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――聖受歴1,538年 日耀月24日 晴れ




 黒歌鳥が残していったっつう王城の図面(隠し通路完備)……。

 抜け穴の位置を特定するだけでも時間を食ったが、それを処理すんのにもまた時間がかかる。

 こんなもんをどこで入手したんだ、あいつ。

 マジでやばい代物だろ、これ。

 しかもどう見ても物が新しい。

 紙も、インクの劣化具合も最近の物としか思えねえ。

 元は書士だったっつう奴の鑑定によると、インクの退色から逆算して過去三年以内に書かれた代物であることは間違いない、らしい。

 うん、マジでどこで手に入れたんだよ。あいつ。


 それでも野郎が残したっつうから謎の信憑性がある。

 図面に従って隠し脱出路の出口を探ってみれば、必ずそれっぽいもんが見つかったしな。

 城の中の奴らが俺らの関知しねえ間にトンズラしねぇよう、念入りに埋めた。埋めて、更に塞いだ。

 けど作業も半ば以上進んだあたりで、エディッセがなんか言い出しやがった。


「これを利用しない手はありません」


 奴が提案してきた策は、ある意味で挟撃。

 いや、ちと違うか?

 まあ、そんな感じの代物だ。

 今は小康状態にある城攻めを、一気に本格化させる。

 そうして城を包囲する革命軍にグラハム達の注意を引き付けている間に、敢えて潰さず残した隠し通路から別動隊が突入。

 城内での攪乱・陽動を行いながら、別働本体が王の首を狙って玉座を目指す。

 王を抑え、正当な王の証とされる王冠を手に入れれば俺らの勝ち――ってな。


 本来は、城の中の奴らも同胞だ。

 それも末端の兵士になるほど、上に無理やり従わせられているだけだ。

 それを無理に戦わせている奴こそが――国王。

 上の命令で戦いをやめられねえってんなら、上の奴を真っ先に抑える。

 そもそもくそったれな国王の為に、同じ国の人間を無為に殺すのも忍びねえしな。

 王に逆らえねえってんなら、王がどうにもならなくなりゃあいつらも投降するだろ。

 グラハムは…………あいつばかりは、まあ、ちっとわからねえがな。

 忠義大事なあいつのことだ。

 変に自棄を起こして、無理を承知で国王の救出を、なんてしなけりゃ良いんだが。

 あらかじめ国王の首を刎ねたとしても、あいつが暴走したら多分止まらねえだろうな。

 その時は亡き主君の首を取り戻すとか、そういう理由で突っ込んでくるだろうから。

 あいつが動くとすれば、絶対に退かねえ。

 一時退いて、時を待つとかはしないだろう。


 あいつが王を取り戻そうとする時は……


 ………………消極的な自害、を狙ってのことだろうからな。


 あいつは馬鹿だ。

 俺も馬鹿だが、あいつはもっと馬鹿だ。

 俺は単純な馬鹿。

 だけどあいつは難しく考えすぎる、頭の良い馬鹿だからな。


 

 だから、俺がなんとかしてやらねえとな。


 本当に、あいつは手のかかる副官だぜ。




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