第二章《胎動する災厄》17日目〜19日目
予定より1日早くなりましたが、投稿させて頂きます。更新が安定せず不定期で申し訳ありません。
こんな不定期更新の小説ですが付き合って頂けると有難いです。
第二章〔6日目〕【通算17日目】
どのくらい時間が過ぎたのだろうか。深い闇から意識が浮かび上がり一郎は目覚めた。
寝起きでぼんやりとしており視界が定まらなないが、どうやら部屋の中のようだ。窓から日の光が差し込んでいる。
脳はまだ覚醒しきっておらず思考が追いつかない。
「ここは?....どこだ。」
「ん?やっと気がついた?昨日はごめんね。いきなり現れたから敵だと思ってスキル使っちゃたわ」
その声の主が仰向けに寝ている俺の顔を覗き込む。まず目に飛び込んできたのはその見事な銀髪だ。どこか見覚えがあるその銀髪は日差しを受けて輝いて見える。
「.........美しい。綺麗だ」
「なッ!!...えっ??」
つい口が滑り呟いてしまった。
そして目線が合う。脳が一気に覚醒する。一郎はこの銀髪の持ち主を思い出し目を見開いた。
今、顔を赤らめているこの女性がコボルドを皆殺しにした女性で間違いない。
すぐさま起き上がり距離をとる。
スラリとした長身その背中からは漆黒の翼が生えている。
俺が観察していると彼女はまだ顔を赤らめながら話しかけてきた。
「あぁ。大丈夫よ。ここはコボルドの陣営地内にある家であなたの配下には手を出していないわ。今は外で待機してもらっているだけよ。後、奪愛吸魂も解除してるから安心していいわ」
「...........敵じゃないのか?」
「私には敵意はないわ。メッセージに表示されてたと思うけどお互い同じ神話大系の括りらしいから争う理由もないしね」
「そういえばそんなメッセージが表示されてたような」
「まぁ敵なら、わざわざ起きるのを待たずに寝込みを襲うと思うけど?」
「それもそうだな。えーと」
「ん?あぁ。自己紹介がまだだったわね。私の名前はティアよ。種族は下位悪魔」
(おっ小悪魔の上位種か。なるほど、コボルドどもが束になっても敵わない訳だ。)
「よろしくティア。俺の名前は一郎。種族は死喰鬼だ」
「こちらこそよろしく一郎」
「俺は最近この世界に転生したばかりだから神話とかこの世界についていろいろ気になることがあるんだ。教えてくれないか?」
「私も3週間前にここの近くの洞窟で自然発生(POP)したばかりだからそこまで詳しくは知らないわ」
「そうだったのか。じゃあ今迄、一人で生きてきたのか?」
「ええ。そうよ。倒さねば殺される世界で一人はとても心細かった。でもスキル【奪愛吸魂】のお陰で今迄生き残れてこれたわ」
(【奪愛吸魂】?俺の奪餓暴欲のようなものか?)
「それじゃあ、コボルドのギャザリングを壊滅させたのは何故なんだ?」
「奴らが私の唯一の居場所である洞窟に攻めてきたからよ。何も持ってない私から唯一の居場所まで奴らは奪おうとした!!....絶対に!.......許せない!!」
(多分、コバルトを生成するために鉄鉱石を狙っていたんだろうな。哀れなコボルド達よ南無)
「そんなに一人が寂しいなら一緒に行かないか?それに俺たちは同じ神に選ばれた仲間みたいだしな」
「えっ?わたし?」
「ごめん、嫌だったか?」
「ううん。嫌じゃない。少し驚いただけ。誘ってもらえてとても嬉しいわ。........ありがとう」
「よし。それじゃあ、情報を求めて街を目指すか!」
「ちょっと待って。人間の街を目指すの?」
「あぁ、そうだが?」
「それは辞めた方がいいわよ。人間にとって私たちモンスターは一部を除き目の敵にされてるわ。特にアンデッドや悪魔は不浄な存在として他のモンスターよりも危険視されてるのよ。街に近づこうものなら間違いなく殺されるわね」
「もしかして人間に殺されそうになった経験があるのか?」
「えぇ、まぁね。何度か冒険者に襲われた事はあるわ。勿論、返り討ちにしたけど」
「だとすると参ったな。ティアは他に情報が集まりそうな場所を知ってるか?」
「.....ここから南に進んだところにある森林ダンジョンの最奥に魔女が司書を務める図書館があるらしいわ。よく冒険者が話しているのを聞いたことがあるの。ほんとかどうか分からないけどね」
「行ってみる価値はある。決まりだな。ティアがいてくれてほんと助かるよ」
「ふふっ、どういたしまして」
「俺は大丈夫だけどティアの方は洞窟に戻って支度を整える必要はあるよな?」
