プロローグ
始めての投稿です。
よかったら読んでください。
【MONSTERs:ONLIN】
最終ダンション:ユグドラシル神殿最奥の間
石造りの神殿で四隅に篝火が燃えている。
篝火に照らされ二つのシルエットが浮かび上がる。
その一つの影が
田中一朗
【職業:狂戦士】
【種族:モンスター種[死喰鬼]】
VRMMO【MONSTERs:ONLIN】最高峰の攻撃力と素早さを保有している。
職業Lv300
種族Lv300
武器:神代級武器【勝利宣言】
武器は【両手剣】を装備。
装備は蒼と黒を基調に揃えている
ステータスは課金によりカンスト状態である。
もう一つの影が【死の支配者:ヘイル】
このデスゲームと化したVRMMO最後の敵にして最強の敵。本来ならパーティーを組み攻略するべき敵だがこの最終ダンション:ユグドラシル神殿には、プレイヤー1人づつしか入れず中に入ったプレイヤーが外に帰還するか、中でHPを全損し消滅するかしなければ門が開かないようになっている。
モンスターのLV上限設定は1000であり勿論【死の支配者:ヘイル】も最終ボスに相応しくLV1000である。
その容姿は漆黒のドレスを纏った美しい女性でありドレスと対象的な白銀の髪は艶やかで、腰の辺りまで届いている。その左右のこめかみから山羊を思わせる角が突き出しており瞳孔は縦に割れている。左手に短杖を持ち、右手には短剣を持っている。両手の武器と山羊の角さえなければ絶世の美女で通るはずだ。神々しさは感じるが嫌悪感は感じない。もし仮に彼女が敵でなければ何人も膝を突き頭を垂れるだろう。
一瞬の静寂を切り裂き、一朗が踏み込む。
戦闘が始まって一時間がすでに過ぎている、【死の支配者:ヘイル】の頭上に表示されたHPゲージも残り僅かしか残っていない。
【死の支配者:ヘイル】の短剣による刺突攻撃が一朗の体をかすりHPを削るがこの程度の擦り傷は種族的特性である【高速回復】がカバーしてくれる。
俺はとにかく、奴の体力を削る事を考えるだけでいい。
【死の支配者:ヘイル】の魔法が連続で飛んでくるが、移動系スキル【縮地】と回避系スキル【残響】を使い退避。
ハデスの硬直時間を利用し【縮地】で背後に周り両手剣スキル【猛断】の発動に伴い愛剣が蒼く輝き
一閃!
【死の支配者:ヘイル】のHPが削れる。
技使用後の硬直時間はアイテムによって半分以下まで抑えられており、すぐに次の行動に移れる。
【死の支配者:ヘイル】が牽制の魔法攻撃をしながら距離を取り一郎を近づけないよう弾幕を張る。
弾幕を掻い潜り接近すると【死の支配者:ヘイル】が魔法の詠唱を終えているところだった。魔法陣が一郎の足元に広がり魔法が発動した。【善極の撃光】青白い光の柱に一郎は包まれた。【善極の撃光】は異形種に対する高ダメージと種族特性の効果を弱める追加効果がある。
光の柱が消えてゆく中、片足をながらも攻撃を耐えた。かなりのHPと【高速回復】の効果を犠牲にしたがこの魔法攻撃を待っていた。【善極の撃光】発動後は、暫く魔法攻撃を行えない。
どの道、HPも少なく短期決戦に持ち込む必要がある為ここで畳み掛ける。
強く踏み込み渾身の力を込めた一撃を放ち【死の支配者:ヘイル】のHPを削り勝利を確信し気を緩めた。
完全に油断した一郎は、【死の支配者:ヘイル】の最後の足掻きである刺突攻撃を咄嗟に回避することが出来なかった。【死の支配者:ヘイル】の短剣が一郎を貫く。
最早、高速回復で抗えないダメージ量を受けており、自らの死を悟る。
----レイカごめん
【死の支配者:ヘイル】がエフェクトと供に消滅するのを見届けながら一郎の意識も闇に沈み込んでいった。
≪おめでとうございます。デスゲーム【MONSTERs:ONLIN】がクリアされました。プレイヤーの強制ログアウトが開始されます。≫
■■■■■■
一朗は※※※をクリアした為
≪【●●●●】として異世界【****】に転生できます。承諾しますか?≫
≪YES//NO≫
転生を許可した場合は、
【神話:淘汰する者】第37章から始める事ができ、神話:主要人物である田中一朗に称号と【討神討魔】、【進化促進】が贈られます。
反応がなかった場合は強制転生が始まり、
【神話:淘汰する者】第1章からのスタートになります。また神話:主要人物である田中一朗には称号【掌握】が贈られます。
転生を拒否する場合は、 《NO 》を選択して下さい。
五分経過しましたが反応がなかった為強制転生に入ります。
暫らくお待ち下さい。
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暗い闇の中に意識を漂わせながら一郎はこれ迄の事を思い出していた。
走馬灯でも見るかのように・・・。
【MONSTERs:ONLIN】
今から7年前、西暦2160年に日本の大手メーカーが満を持して発売したVRMMO-RPGであり当時、多数開発されたVRMMO-RPGの中でも頭一つ抜きん出て評価されたタイトルが【MONSTERs:ONLIN(モンスターズ:オンライン)】である。
