一章〔欲喰奪魔の目覚め〕11日目
拙い文章ですが読んで頂けてとても嬉しいです。まだまだ続く予定なのでこれからもよろしくお願いします。
一章〔11日目〕
早朝、準備を整え早々に教会を出発した。未踏破エリアの西の森に向かう。教会を中心にして南の森がゴブリンの縄張り。北の森がオークの縄張り。東の森は固有モンスターが多く生息している。西の森は樹木が鬱蒼と茂り、他の森よりも薄暗く湿度が高いのかジメジメしており蒸れる。森に入ると動物が騒ついていたが森の奥に進むにつれ動物の気配がなくなる。不思議に思い【生体感知】を使用して動物を探してみた。感知範囲に動物は存在してるが数が少ない。森から動物が逃げ出しているようだ。さらに進むと、怒号と武器のぶつかる音が聞こえてきた。森の開けた場所で小鬼集団と豚鬼集団が争っているようだ。問題はその規模だ。両集団700体は居ると思われる。まるでこの森にいる全ての小鬼と豚鬼が集結しているようだ。俺は草木の陰に隠れて様子を伺う。
小鬼の陣営を統率しているのは中鬼の上位種、大鬼。豚鬼の陣営を統率しているのは猪鬼の上位種、猪大鬼で間違いない。
どちらもこの森にある縄張りの主だと思われる。種族的に劣等な筈の小鬼側が奮闘しており、戦闘は膠着状態である。
暫く様子を伺っていると、後方で指示を出していた猪大鬼が膠着状態に痺れを切らし前線に向かう。大鬼も猪大鬼を抑えるために前線に向かい対峙する。大鬼は両手に一本ずつ鋼の槍を持つ。猪大鬼はバトルアックスを右手に持ち、左手には巨大な盾タワーシールドを持ってる。
2体が接近する。
猪大鬼が口を開く。
「今日この場で因縁の争いに終止符を打つ」
大鬼が牙を剥き出しにして唸る。
「その首を切り落とし我が同胞の墓標に捧げてやる」
両者が咆哮を上げ戦闘の口火を切る。
先に動いたのは猪大鬼である。
半身を隠す程の盾で大鬼の攻撃を防ぎながら近づく。一進一退の攻防が始まる。
草木の陰で様子を伺う一郎。今、参戦すると最悪の場合2対1になり苦戦する可能性があるので後で弱った所を強襲するとしよう。卑怯だとしても弱肉強食のこの世界では勝たなければならない。敗者には死が待つのみ。
大鬼と猪大鬼は激しい攻防を続けている。まだまだ決着は着きそうにない。
スキルを確認しながら時間をつぶす。
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⚫︎称号【鎧袖一触】
多数を相手取る時にボーナスを得る。
⚫︎特性【食欲旺盛】
消化・吸収がはやくなる。
⚫︎スキル【強靭な生命力】
体力と状態異常の自然回復力を飛躍的に上昇させる。
⚫︎スキル【魔術素養】
魔法が使用可能になる。
⚫︎スキル【加重斬】
体重を乗せて振り下ろす。切る攻撃ではなく押し潰す攻撃。
⚫︎スキル【膂力上昇】
筋力、特に腕力が上昇する。
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【魔術素養】が今回の目玉だが・・・・。
ふむふむ。う~ん。なるほど~。
スキルを発動しても何も感じない。
試しにゲームだった頃のように魔法名を口に出してみる。初めての魔法使用なので魔法職が最初に使える魔法名を唱える事にした。「【火球】」何も起きない。ゲームだった頃は魔法名を唱えれば、MPを消費して魔法が使えたがこの世界では、それでは不十分なのだろうか?とりあえず、次はステータスを確認する。
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名前:一郎
性別:男
職業:【戦士】
種族:【モンスター種:死喰鬼】
職業LV147
種族LV23
HP:1800
MP:1000
STR:1300
VIT:950
DEX:1100
AGI:1200
INT:900
