第二章《胎動する災厄》16日目
第二章〔5日目〕【通算16日目】
朝日が昇る頃、俺は起き出した。
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以下の従者が種族LV150になりました。
⚫︎アリベル
⚫︎ルカ
⚫︎カイン
⚫︎シン
⚫︎レオン
全員【進化】しますか?
《YES//NO》
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死霊騎士のPTはどうやら俺が寝ている間も狩を続けていた様だ。
とりあえず側に待機していた狼人鬼に死霊騎士のPTを狸人の拠点の広場に集めるよう指示を出す。そう時間をかけず広場に死霊騎士のPTが集まって来た。それでは進化の検証実験を始めようか。
まずは腰まで届く漆黒の髪を持ち東洋人のような顔立ちの女性。アリベルを進化させる。
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今現在条件を満たしている種族はアンデット種【死喰鬼】のみです。
条件を満たしており【進化】選択が可能であった上位人間種の【律掟義姫】//【賢き防人】//【大地と生きる者】は【状態異常:亡者】により種族がアンデット状態にある為、選択出来ません。
【進化】しますか?
《YES//NO》
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《YES》を選択する。
次はルカ。長身で端整な顔立ちだが何処か冷めたい印象を受ける女性だ。
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今現在条件を満たしている種族はアンデット種【鬼女】のみです。
条件を満たしており【進化】選択が可能であった上位人間種の【草原の貴婦人】//【慈悲深き麗人】は【状態異常:亡者】により種族がアンデット状態にある為、選択出来ません。【進化】しますか?
《YES//NO》
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《YES》を選択する。
これであと3人だ。
次はこの5人の中で一番良い装備を身につけた筋骨隆々の大男カインだ。
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今現在条件を満たしている種族はアンデット種【屍喰人】のみです。
条件を満たしており【進化】選択が可能であった上位人間種の【辺境の狩人】//【豊穣の守人】//【善人種】は【状態異常:亡者】により種族がアンデット状態にある為、選択出来ません。【進化】しますか?
《YES//NO》
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《YES》を選択する。
お次はチーム唯一の弓使いであるシン。
カインとは真逆に体格は細身で機動性を活かすために軽装備だ。
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今現在条件を満たしている種族はアンデット種【死喰鬼】か【蘇死体】です。
条件を満たしており【進化】選択が可能であった上位人間種の【倫理と契約の履行者】は【状態異常:亡者】により種族がアンデット状態にある為、選択出来ません。
【進化】しますか?
《YES//NO》
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《YES》を選択し種族は【蘇死体】にする。
そして最後はレオンだ。一挙手一投足から知性と気品を感じる。何でこいつはこんなに優雅な身のこなしをしてやがるんだよ。疑問だ。この典型的金髪イケメンは何故、冒険者なんかになったんだろうか。
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今現在条件を満たしている種族はアンデット種【吸血鬼】のみです。
条件を満たしており【進化】選択が可能であった上位人間種の【旅をする貴族種】は【状態異常:亡者】により種族がアンデット状態にある為、選択出来ません。【進化】しますか?
《YES//NO》
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《YES》を選択する。
良しこれで全員、進化出来た訳だ。やはり所持している称号や職業、ステータスの構成と傾向により進化出来る種族が変わるらしい。
それでは一人一人ステータスを確認していこうか。
まず【死喰鬼】のアリベル
職業は槍術士だ。職業LV160だが職位上昇条件を満たしていないのでまだランクアップは出来ない。
とりあえず【眷属隷化】で配下を増やしてもらうか。
次は【鬼女】のルカ。
俺の知らない種族なので興味深い。
職業は妖術士と幻術士の二つだ。
妖術士は敵に毒や麻痺など状態異常を付与する魔法を得意とする。
上位職に呪術士。最上位職には邪術士がある。幻術士は奇術士の上位職でゲームの頃は幻覚や幻聴、幻視でプレイヤーの方向感覚や平衡感覚を狂わせたりするだけの地味で微妙な妨害系職業で人気がなかった。ルカは丁度よく妖術士と幻術士を職業にしているので複合派生職である秘術士を目指してもらおう。秘術士とは真理と叡智の集まる迦波羅と呼ばれる魔術的領域に干渉し魔法を使用する職業のことだ。
次は【屍喰人】になったカイン。
【屍喰人】は【死喰鬼】種の希少種でステータスは死喰鬼を圧倒する。職業は攻撃型戦士でステータスはSTR極振り状態だ。力だけならば俺に匹敵すると判断していいだろう。
