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――聖受歴1,534年葉耀月21日 晴れ

 負けた。

 もう負けた。

 根負けだよこん畜生。

 やんやの喝采送んな、息子よ。

 お父さんが腐らなくって良かったって……あんまりな言い様じゃねぇか、娘達。

 何故か現在、俺の抱える食客は300人を超す大所帯と化している。

 村一番の大家族ー……って俺、認めてねぇからな?

 だから村長さん、若い奴らの住所登録について俺に相談しにくるのはお門違いだからな?

 なんでメシの時間になると我が家の庭で炊き出しが始まるんだろうな?

 ……俺が軍を辞めて、この新天地に根差してから早3ヵ月。

 そんで若い奴らが追って来てからは、2ヶ月が過ぎた。

 その間、うちの庭やら村の周辺やらに軍支給の簡易天幕(テント)張って生活しだした馬鹿共の根気に負けた。

 毎日自力で飯のタネを確保しに狩猟生活……って野生化してんじゃねえよ。

 なんで熊とか普通に狩ってきてんだよ。

 っつうか軍の支給品パクってんなよ。私物化してんじゃねえ馬鹿共が。

 俺も昔やったがな!!


 ただでさえ食料に乏しい北の土地。

 しかも貴重な働き手の男どもは苦役って名目で労働力に取られて帰ってこねぇらしい。

 そんな状況じゃ折角開墾した畑も荒れまくりだ。

 細々と食い繋ぐのに精いっぱいって聞いてたから、いきなり急増した馬鹿共に迷惑面されると思ってたんだけどな。

 結果的に言うと、俺らを受け入れてくれていた村の人達にゃ喜ばれた。

 本気で諸手を挙げて大喜びだ。

 どうやら若い奴等は誰かが何も言わずとも率先して、自分達から村の人たちの手伝いをやってたみてぇだ。

 それこそ荒れた畑を直したり、開墾し直したりな。

 当番制で協力体制を整えて、非番の奴は狩りに出かける。

 村を荒らしたり人を襲ったりと困っていた野獣の類をかなり間引くことになって、しかも村に肉類の提供もしてたらしい。

 ああ、そりゃ喜ばれるわ。

 しかも国境から入り込んで来ては悪さしてた北方の蛮族共を追い払っては懲らしめて……ってお前らいつの間にそんなことしてたんだよ! 俺、初耳だぞ!?

 蛮族共は俺もかなり追い払ってたが……って、あ?

 俺の不在時を狙ってわざわざ来てたから、その度に追い払ってた?


 あー……

 最近襲撃がねぇなと思ったら俺が知らないところでお前らが、ねー。

 …………って騙されるか!


 俺が村を完全に離れるのなんて、3ヶ月に1回程度だっての!

 いくらなんでも襲撃があったら気付く距離を離れやしねーよ!!

 お前ら、俺に知られる前に追い払うつもりで国境近くまで行ってただろ!

 完全武装で狩りに行くからなんかおかしいなとは思ってたんだよ!

 何が狩猟生活のついでだ。狩猟の方がオマケ状態じゃねーか!

 俺の薫陶が行き届いて……って買い被るな村長さん。

 俺はそんなことしてねぇ!

 俺はそんな指示してねぇからな!?

 あの馬鹿共が勝手にやってただけですー!!

  

 こ、この馬鹿共……本気で目が離せねえ。

 知らないところで何やらかすかわかったもんじゃねえ。

 いつの間にか俺の名を使って、勝手に善行を積んでいやがる。

 俺の知らないところで俺の名前使ってんじゃねーよ。

 何かあった時、責任取れねぇだろ!?

 あぁもう……仕方ねぇから俺が監督してやるよ。

 だからちゃんと報・連・相!!

 それだけはしっかりしてくれ、頼む。

 そうじゃねえと、俺の神経が保たねぇから……!


 俺が根負けの果て、仕方がねぇから面倒を見ると言った途端のはしゃぎ様……。

 俺が渋々だって、お前らちゃんとわかってるか?

 なあ、そのハイタッチは何なんだ。お前ら確信犯か、おい。

 まったく……大はしゃぎなのは構わねぇけどな、お前ら大丈夫か。

 監督するとなったら、今までみてぇに放置する気はねぇからな。

 お前ら俺の言葉にゃちゃんと従うんだろうな?





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