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こちらは実に順調だ。種族LVが50になるのが待ち遠しい。死喰鬼がLV50で取得するあのスキルさえあれば戦闘を有利に進めることが出来る。と考えて込んでいたら大きな金属音が鳴り響いた。どうやら大鬼が猪大鬼の斧の振り下ろしを槍の柄で受けたようだ。余りの衝撃により大鬼は片膝をつき、体勢を崩す。隙ができ、そこから一方的に攻められる。大鬼は防戦一方だが猪大鬼の猛攻を危なげなく捌いている。そろそろ正午だが、まだ勝負は着きそうにない。
それから2時間が過ぎお互いボロボロになりながら攻防を続けている。そして更に1時間が過ぎた頃、拮抗が崩れた。猪大鬼の盾に隠れていない右足に大鬼の左手の槍が突き刺さり、猪大鬼を地面に縫い付けたのだ。
ようやくチャンスができ大鬼が畳み掛けようと右手の槍を振りかざした瞬間、猪大鬼の胸部からバスターソードが飛び出し、血飛沫が大鬼にかかる。猪大鬼は背後から心臓を貫かれ力なく倒れた。その影から大鬼にとって見覚えのないアンデッドが現れた。
この森に迷い込み死んだ人間がアンデッドになることは良くあるが、このアンデッドの様にバスターソードを片手で扱えるような存在は知らない。だがそれさえも今はどうでも良い。俺は猪大鬼との死闘に横槍を入れたこのアンデッドを殺さなければならない。大鬼は宿命の好敵手との戦いを邪魔され怒り狂いアンデッドを睨む。
一方、一郎は大鬼の怒りなど気にせず獲得した経験値に笑みをこぼす。
種族LVが61まで一気に上がる。これにより一郎は使用可能になったスキル【眷属隷化】を発動させた。
心臓を貫かれ絶命した筈の猪大鬼が動き出し一郎の方に向かう。一郎の前まで来ると片膝をつき頭を垂れ臣下の礼をとった。大鬼は信じられない光景に驚愕し顔を歪める。
【眷属隷化】はゾンビに殺された者がゾンビになるように倒した敵に【状態異常:亡者】を与えアンデッド状態にして配下にすることが可能だ。LVなど条件がいろいろあるが最大100体まで配下に出来る。【百鬼夜行】と一郎が言われた理由でもあるが引き連れていけない場所も多々ある。
余談だが種族:動死体の場合はLV200で獲得できるスキルだ。本来、ゲームだった頃は倒す前に使用しなければならないが倒したモンスターがエフェクトになり消えないこの世界では、殺した後でも効果が発揮されるようだ。
ちなみに似たようなスキルに吸血鬼が使える【眷族化】があり、使用された者は吸血鬼化させ配下にする。その代わり眷族化できるのは一体迄である。
【眷属隷化】と【眷族化】を受けたPYやNPCは聖水などで解除できるがモンスターの場合は、HPを0にして倒すしかない。
臣下の礼をとり続ける猪大鬼に指示を出し驚愕の光景に硬直する大鬼に二人がかりで襲いかかる。
戦闘は5分と経たずに決着した。
今、大鬼は【眷属隷化】により俺の配下になり跪いている。
この森でトップクラスの力を持つ2体を配下に出来た。これにより一郎はこの森の覇権を実質上、手に入れた事になる。
両者に指示を出し両軍の戦闘をやめさせ縄張りに帰還させる。両従者も両軍を統率させるために帰還させる。
夕闇に染まり始めた森から一郎も住み慣れた教会に戻り眠りにつく。
面倒ごとが出来たのでまだ暫くは森を離れられないようだ。
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称号【探索者】獲得しました
スキル【ニ槍流の心得】を獲得しました
スキル【重武装速度低下軽減】を獲得しました
スキル【盾圧殴打】を獲得しました
スキル【重戦士の心得】を獲得しました
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第一章〔欲喰奪魔の目覚め〕クリア条件の《全エリア探索》・《従者獲得》・《森の覇者》がクリアされました。これにより第一章の全てのクリア条件が達成された為、達成報酬として神の加護が与えられます。これより第二章を開始しますがよろしいですか。《YES》//《NO》
現状での第二章クリア確率【78%】
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《YES》を選択する。
明日から第二章が始まるらしい。
忙しい日々が始まる予感がする。
それではおやすみ。