このゲームの「プレイヤーの自由度の広さ」が評価され支持された一つの理由だ。
基本となる職業の数は下位職と上級職、混合複合職を合わせると、ゆうに2800を超え職業LVが設定されている。
各職業は、最大でlv300まであがる仕様になっており、さらに合計職業lv上限のlv300までならいくらでも職業を選択することが出来る。例えばLV60まで上げた職業を五つ使用することや、LV300まで上げた職業を使用する一点集中型など、プレイヤー次第でいくらでもカスタマイズが出来る。
また、【MONSTERs:ONLIN】でプレイヤーが選択できる種族は、人間・森妖精などに代表され、幅広い適性を持つ人間種と小鬼・死動体などのモンスター特性、能力を保有し性能値で人間種を圧倒しているが多くの面でペナルティを受けるモンスター種と大きく分類でき、これらの上位種族として上位種、最上位種、亜種、古種、新種、等用意されており条件を満たせば選択出来るようになっている。最終的に全種族トータルで今現在把握されているのは600種程度であり職業と比較してもまだ把握出来ていない種族があと200種はあると言われている。
プレイヤーキャラのカスタマイズだけでこの自由度であり、この他に広大すぎるマップ。
神々が住むとされる神殿が立ち並ぶフィールドがアースガル、緑豊かな豊穣の地であり一部亜人種の拠点エリアがあるヴァナヘイム、海に面しており人間種を中心に多くの種族が暮らすミズガルズ、灼熱の大地がどこまでも続くムスペルヘイム、氷と霧に閉ざされたフィールドの二ブルヘイム、エルフの拠点があり実り豊かな森のアルムヘイム、ダークエルフや異形種の勢力が大きい忌み地のスヴァルトヘルヘイム、ドワーフの拠点で卓越した技術を持つ地下大国のニダヴェリール、強力な精霊やモンスターが蔓延る未開の地ヨトゥンヘイムの九つの世界。
圧倒する程の武装とアイテムの数。
初級から始まり、低級、下級、中級、上級、最上級、珠玉級、世界超位級、至高遺産級、宝璽物級、聖遺物級、伝説級、起源超位級、神代級と分けられ神代級は19個しかなく殆どが大手ギルドのギルドマスターの手に置かれている。
このように把握しきれない程の情報に溢れた世界で各プレイヤーは、己のプレイスタイルに則り遊ぶことが出来る。広大なマップのマッピンングに挑む者や、厳選した対人戦職業で【MONSTERs:ONLIN】全ユーザー最強を決める大会優勝を目指す者など多くのプレイヤーが思い想いに、このゲームを楽しんでいた…‥そう、あの悪夢のようなデスゲームが始まるまでは。
【MONSTERs:ONLIN】が発売され5年後の西暦2165年5月27日【大型アップデート:ユグドラシルを征く者】が実装され事件は起きた、当時ログインしていた6000人を巻き込み唐突にログアウト不可能のデスゲームが開始されてしまったのだ。
更に追い打ちを掛けるように混乱収まらない各都市拠点エリアにモンスターの群れが押し寄せてきたのだ。これは今回新しく実装された【濫溢乱氾】というイベントであり、本来ならばプレイヤー同士で協力し、街を守らねばならないのだがパニック状態にあるプレイヤー達は街を見捨て逃げ出し多くの街が魔物の手に堕ちた。結果としては守りきれた街は大手ギルドが居を構える4つの都市だけであり、各都市をつなぐ転移門も機能を停止した。拠点を失った殆どのプレイヤーはそれぞれ、ミズガルズにあるギルド【合従郡】が守る半島都市【ライウ】。ヴァナヘイムにあるギルド【新緑の颯 】が統治する陵丘都市【ヴァスティーラ】。ニダヴェリールにあるギルド【黄金比率】が取り締まる鉄鋼都市【ルーツ】に移動した。
なぜ3箇所に分かれたか?答えは至極簡単である。残り1つのギルドに大きな問題がある為、一部のプレイヤーを除き自ら関わろとしたがらないからである。そもそも問題のギルド自体が一部の種族を除き排他的であるのも敬遠される要因の一つだ。そのギルドの名は【失楽園】と言いスヴァルトヘルヘイムの湿地帯にある都市【アヴァヴェル】を拠点に活動しギルド所属メンバーはモンスタープレイヤーだけで構成されており人間種が所属していない唯一のギルドである。一郎もこのギルドに所属し中心メンバーとして活動していた。
【失楽園】についての有名な話が有る。
それは、【MONSTERs:ONLIN】がサービス開始された当初よりモンスタープレイヤーはその見た目から人間種プレイヤーによる執拗なPK行為の被害に合い続けてきた、例えばGVGや都市戦争などで負けた側は3日間勝利側に都市やギルドを制圧され資産、街に税が掛けられる等ペナルティを受ける。問題はペナルティ中に復活地点のギルドホームや神殿でモンスタープレイヤーがリスポーンキルを繰り返されるなど逸脱した行為が度々起きたのだ。各々抵抗したがプレイヤーの総数は明らかに人間種プレイヤーの方が多く絶望してゲームを辞める者までいた。
