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二章《胎動する災厄》14日目

第二章(3日目)【通算14日目】

完全に日が(のぼ)る頃、ひと時の休息を終えて行動を開始する。昨日はモンスターを狩りなが移動していた為、あまり距離を進む事が出来なかったので今日は目星(めぼし)いモンスターだけを狩ることに決め先を急ぐ。

戦闘を避けて街道を進んでいると次第に草の丈が高くなってくる。草原の草の丈が腰の上ほどになったころ【生体感知】が反応する。周りに18体程モンスターが潜んでいるようだ。草むらに隠れながら素早く行動し包囲網を狭め俺を取り囲む。取り囲み安心した為か、それとも数の利があるからなのか余裕をみせ草むらから姿を(あらわ)す。そのモンスターは二本脚で立たせた猿の体に犬の頭をつけたような容姿をしており体毛は焦茶色(こげちゃいろ)で身長は150センチ位だ。ファンタジー小説やゲームでは小鬼(ゴブリン)豚鬼(オーク)と並び有名な亜人種の一種【小狼鬼(コボルド)】である。【小狼鬼(コボルド)】は蒼晶魔石(コバルト)で出来た(あお)色の装備を全員装備している。【小狼鬼(コボルド)】の設定では蒼晶魔石(コバルト)を生成する(すべ)を持っており鉱石を蒼晶魔石(コバルト)に変化させる事が出来ると言われている。蒼晶魔石(コバルト)で出来た武器は鋭い切れ味を誇り、防具は硬く耐久性が高い。それに魔力も宿る。

数も含め厄介な敵ではあるが負ける気はしない。第一に余裕をみせ草むらからわざわざ出て来たのが間違いだ。俺は【咆哮】【嘶き】【威圧】を同時使用し【小狼鬼(コボルド)】の動きを止め昨日取得した【職業:双剣士】のステータス補正を確認しながら殲滅していく。うん。今日、初戦闘には丁度良い。良い運動でした。特性【蒼晶魔石(コバルト)生成術】を獲得した。

今、手持ちに鉱石を持っていないので保留しておこうと考えたが試しに手持ちの材質が鉄のバスターソードに【蒼晶魔石(コバルト)生成術】を使用してみると体から何かが抜け落ちる感覚に襲われ虚脱感に目眩(めまい)がする。MP(マジックポイント)を確認すると減少しているのでこの感覚がMPである体内魔力量(オド)を消費した副作用の様なものだろうと解釈する。

【炎の息吹(ブレス)】を使用した時も似たような感覚を覚えたがあの時は、軽く立ち(くら)み程度だったのでただ疲れているだけだと思い気にしなかった。

問題のバスターソードは材質が蒼晶魔石(コバルト)に変わっており美しい(あお)色になる。材質が鉱石の物なら加工後でも変化させる事ができる事に正直、驚いた。

試しに【分析鑑定(インスペクト)】を使用して詳細を確認する。

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武器種類:両手剣

武器名:バスターソード

等級:上級

攻撃属性:主に斬撃//刺突

物理攻撃力:560

魔法攻撃力:250

耐久値:500

魔力付与(エンチェント):可

派生強化:可

素材:蒼晶魔石(コバルト)

《素材変化による強化は1度のみです》

《これ以上素材変化は出来ません》

売値:172990G(ギール)

製作者:一郎

分析鑑定(インスペクト)】のスキルレベルが足りません。ここまでしか表示出来ません。

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これは良い特性を手に入れた。実に有能だ。

調子に乗り、全ての装備を蒼晶魔石(コバルト)に変えるとMPがなくなり、ぶっ倒れた。

呼吸が荒く乱れ息をするのも覚束(おぼつか)ない。まるで何時間も走り続けたようだ。

多分、体が自然と体内に無くなった体内魔力量(オド)をフィールドに漂う魔素(マナ)で補おうとしているのだろう。このことから推察するとこの世界では、MPとは精神力と体内魔力量(オド)を合わせた数値のことだろう。

それから、以前【魔術素養】を獲得したとき魔法を使おうとしたが発動しなかったのは今回の【蒼晶魔石(コバルト)生成術】の様に使用したい魔法のスキルを獲得していなかった為だろう。魔法を使用する時はスキルが必要なようだ。とりあえず、自然の流れに体を預けMPが回復するのを待つ。

