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――聖受歴1,538年 始耀月8日 曇り




 敵指揮官の無能ぶりに後味の悪い思いは続く。

 ほんっとうに、マジで、情けねえ。

 山積みの後処理さえ残ってなけりゃ頭抱えて溜息ついてたね、こりゃ。

 そんな暇ねえから、土手っ腹に大穴開けられて明け渡された砦の確認作業に没頭するが。

 ……国軍兵(てき)が残ってるかも知れねえし、俺が先頭立って砦の確認する訳じゃねーけどな。

 指揮する立場は立場で、あれこれ指図して回らねえとならねえし、体が四つくらい欲しくなるが。


 ま、俺よりこういう作業得意な部下にほとんど丸投げしてるがな!

 それでも最終確認やら報告やらは俺のところに来るんで、動けねえ……。


 誰にも拘束されてる訳じゃねえのに、身動きのとれねえような息苦しい時間が続く。

 そうしている内に、俺のところまでまた新しい報告が来たんだが。


 その報告は、なんつうか。

 その、なんつうかな?

 気の重たくなる報告だった。


 はは。

 あははははは、はは。

 ははは……はぁ。


 ――黒歌鳥の姿が、どこにも見えねぇんだってよ。


 正直に言おう。

 またかって思った。



 もう珍しくもないが、あの野郎はまたどっかに「出張中」らしい。

 一体いつの間に姿をくらましやがったのか……。

 またぞろどこかに暗躍か、と。

 なんか手回しに行ったのかと。

 

 自然と革命軍の利になるよう動いてんだろうなぁ、と。

 漠然とそう考えて、ふと思った。


 あいつ、もう「自分の策は必要ない」っつってなかった?



 今になって、あいつが敵方に回るとかそんなことは有得ねぇって思ってる。

 あいつの、この『国』に……『王家』に対する負の感情みてぇなもんを、前から何となく感じ取っていた。

 だから、王家に利することはしねぇだろうが……。


 自分の策はもういらないと言った、あいつ。


 今まで考えたこともなかったが……いや、前は何度か考えていたものを、最近では可能性としても考えなくなっていたが。

 あいつは『革命軍を離れた』んじゃねえかって。

 そんな馬鹿げた考えが浮かぶ。

 はは………………馬鹿げた考え、だよな?


 自分で自分の考えを打ち消す。

 だが、なんでだか……心中に湧いた不安までは消すことが出来なかった。






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