【蘇死体】になったシン。
動死体と動骨体の間に位置する種族。設定では人の死体に悪霊が取り付き蘇ったモンスターとされている。動骨体を呼び出し操るスキル【操死】を使う。
職業は弓兵:短弓と野伏。
野伏は盗賊と狩人の複合職で高い索敵能力と攻撃性能を併せ持つ急襲特化型職業。あくまで攻撃型の職業なので罠の解除は出来ず隠密性は狩人に若干劣る。
最後に【吸血鬼】になったレオン。昼の行動時最も多くバットステータスが発生するモンスターだ。
例えば日差しを浴びると毒状態の様にHPが少しづつ減っていったり自然回復力がなくなるなど数え切れないほどある。アイテムによりある程度は無効果することが出来るのだが今この場にはないので彼は今、実に辛そうにしている。職業は剣舞使いだ。魔法職との複合職で魔法で剣を無数に自分の周りに浮かべ操り攻撃する。敵の敵対心を集め易いのでヘイト管理が大変な職業でもある。
まぁステータスはだいたいこんな所か。
見た目はそれぞれ進化前の容姿を引継いでいるがその瞳は赤く染まり肌は白く生気が抜け落ちている。
進化の方はひと段落ついたので全体に今後の流れについて話すため全員を広場に集める。
しばらくすると八化狸人の群れが全員集まる。
八化狸人の群れ全60体と死霊騎士のPT6体が俺の前で一斉に跪き頭を垂れる。
スコロペンドラ達は村の外で待機させているためここには居ない。
俺は口を開き頭を垂れる配下達に語りかける。
「知っての通り今夜、小狼鬼の群れに夜襲を仕掛ける。そこで、狸人の群れをチーム分けし6人PTを10チームつくる。人選は八化狸人と昨日相談し決めてある。今からそれを発表する。」
第一班〜四班は近接戦闘に秀でる個体を集める。ここに死霊騎士のパーティーを入れて今回の主攻を任せ死霊騎士に統括させる。
五班〜六班とスコロペンドラ達は遊撃を担当しつつ主攻である第一班〜四班と共に狼狂人の首を狙う。八化狸人に指揮させる。
第七班〜八班は遠距離武器や軽装備の者を集め軽いフットワークを活かし陽動と奇襲を担当する。この両集団は狼人鬼にまとめさせる。
第九班〜十班は後詰めとして俺と共に後方に待機し状況をみて動く。
「死霊騎士よ。お前が望んだ戦いだ。見事その手で狼狂人を討ち取り雪辱を晴らせ。」
「御意。必ずや討ち取ってみせましょう。」
今回、小狼鬼戦の最終目標を狼狂人の首に定める。
殲滅するにはこちらの数が足りなく犠牲者が増える。あくまで実験の成果を確認するだけの戦いだ。ここで兵を使い潰す気はない。
その後、チーム同士の連携を確認するために
模擬戦を行いお互いの実力を確認していく。
急造のチーム編成だが主体であるピエンズ達が同じコミュニティー出身なので問題なく連携がとれている。本来ならば余り戦闘に向かない種族だが主である八化狸人が攻撃型の上位種だからなのか攻撃強化の補正が発生しており十分戦力になる。
実際ならばもう少し慣らしてから実戦投入するべきだが今回は夜襲というアドバンテージがあるので問題ないと判断する。
後は敵の規模だが狼人鬼の情報によると非戦闘員を含めて600体ほどらしい。陣営地ぐらいの規模はあると仮定する。70対600。...........勝算はある。
この世界が現実世界ならば勝算はなかったかもしれないがこのファンタジー世界ならば物量は関係ない。確かに高レベルプレイヤーと低レベルプレイヤーではどうにもならないが同程度のレベルならば戦術と技術次第で物量差を覆すことが可能だ。実際に経験済みなので確信できる。
さぁ準備は整った。小狼鬼狩りの時間だ。
日が傾き、草原が夕闇に包まれる頃、草に紛れ身を隠しながら移動する集団があった。
その集団の多くはピエンズで構成されちらほらとアンデッドの姿が見える異様な集まりだ。生命を憎む習性があるアンデッドが生物と行動を共にしている事は異常なことだ。
そんな彼らが目指す場所は小狼鬼の陣営地だ。しばらくすると目的地である陣営地が見えてくる。すると先頭を行き集団を導いていた狼人鬼が慌てて立ち止まり合図を後方に送る。馬を連れた小柄なアンデッドが急ぎ指示を出し集団を展開させる。
一郎は動揺していた。予想外の出来事が起きている。それに最初に気づいたのは狼人鬼だった。彼から異常事態の合図を受け集団を展開させ陣営地に近づく。次第に聞こえてくる悲鳴と怒号。微かに血の臭いも風に乗って運ばれてくる。
闇に覆われた世界で多くの命が散っているのだろう。
スキル【判断感覚】と【第六感】が運命の出会いを示唆する。近づくにつれ悲鳴と怒号は逆に小さくなっていき陣営地に到着する頃には完全に沈黙した。決着がついた様だ。
陣営地の内部は何処かで見たように赤く塗りつぶされており至るところに遺体が転がっている。そして広場の中央には血で赤く染まった女性が佇んでいた。その姿は松明の灯りに照らされどこか幻想的でもある。
女性がこちらに気づき顔を向ける。目が合う。唐突に脱力感に襲われ力が抜け意識が遠くなる。
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冥堕邪神管轄神話大系:堕天滅落。その一つ《神話:混沌の求道者》の主要人物である哀爛欲魔と遭遇しました。
欲喰奪魔である一郎も同じ管轄者の神話大系である為、神話間戦争は発動しません。
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崩れ落ち気を失う瞬間に見た彼女の顔は儚くどこか悲しそうだった。
読んで頂きありがとうございます。
やっとヒロイン登場?かな?
次回投稿は10月31日を予定してます。
よろしくお願いします。