5分ぐらいで呼吸も楽になり、よろめきながら立ち上がると草むらに分け入り隠れる。

【生体感知】に反応があり集団が街道を使い東から近づいて来ているのが判る。

小狼鬼(コボルド)】の群れだ。その数およそ500体。先ほど倒した【小狼鬼(コボルド)】はおそらくこの本隊の斥候だったのだろう

。それぞれ大きな革袋を担ぎ、強烈な血の匂いを漂わせている為、すぐに村から略奪して来た事が判る。隊の中には【小狼鬼(コボルド)】の上位種【狼人鬼(ワーウルフ)】が7体ほど見受けられる。そしてこの群れを束ねる主は隊の中心にいる【狼人鬼(ワーウルフ)】の上位種である【狼狂人(ウェアウルフ)】で間違いないが毛並みが真っ赤に染まっているので亜種の可能性があり武装が他の個体より明らかに優れている。

そういえば、ギルド【失楽園】のメンバー[肉球ぺろぺろ]さんの種族が【狼狂人(ウェアウルフ)】の最上位起源種であり狼人系の頂点、大神(おおかみ)の使者である狼【神喰の悪評高き狼(フェンリル)】だった事を思い出す。職業の暗殺者(アサシン)盗賊(シーフ)も合わさり補正だけでギルド1の速さを誇っており【瞬狼】と呼ばれていたっけと懐かしくなった。

彼女は今、何をしているだろうか。ちゃんとデスゲームからログアウト出来ただろうか。

オフ会の時、何度か会ったが歯科助手の仕事をしていると言っていたなとか考えていたら【小狼鬼(コボルド)】の集団が斥候の死体を発見したらしく慌ただしくなる。

狼狂人(ウェアウルフ)】が指示を出し

小狼鬼(コボルド)】30体と【狼人鬼(ワーウルフ)】1体を敵の捜索にあて本隊は移動し始める。【狼狂人(ウェアウルフ)】と闘ってみたいが今はMPが完全に回復していないので諦める。本隊が十分に離れた頃に(いま)だ敵を捜索している【狼人鬼(ワーウルフ)】率いる集団に攻撃を仕掛ける。【狼狂人(ウェアウルフ)】と(まで)はいかないが【狼人鬼(ワーウルフ)】もなかなか素早く梃子摺(てこず)る相手だった。

久しぶりに【眷属隷化(オブリゲーション)】を使い【狼人鬼(ワーウルフ)】を配下にする。今の俺は【眷属隷化(オブリゲーション)】で配下に出来るのは15体までだ。大鬼(オーガ)猪大鬼(ブルオーガ)を入れると13体だ。

狼人鬼(ワーウルフ)にこの草原フィールドの詳しい情報を聞き街道を進む。

昼過ぎ頃に、とある集落に着いた。

微かな死の臭いに【屑漁り】が反応する。

集落に近づくにつれ嗅ぎ慣れた(にお)いが風に乗り届く。狼人鬼(ワーウルフ)を村の外に待機させ村に入る。その村は血により赤く染まり、死体が其処(そこ)らじゅうに転がっていた。【小狼鬼(コボルド)】の群れに襲われたのだと判る。まだ息がある冒険者らしき者が数人いたが治療するには手遅れだ。装備を【分析鑑定(インスペクト)】で見ると上質な物を使っており手入れも行き届いているのが判り経験を積んだ熟練者の集団である事が(うかが)える。しかし500体のモンスター相手では数的に分が悪かったのだろう。転生して始めて人の死を見たが感覚が麻痺しているのか何も感じない。一郎にとって死は身近なものになり過ぎていた。ただ淡々と使えそうな装備を観察しながら探し始める。するとまだ息のあった熟練者の一人が朦朧(もうろう)とする意識で俺に話しかけてきた。

「屍肉を漁る下賤なアンデットよ.....話しが通じるなら...本意ではないが.......一つ頼みを聞いて欲しい.....どうかお願い..だ。」

途切れ途切れで聞きづらいが必死に語りかけてくるので興味半分で聞いてみる事にする。

「なんだ?何を望む?言っておくが俺はただのアンデットだからな。俺に出来ることは、お前がこれ以上(くる)しまない様にトドメを刺してやる事ぐらいで望みをなんでもは叶えられんぞ。分かったか?」