「私も問題ないわ。もともと必要なものは持ち運ぶようにしてるから戻らなくても大丈夫よ」
「そうか。わかった。ならすぐに出発しよう」
「ちなみにあなたの配下はどうするの?全員引き連れて行くには少し多くないかしら?」
「それもそうだな。死霊騎士のパーティーだけ連れて行くことにするよ。(後は俺の拠点に合流させるか)」
その後、ティアと今後の方針について一通り話し使えそうな物を物色してアイテムボックスに放り込みコボルドのギャザリングを出発した。
移動する時間を短縮するため全員、騎乗する。この全員分の騎馬はティアがスキル【魅了】で手懐けてくれたエクウスリジットである。おかげで日が暮れる頃には森林ダンジョンの入り口に着くことができた。
今日はダンジョンに侵入する事はせず外にコボルドのギャザリングから持って来たテントを張り野営をする事にした。一応、生体感知を発動させ眠りにつく。
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ティアとの信頼関係が出来つつあります。
《神話:淘汰する者#【****END】》
〔⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎〕のフラグが立ちました。
これに伴い
派生詩篇:150篇24番1号『◆◆◆◆の正妃』が解放されます。
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第二章〔7日目〕【通算18日目】
朝、美味しそうな臭いに反応し目が覚めた。テントから這い出ると外でティアが料理をしていた。
石を積み簡易的な竈を作り何やら肉を焼いている。(なんの肉かは、聞かないようにしよう。)
「おはよう。随分、美味しそうに焼けてるな」
「あら、おはよう。昨日から何も食べてないからお腹が減っちゃて。一郎も食べる?」
(あぁ。そうかアンデッドと違って悪魔は腹が減るんだったな。まぁ人間よりは減りにくいみたいだが完全に忘れてたな)
「頂いても良いのか?」
「えぇ。勿論よ。口に合うと良いんだけど」
「おっ、美味いな。転成して始めて美味いものを食った気がする」
(俺たちアンデッドにとって食事とは嗜好品に過ぎず必要な行為ではないが美味い物は美味いと感じる感性はある。)
「満足してもらえて良かったわ」
その流れでみんなで料理をいただき幸福感を味わった後、森林ダンジョンに挑むため移動を開始し入り口を探した。
しばらく探していると入り口らしき場所を何箇所か発見することができた。
どの入り口から入れば良いのか迷ったので、もっとも第六感が反応した入り口から侵入する。
侵入早々、大人の男の胴ぐらい太い体を持ち甲冑のような見た目の外皮を持つ大型芋虫モンスターである装甲蠕虫の群れ(およそ30体ほど)が襲って来た。今の俺たちにとっては、なかなかLvが高い敵だ。
死霊騎士が前に飛び出し剣で盾を叩き敵の気を引きヘイトを集める壁役を担う。その隙に各自戦闘準備を整え行動を開始する。まず鬼女ルカが装甲の防御力を弱める魔法【酸化腐流】を発動させた。
本来ならば一つ上位の【強酸腐蝕流】を使えれば一番良かったがまだ習得していないようなのでしょうがない。
次に動いたのは吸血鬼のレオンと死喰鬼のアリベル。レオンの剣舞はヘイトを集め易いのでアリベルがカバーしながら敵の群れ左側面を攻撃する。
右側面は俺とティアが担当している。
ティアの職業は付与術師と剣士の混合職:魔法剣士だ。
ティアがパーティー全員の武器に火属性を付与し虫系である敵への攻撃力を上げる。
【奪愛吸魂】はどうやら目線を合わせた者の生気を吸い取るスキルのようだ。ティアが敵の群の中を切り進みながらだんだん生き生きしていくのを感じながら一郎も負けじと切り進む。敵の残りの数が20体をきった頃、生体感知に新手の反応が現れる。正面で戦う死霊騎士と死喰人のカインの右側面を狙う形で反応が向かってくる。死霊騎士の後ろでルカと共に前線を援護していた蘇死体のシンも新手の存在に気づき操死を発動させる。発動後すぐに地中から20体ほど這い出してきた動骨体を新手への壁役として使う。すぐに新手が茂みから飛び出し交戦が始まった。カインとシンが新手の相手を担当する。新手の数は15体ほどだが装甲蠕虫の上位種である重装蠕動虫なので並みの攻撃は通用しない。中級者がよく苦戦する為、上級者になるための越えねばならない壁の一つとされるモンスターだ。
