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22/102

――聖受歴1,537年月耀月1日 晴れ


 北方の地において、この季節は猛威をふるう吹雪が続く。

 そんな最中の、ぽっかりと空白みてぇに晴れ渡った日。

 冬に晴れる日自体が稀だってのに、雲ひとつねぇ。

 こんな日には何かが起こるんじゃねえか。

 そう、胸が騒いだ。


 そんな日に、そいつを拾った。


 そいつは何て言うか……変な奴だった。

 こんな日に拾ったなんざ、精霊の導きか悪魔の悪戯か……。

 吹雪の中を移動でもしてたのか、半ば以上雪に埋まってた。

 もしかしたら、荒れた天候をしのぐ為に自分で穴でも掘って埋まってたのかもしれねえ。

 けど意識を失っちゃ、どんな状況だろうとお終いだ。

 っつうか、こんな軽装で北方に来るとか、自然の厳しさ舐めてねぇか?

 猟犬のグラが嗅ぎつけて掘り出さなきゃ死んでたろうさ。

 俺が犬を連れて村周辺の見回りをしてなかったら、そいつは春まで雪の中だったかもしれねぇ。

 顔を見たら若い男で、身なりは吟遊詩人みてぇだったが……

 顔立ちが、綺麗すぎた。

 首都の貴族でもそうは見ねぇ顔立ちだ。

 あんまり俺も見たことがある訳じゃねえが……直感的に、王族に時々見る系統の顔立ちだと思った。

 お偉い、雲の上の腐れ野郎共はそうそう俺みてぇな泥臭い軍人の前にゃ顔を出したりしなかったがな。

 何かの式典の折に見た国王の顔に、どことなく似てる気がする。

 気のせいだと良いんだが……。

 正直いって、この時点で厄介事のニオイしかしねえ。

 だが、捨て置くわけにもいかなかった。

 あんま気は進まないが、事情は後にしてまずは人命救助だ。

 たとえそれが気に食わない貴族野郎だって、こんな状態で放り出すほど俺は鬼じゃねえしな。

 ……ただ偶然似てるってだけで、この男がただの平民って可能性もない訳じゃなし。

 

 グラは聡い犬だ。

 悪いもんは寄せつけねぇ。

 俺に拾え、拾えと吠えたてて急かしてきたのもグラだった。

 だから厄介事の気配がしつつも、家まで拾って帰った。

 もしもグラがここまで気にする様子を見せなけりゃ、宿代払って村の宿屋夫婦に任せてただろうよ。

 そこをわざわざ家に連れ帰ったん、だが……衰弱が酷い。

 何時間も経つのに、未だに目が覚めねぇ。

 このまま目を覚まさなけりゃ……

 時間の問題、かもしれないな。





将軍(元)逃げて! 超逃げてー!

厄介な相手であっても、訳あり男を突き放せない元将軍(笑)

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