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ウェズライン王国の起源

今までずっと不透明なままにしてきた、この国の成り立ち(説明回)。

前話と同時投稿しています。

 広い大陸の中にあって強い独自性を保つ王国、ウェズライン。

 その起源は大陸の他国家の人々とは大きく異なる。


 約1,700年前、海中に没した別の大陸を発祥の地とする民達。

 元々は恵まれた豊かな土壌により、高度な文明を有する者達だった。

 それもよりどころといえる故郷を失い、後退してしまうのだが。

 故郷を失った彼らは現在ウェズライン王国のある大陸へと身を寄せる。

 しかし根本的な考え方の違い、習慣の違い、有する知識の違い。

 何よりも人種の違いにより姿が異なっていたことで悲劇に見舞われる。


 沈んだ大陸より逃れてきた民達。

 その姿はまるで蜂蜜の上澄みの如き黄金の肌、黄金の瞳。

 そして白金色の髪の毛を最大の特徴としていた。

 逃れた先の大陸では見られない色合いであった。

 加えて寄る辺ない身。

 奴隷狩りの憂き目に遭い、人目を避けて逃げ惑う流浪の民と成り果てた。

 

 しかし神経をすり減らす逃亡生活もやがて限界が来る。

 行く先々で殺されたり、捕まったりと人数を減らして行く。

 疲れ果てた彼らはついに、人間が立ち入ってはいけない場所へ逃げ込んだ。


 そこは豊かに恵まれた土地ではあった。

 豊かな地ではあったが、人間の土地ではなかった。

 精霊の中でも特に恐れられる、狂気に支配されて暴れ狂う邪精霊。

 中でも古く、人にはどうにもできない邪精霊が縄張りとして巣食う土地。

 人間が見つかればただでは済まされない。

 その精霊が狂った最大の要因は、人間にあったのだから。

 それでも其処以外に、当時の彼らには逃げる先が無かった。

 当然、ただでは済まないと知っていてなお。


 人間のものにはならない土地。

 では、人間以外のものであればどうだろう?

 そう考え至ったのは長の娘であった。

 彼女は人間の姿をしていながら人間ではないモノとであった。

 彼女達が知識として知る『精霊』とも違うモノ。

 だがその正体は『精霊』なのだという。

 本来であれば実体を持たないはずの精霊。

 しかし原初の時代の、まだ世界が精神的な領域と物質的な領域に分かたれる前は、生命体にも明確な区別は無かった。精神がどうとか、物質がどうという差異はなかった。

 長の娘が出会ったのは、そんな古い時代の精霊の末裔。

 遥か古代の性質を違わず今に伝える、真実希少な精霊であった。

 その、最後のひとりで。

 もう種としては滅びつつあったけれど。


 長の娘は精霊と交渉し、契約を交わした。

 『彼』の力で恵まれた土地を支配する邪精霊の封印に成功する。

 土地を支配する狂った精霊は消えた。

 そうして新しい土地を支配するようになったのは、娘と精霊の一族。

 誰にもどうすることの出来なかった邪精霊を押さえ込んだモノの一族だ。

 手を出せばどのような報復を受けるか……それはほんの数年で知れ渡る。

 君臨するモノの力が圧倒的過ぎて、手出しの出来ない国。

 だからこそ、国に居場所をなくした者達が流入する国。


 そうしてやがて強い力を有するようになった国、ウェズライン。

 今では千年を超える年月の中で混血が進み、他国の者とも大差のない姿。

 だがそれでも他国の者よりは薄い色素だとか、高い身長に名残を残す。

 

 他国が恐れる王家の始祖、稀なる精霊。

 誰もが名前を忘れ、やがて『始王祖』と呼ばれるようになる。

 その特異性も受け継がれたのは4代目まで。

 今では始王祖の遺産という形で名残を残すのみ。

 秘匿された事実を知る者は、王国の上層部にしかいない。

 

 始王祖の血を復活させようと彼らは考える。

 薄まった血を濃くしていけば、やがて新たな『始王祖』を生み出せるはずと。

 そうして圧倒的とされた力によって、王国の更なる繁栄を……と。

 自らの力で発展させることなど、もう考えもしない。

 ただ力による強引な手段ばかりを算段するのみ。

 千年をかけて腐りきった血の末裔達は王国の澱みを濃くするばかり。

 ただただ悪い方へ、悪い方へと国を走らせていた。





 彼らは思いもしない。

 『始王祖』が肉体を失いはしても、まだ『滅び』てはいないことなど。

 始王祖と、4代目までの王。

 彼らを殺害したのが、同じ一族の者達だなどと。

 殺した始王祖、王達の『核』。

 ……『精霊玉』を国家守護の為と嘯き、王冠と玉座の飾りにしていることを。

 だが皮肉なことに、それは本当に『国家守護』の要となった。


 『精霊玉』を有する者は、持ち主たる精霊の力を操ることが出来る。

 そうして始王祖に付き従った精霊達は、始王祖の『(ほんたい)』に従った。

 まだ滅びてはいないが故に、殺されたことになど気付きもせず。

 王国が生まれたとき、始王祖と交わした約束のまま。

 今でも5つの精霊が王国を守っている。

 ……当時の(・・・)王国版図、その領土を。


 新しく得られた領土によって王国は広がった。

 今でも精霊が王国初期の国境線を守っていることを知る者はいない。




 ちなみに王国初期の国境線が引かれていた場所は5つの領地に分けられます。

 それぞれが重要な土地だと言う情報のみ伝わっているが、理由は伝わっていない。作中現在では伝統性の高い王家の直轄領という扱い。

 最初期の王国五方に配置される形で、それぞれの領土に力の強い精霊がいる。

 …………の、ですが、人間はそれを覚えていないという。


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