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――聖受歴1,537年星耀月13日 晴れ



 理解出来ねぇことって、割と世の中にゃ溢れてるんだな……。

 色々と思考能力の限界が来てたんで、黒歌鳥に情報を整理させてくれって試しに頼んでみた。

 無碍にされるだろーって思ったんだが。

 どういう風の吹き回しか。

「閣下には落ち着く時間が必要なようですね……今夜はここで野営にしましょう」

 なんて言葉と共に、野宿の準備が整えられた。


 そんで。


 夜、眠りについて。


 目覚めた、朝。

 そこは山だった。

 俺は、山の中にいた。

 眠る前にしっかと目に焼き付いた、火山地帯じゃねえ。

 見も知らぬ……山の中にな。



 そう、周囲の景色が一変してやがったんだ。



 あっるぇー、なんかこんな経験、身に覚えがー……ってまさに昨日同じことが身に起きたわー!!

 どこだこの山岳地帯!?

 寝る前にゃ地熱か空気があちぃのか、息が詰まるくれぇに暑苦しかったっつうのに起きたら気温差すっげぇんだけど。

 朝と夜の違いっつう以前に寒暖差凄まじいんだけど。

 いきなり寝てる間に環境一変し過ぎだろ!?

 山の空気だっつうのはわかるが昨日と違って空気冷えっ冷えじゃねーか。

「おい、俺が寝てる間にどこに運びやがった!?」

「おかしなことを聞かれますね、閣下。エルレイク地方に向かう、と昨夜お伝えした筈ですが」

「えっもう着いた!?」

 ちょっと待て。

 え、俺ってもしや何日も寝てた!?

「なあ、一つ聞いて良いか……今日、何月何日だ」

「1,537年の星耀月十三日ですよ」

「はあ!? 嘘だろ……!」

 北方の拠点を出発してからまだ三日、だと……!?

「お前……まさか実は羽根でも生えてんじゃねえだろうな」


「生やしてほしいんですか?」


「止めろ。実は生やせます、みたいな顔でこっちを見るな」

「誰もそのような顔はしていませんが。……そもそも翼があったところで、僕一人でこのように大人数を飛んで運べる訳がありません。翼を生やすなど非効率的です」

「効率的だったら生やせるのか!?」

「閣下の考え過ぎです。僕に翼はありません。それで良いですね?」

「羽根がないってなると……なんだ、瞬間移動でもしたのか。おい」

「………………」

「その意味深な微笑みなんだよ!? なんで無言で笑うんだよ!」

「北方から王国の南部まで、どう移動したのかは……帰りにでもお教えしますよ。文字通り、身を以て……ですけれど」

「誰か、まともな移送手段は確保してねえのかっ」

 絶対、絶対にこいつの移動手段はまともじゃねえ。

 俺は自信を持って断言してやるよ!

 王国の北方は、文字通り北の果てだ。

 ……が、エルレイク地方は王国の南東に位置する。

 王国の端って訳じゃねえが、それでも随分と南の方だ。

 つまり、俺らがいた場所とは王国の端と端に近い。

 当然ながら敵地ど真ん中の王国中央部を何の準備もなく突っ切るなんざ不可能だろう。俺らはいわば、王国に取っちゃお尋ね者だしな。絶対に賞金が掛けられてるっつうのに、本拠地である北方以外を平然と歩いて向かえる筈がねえ。

 となると、王国の中央部を避けて迂回路を選ぶ必要がある、ん、だが…………何の妨害もなかったとしても、北方からエルレイクまでってなると、三日じゃとても辿り着けねえはずだよな。

 しかもここは見るからに峻厳な山……エルレイク地方でこのレベルの山ってなると、アラソルト山脈なんじゃねえの?

 ここって確か……準備万端装備を整えて、数日がかりで登るような山じゃ……しかも俺の記憶が確かなら、なんかやべぇくらいに強い化け物龍が出るっつう噂がなかったか、おい。

「お前……まさか、俺にマジで龍を倒せとか無茶言わねえよな!?」

「御安心を、閣下。噂の龍はもう出ません(・・・・・・)から」

「え、お前ナニやったの?」

 止めろ、笑うな。

 無言の笑みとか意味深過ぎるだろ。

 しかも「もういない」とか「ただの噂です」じゃなくって「もう出ない」ってなんだ。

 言い回し、ちょっとおかしくね?

 なんかさも、噂の龍が実在するような……しかもまだ御存命のような言い回し。いや、御存命の上、どこかに押し込まれてでもいるような……


「――ところで、閣下。『聖剣』、要りませんか?」

「は?」


 え。

 なに唐突に言い出したの、こいつ。





「聖なる剣を所有した、革命の旗頭……ふふ、本当に物語の様ですよね。箔が付きますよ」

「その今すぐに都合付けてきましょうか、みたいな気軽い物言いはなんなの……え? 聖剣ってんな簡単に手に入っちまうような代物だったか?」


 → 元将軍は混乱している!(※いつものこと)


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