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――聖受歴1,537年月耀月3日 暴風雪


 1日に拾った男が目を覚ました。

 

 なんというか掴みどころのない……珍妙な男だった。

 名前を聞いたらさ、黒歌鳥だとよ。

 それ何百年か前に滅びたっつう不吉な魔物の名前な。

 吟遊詩人は俗世の名前を捨てて雅号で通すっつう話は聞いたことがあったが、そりゃいくらなんでもあんまりだろ。

 ……確か吟遊詩人の雅号って、師匠が独立の際に本人の資質だの人柄だのを見て決めるって話だったよな。

 お師匠さんに魔物の名前を付けられるような何をやったんだ、何を。

 数日間の昏睡から目を覚ましたばっかで、まだ寝たきりだってのに口調は丁寧、物腰は穏やか。

 数日昏睡するくらい弱ってる奴が、起きぬけからこんな隙ない様子を見せるもんか? 根底から身に染みるほどの慎重さやら冷静さやらってのは一般人が持つもんじゃないような気がすんだが。

 心の底から優しそうな柔和な笑みを絶やさない顔が曲者に見えるのは気のせいか、おい?

 まだ衰弱が酷くて寝台から起きあがることも出来ねえっつうのに、俺の人生経験が「こいつは油断できない」と告げている……。

 それを近頃珍しい好青年だと評するうちの娘たち。

 最近しっかりしてきた息子までそう言うんだが……

 果たして判断が正しいのは俺か? 子供らか?

 うちの猟犬でいちばん賢いグラは、拾った日から男の傍を離れようとしない。

 男が目を覚ました時からずっと機嫌が良さそうに尻尾を振っている。

 グラが懐いてんのは目に明らかなんだが……俺の目が曇ってんのか?

 言葉の通じない動物の中で最も信頼のおけるグラ。

 それこそ家族と同じくらい信頼できる。

 そのグラが信じた奴だ。もう少し様子を見てみるか。





OH……

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