そんな時に設立されたのが【失楽園】である。当時、PKに苦しんでいた一郎に手を差し伸べ絶望から救った女性がいる。彼女こそ後の【失楽園】ギルドマスター《鮮血姫》の二つ名を持つことになる【種族・モンスター種:吸血鬼】玲香だった。
レイカはまず個々で抵抗していた一郎を含む課金モンスタープレイヤーを集めパーティーを作った。各地でPKに苦しむモンスタープレイヤーを助けて周ることでメンバーを増やして行く。パーティー (5人組)を8つ編成して集団を組織した。個々で抵抗するのをやめて集団で抵抗することを始めたことで一方的なPKは減ったのだが、そこで自衛だけに止まらず攻撃に転じた。PK集団のパーティーがフィールドで狩をしている隙を付きレイド全員で囲みPKする奇襲攻撃を続け各地のPKパーティーを殲滅していった。
この頃になるとレイカの行動に賛同するPYが増えPTメンバーが52人まで増えたので組織を立ち上げることにした。ギルド上位メンバーであるパーティー設立時の一郎を含む5人は課金が進み廃課金プレーヤーになり残りのメンバーも強制はしていないのだが一郎達に影響されてか重課金プレーをするようになったギルドメンバーの成長に伴い500程あるギルドの中で【失楽園】は序列5まで台頭する。ここで問題が起きたのだ。悪質なPK行為を繰り返していたギルド【紅灼溶血】を襲撃したのだが、このギルドは序列3の【流血喪炎】の下部ギルドであり喧嘩を売られた【流血喪炎】は他のギルドに同盟を募った。【失楽園】の台頭で地位の危機感を感じる序列4の【合従郡】や今まで【失楽園】が襲撃したギルドや恨みを持つPT、個人が賛同し集まった。総参加ギルドが9。PTが11。総勢1000名が集まり【MONSTERs:ONLIN】始まって以来の連盟数による掃討作戦が開始された。
対する【失楽園】はギルドメンバー52名とこの窮地を知り駆けつけたギルドに恩が有るPY130名、合計182名。誰もが一方的に蹂躙され【失楽園】が掃討されるであろうと予測したが結果は大きく外れることになる。【失楽園】のギルドホーム 《血塗り不夜城》の防衛システムを甘く見過ぎた為だ。
《血塗り不夜城》は全13階で構成された西洋城の外見で壁は蔦に覆われている。1階から5階はギルドを守護するモンスターが徘徊していてあちこちに石棺が置かれている墓地エリア。5階の最奥にある大広間には上階に上がる階段を背に幼い少女の容姿を持つ守護者【ティカ】が控えている。ギルドに配備出来るPOPモンスター以外のモンスターは合計レベルが2000までなら何体でも設置できる。ティカはモンスターのLV制限最大の1000に設定されている。種族は自動殺戮人形であり、課金で手に入る職業の中でもレアリティが高い。
6階から11階までがギルドメンバーの部屋がありそれぞれPYのサポートキャラが守護している。12階は大会議室や大食堂などがある。最後に13階は玉座が置かれている。課金に物を言わせ拡張され強化されたPOP(自動出現)する自衛モンスターやトラップ等によりダンジョンと化したギルドホームは、彼の最高難易度:神宿ダンジョンクラスに匹敵する。実際ここまでギルドホームの強化に時間と費用 (リアルマネー含む)を費やすギルドは【失楽園】のみであった。ちなみに序列1の【新緑の颯 】の不落城と称えられるギルドホーム《緑帝廟庵》と比べても費用だけでも3倍は掛けられている。このギルドホームのシステムを使い
連盟1000名を10名で返り討ちにしたのである。1階から4階までで450名が防衛システムと自衛POPモンスターによって排除された。
そして5階の大広間でギルドマスターのレイカを筆頭に神代級武器持ちの一郎たちギルドメンバー10名と完全装備に身を包み神代級武器を持つLV1000のティカ
550名対10名と1体
戦闘は一方的に終わった。
【失楽園】の完全勝利として。
彼らがギルドホームにリスポーンされる頃には、手薄となっている
【流血喪炎】と【合従郡】の両ギルドは此処にいない172名の仲間によって制圧されているだろう。
こうして後々語り継がれる戦いは幕を閉じ【失楽園】に対する不文律「【失楽園】には手を出してはいけない」が出来た。
これによりプレイヤーが避難の際【失楽園】を選ばないのは、至極当然なことだと言える。
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当時、デスゲームが開始されたとき【失楽園】ギルドメンバー52名のうち一郎とレイカを含む20名がログインしておりギルドホームに集まっていた。もしこのとき全メンバーが揃っていたら2年もかからず1年でこのデスゲームをクリア出来ていただろう。
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お待たせしました。
転生の準備が整いました。
有意義な人生になりますよう
心よりお祈りしております。
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