「....ククッ....あッはははh.........なかなか饒舌(じょうぜつ)なアンデットだ..な。お前みたいなモンスターとは初めてあったよ....。なに、頼みとは......クッ..簡単なことだ。俺をアンデットにしてくれ、この集落を.......メチャメチャにし.....た【小狼鬼(コボルド)】共に復讐したい」

「丁度良い。俺も奴らと戦いたかったところだ。駒として働いて貰うぞ。」

「構わん。村の仲間の仇を...討ちさえできれば..............。」

眷属隷化(オブリゲーション)】を発動させると熟練者は何事も無かったかのように動きだし俺に忠誠を誓い跪く。


配下にしたことで表示出来るようになったステータス画面を見ながら能力を確認していく。

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名前:ダン

性別:男

職業:【闘士(グラディエーター)

種族:アンデット状態

職業LV200

種族LV152

HP:2300

MP:1200

STR:1900

VIT:1500

DEX:1700

AGI:1500

INT:1000

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名前はダンか。

ん?種族LVが152だな。

きっと【小狼鬼(コボルド)】との戦闘でLVが上がったが【進化(ランクアップ)】する前に倒されたのだろう。

進化(ランクアップ)】画面に移る。

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上位種に【進化(ランクアップ)】出来ます。今現在条件を満たしている種族はアンデット種【死霊騎士】のみです。

条件を満たしており【進化(ランクアップ)】選択が可能であった上位人間(ハイヒューマン)種の【強健な人種(ジグムント)】//【誉高き超人(シグルズ)】//【賢き防人(フロージ)】は【状態異常(バットステータス):亡者(リビングデット)】により種族がアンデット状態にある為、選択出来ません。

進化(ランクアップ)】しますか?

《YES//NO》

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《YES》を選択すると新たな画面が表示された。

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種族がアンデット状態からアンデット種になった為、【眷属隷化(オブリゲーション)】により付与されていた【状態異常(バットステータス):亡者(リビングデット)】は効力を失い解除されました。隷属状態は引き続き効果を発揮します。

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ゲームの頃は、進化しても状態異常のままだったがこの世界ではアンデット種に進化するらしい。つまり大鬼(オーガ)猪大鬼(ブルオーガ)も進化すればアンデット種になるだろう。

その後、一通りダンのスキルや称号などを確認しているとダンの足元に魔方陣が(あらわ)れ光を放ち包み込む。これがゲームの頃から見慣れた【進化(ランクアップ)】の演出だ。光が収まるとそこには2メートルはあるだろう長身の偉丈夫(いじょうふ)が立っていた。肌は透き通るように白く生気を感じずどこか存在が希薄だ。外見(がいけん)は瞳が赤く染まっている以外、人間種と区別がつかない。生前装備していた鎧は怨念により黒く染まりフルプレートを完全に装備したその姿は漆黒の騎士だ。そして両手で構える大剣の表面には苦悶に歪む人の顔が浮かび上がり蠢いている。日が傾き夕焼けに染まる日暮れどきにその光景を目にしゾッとする。

死霊騎士は大鬼(オーガ)と同じくらいの強さのランクだがアンデットだからなのか妙に恐ろしく感じる。

気を取り直し日が落ち星が輝き始めるまで集落の広場で手合わせを続けた。時間をかけて死霊騎士の実力を把握する。

感想としては、かなり強い。

俺でも苦戦する程だ。戦力としては申し分ないだろう。これなら2~3日で準備を整えたら小狼鬼(コボルド)の群れに戦いを挑んでも勝算がある。なんだかんだ言ってまだ街には行けそうにないなと苦笑いを浮かべてしまった。死霊騎士に今後について語ったあと適当な家に入り横になる。

今日は長く充実した一日だった。

眠りに落ち意識を手放す。

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第二章〔胎動する災厄〕のクリア条件である

亡者の進化(アンデット)】が達成されました。残り4つ全てのクリア条件を達成した時点で第三章が開始出来ます。

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読んで頂きありがとうございます。

次回の投稿は10月22日を予定していますが........。 1日前後するかもしれません。申し訳ございません。それでは今後ともよろしくお願いします。


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