
黒歌鳥のやるこっちゃないが、ある程度の宣伝効果ってのはやっぱ必要なんだろうな。
一兵卒が王のそっ首を刎ねた、ってのより『革命軍盟主が愚王を討った』っつう形の方が兵の指揮だの後々の利権云々だの諸々の面において通りがよくなるとかなんとか。
……ってエディッセの野郎も、うちのガキも言いやがる。
絵になる形、おさまりの良い形、そういう風に話を纏めた方が、民衆の期待にも沿うんだとよ。
まあ、ごちゃごちゃ言ったが。
何のことはない、後付けの理由だ。
この役目を俺が負ったのは、俺がそう望んだからだ。
包囲した革命軍の城攻めに合わせて、場内に突入する別動隊。
それに、俺は真っ先に志願した。
元々は俺が始めた訳じゃねえんだが……これが、俺なりのけじめのつけ方だと思ったからよ。
それが、名ばかりとはいえ革命軍を率いて王都くんだりまで来ちまった、俺のやるべき決着のつけ方だってな。
早く、このつまらねえ内乱を収めなくちゃなんねえ。
全て、俺が終わらせる。
……いつまでも俺らがぐだぐだ戦ってちゃ、周辺の国々が下らねえちょっかいかけて来ないとも限らねえしな。
――俺は、知らなかった。
黒歌t……どっかの暗躍大好きな野郎が、他国の干渉を気にせず心置きなく王家を殲滅できるよう、『内憂外患』の『外患』の部分を早々に立ち上がらねえよう挫きまくってたとか。そういうことは。
……うん、知る由もねえよな?
そうして俺は、起こる筈もない他国の干渉を案じながら。
早々に戦いに決着をつけるべく。
王城内部に――それもより奥宮に近い場所に――通じるっつう隠し通路へと秘密裏に突入した。
隠し通路の内部は狭く、しかし道のりは長く複雑だ。
曲がりくねった道は幾つもの罠や分かれ道が俺らみてぇな侵入者を阻もうとしてくる。
……分かれ道の正誤も罠の避け方や解除方法も、事細かに黒歌鳥が残した図面に書いてあったがな!
あいつ、マジで得体が知れねぇ……これ、国家機密中の国家機密だろ。
………………いろいろ気になるが、今は細かいことを気にしてる時じゃねえな。
間違ってないなら、今はそれに越したことはない。
王城を包囲している仲間達と共鳴して、一気に行動を起こす。
その為に、俺らは予定されている待機位置に明日の正午までに辿り着いておかなきゃなんねえ。
俺らが隠し通路を突破すんのに時間を取られることを見越して、時間を合わせての作戦となった。
失敗は許されない。
成功だけが、俺らに許された道だ。
だから今は、時間内にこの通路を突破する。
地面の底まで続く、先の見えない暗い穴。
それは、なんだか……なんつうか、奈落に続いている穴のように見えた。
閣下「攻城櫓なんぞ、いつの間に用意したんだよ……それも、こんな数。王城丸ごと灰燼に帰す気かよ?」
軍師「黒歌鳥から届いた差し入れです。前もって、近隣の大工や職人に発注をかけていたらしく……今日の日付で納入するようにと」
・発注書の日付 ←6年前(※黒歌鳥12歳)
閣下「あいつ、マジで計り知れねえな!?」