スケルトン如きでは時間稼ぎにもならないだろう。至急、アリベルとレオンに指示をだし正面の援護に向かわせ装甲蠕虫の方は俺とティア、死霊騎士で受け持つ。5分ぐらいで俺たちの方は片が付いたが正面の方は大分、敵に押し込まれており前線が崩れかかっている。前衛が抜かれ後衛に敵の接近を許せば立て直しが効かなくなり撤退しなければならないだろう。
急ぎ、戦線に加わり前線を押し上げる。
危ない局面もありながらも10分ほどで殲滅に成功した。
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スキル【匍匐】を獲得
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いつ迄も留まって居ると遭遇して囲まれる可能性があるので移動する。それからは何度か敵と交戦しながらも順調に進むことが出来ている。
分かれ道などは、第六感の赴くまま何も考えず選ぶ。
しばらく進んだ頃、大きな広場に出る。
きっとエリアボスの戦前にある休憩ポイントだろう。都合が良いのでテントを張り今日はここで休むことにし一応、夜間の襲撃に備え交代で不寝番をする。
深夜ティアと俺の番になり焚き火を囲み不寝番を務める。
「寒くないか?」
「そういえば少し冷えるわね。クシュんッ。
」
可愛いくしゃみだなとか思いながらアイテムボックスから毛布を取り出し手渡す。
「..........ありがとう。とてもあったかいわ」
それからどちらからともなく、お互いの事を語り合い時間はゆっくりと過ぎ。夜は更けていった。
第二章〔8日目〕【通算19日目】
日が登る頃、俺たちはエリアボスと戦闘をしていた。
休憩ポイントの先にあるボスエリアに進むと地中から巨大なミミズが現れた。
蚯地脈竜である。
トンネル掘削機のような口と鱗に覆われた体を持ち地中を移動するワーム系の上位種の一つ。
石礫の息吹の範囲攻撃を得意とする。このダンジョンは中級者以上対象である事を確信する。
蚯地脈竜は強いがまだ俺たちで対処できる強さだ。
そして未だ戦闘は続いている。
「息吹のモーションに入った各自散開!!!ブレス終了20秒後に奴は地中に潜る。ルカは閃光で撹乱。レオンは前に出過ぎだ!アリベル、カバー!!」
その直後、礫の嵐がフィールドを薙ぎ払う。
全員、距離をとり回避が間に合った。
きっかり20秒後、眩い光がフィールドを照らし蚯地脈竜は怯み苦し紛れに下位の仲間を呼び出す咆哮をあげている。
「シンはスケルトンを呼び出し今、フィールド右端に出現した吸血蚯蚓の対処にあてろ。決して俺たちに近づけさせるなよ。ここで畳み掛けるぞ!!」
「一郎!風と火をエンチェントしたわ。これで少しはダメージが浸透すると思うわよ」
「サンキュ!ティア」
その後5分ほどかけ蚯地脈竜のHPを削り、昼頃ようやく倒すことができた。
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称号【亜竜討伐】を獲得しました。
スキル【石礫の息吹】を獲得しました。
スキル【下位蚯蚓召喚】を獲得しました。
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4時間にもおよぶ戦闘で皆疲れていたので暫く休息を取る。
後、何体エリアボスがいるのか分からないがこのぐらいのLVのダンジョンのセオリーなら少なくても3体、多くて5体ぐらいだろう。
経験値的にも実入りが大きいのでありがたい。一時間ぐらい休んだ後、先に進むため移動を開始する。
次のエリアは虫系の敵ではなく蛇や狼などの動物系モンスターが敵だ。
風を操る狼【フローウルフ】
状態異常の邪眼を持つ【邪疫蛇】
人のように立ち武器を扱う虎の獣人【虎人】
以上が今回のエリアの敵だ。
当然前のエリアよりもモンスターは強くなっているので思うように進めなくなり連戦が続く。日が暮れ森が闇に包まれた頃やっと休憩ポイントに到着した。
さっさとテントを張り、就寝する。
皆疲れてヘトヘトなので今日は俺が生体感知を一晩中発動させておくことにし不寝番はしない。
読んでくださりありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでもお待ちしております。大歓迎です。
例の如く1日前後するかもしれませんが次回更新は11月6日を予定しております。
後、活動報告の方も逐次、更新しておりますのでよろしかったらご覧になって下さい。