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第五話 ついに母さんにバレちゃった?

次の次の木曜日、十一月二〇日。朝、七時四五分頃。

「おはよう、母さん」

 優一が起きてキッチンへやって来ると、母が怪訝な表情を浮かべながら戸棚をガサゴソ漁っていた。

「おはよう優一、なんか最近、戸棚や冷蔵庫の中身が猛烈な勢いで減っとるんよ。おまけに電気代やガス代、水道代も今月、けっこう上がってるの。ア○エッティにでも入られたのか妖怪のせいなのかしら?」

 母は首をかしげる。深夜アニメは嫌う母親だが、朝夕に放送している国民的アニメや子ども向けアニメ、ジ○リ映画は大絶賛しているようなのだ。

「!!」

 優一はギクッと反応した。背中から冷や汗も流れ出す。

「優一、何か心当たりない?」

「なっ、ないよ」

「ひょっとして優一が何ヶ月か前に見てたエッチなアニメみたいに、年端も行かない女の子を何人か、こっそり監禁しているとか?」

 母はニヤニヤしながら問いかけてくる。

「あるわけないだろ!」

 優一は早口調で即否定した。

「ふふふ、冗談よ」

 母は大きく笑いながらテーブル席へ戻る。

なんてこと想像するんだよ、実の息子に対して。

 優一は呆れ果てていた。

 半分当たっているような気もするが。

 優一は急いで朝食を食べ終えたあと、

「ちょっと忘れ物が――」

 母にこう伝えて階段を駆け上がっていく。

「実帆ちゃん待たせないように、なるべく早くしなさいね」

「うん」

 自室に入ると、

「あの、キミ達、俺んちの冷蔵庫や戸棚、勝手に漁ったでしょ?」

 困惑顔ですぐさまこんな質問をした。

「Yes! refrigeratorからプディングとかジェリーとかフルーツとか盗って食べたよ。ちなみに『食べる』を表す英語eatは現在形、過去形、過去分詞でeat,ate,eatenと不規則変化する動詞だからしっかり覚えようね」

「あたしも漁ったよ。優一お兄ちゃんのおウチの戸棚って、美味しいお菓子がいっぱい入ってて四次元ポケットみたいだね」

 モニカと根位比愛はにこにこしながら明るい声で答えた。

「あらまっ。いけなかった? ごめんね、優一君。スーパーのチラシや地図帳や家庭科の教科書に載ってる食材だけでは物足りなくて、ついつい。わたくし達、優一君の家族、つまり西風家の一員だから、自由に漁っていいものかと」

「わらわも。他人のおウチから私物を盗るのは立派な窃盗罪ってことは知っていますけど」

真桜里と弥生は気まずそうに告げた。

「いつ俺の家族になったんだよ?」

 優一は呆れ返る。

「あのう、ユウイチラコイド、ヤヨイソロイシン。じつはアタシ、ミホルマリンちから、いくつか私物を盗みました」

 照水裸は申し訳無さそうに白状した。

「えっ! 実帆ちゃんちのも、盗ったの?」

 優一は眉をぴくりと動かす。

「うん。アタシ、ミホルマリンちに忍び込んで下着を何枚か拝借したのだ。その……柄が、すごくかわいかったので」

 照水裸はもじもじしながら照れくさそうに打ち明けた。

「照水裸さん、それは泥棒さんのすることですよ。ごんぎつねの世界なら後でお詫びをしても猟銃で撃たれてますよ」

 弥生は困惑顔で注意する。

「衣類・日用品は、わたくしがスーパーのチラシから取り出してあげてるでしょ。めっ!」

 真桜里は照水裸の頭をグーでゴチーッンと叩いた。

「あいだぁっ、だってそれだと種類が少なくって。分からないように最近使ってなさそうな奥の方から取り出したから」

照水裸は唇を軟体動物タコのように尖らせ、涙目で不満を呟いた。。

「後でちゃんとこっそり返してあげてね。あと、俺んちの光熱費が上がってるのも、きみたちのせいでしょ?」

「はい。わらわ達は優一さんの垂乳根がお買い物に行っている隙に、シャワーを浴びたり炊事をしたり、テレビ番組を視聴したりしています。まさに〝鬼の居ぬ間に洗濯〟をしています。あと、朝は寒いので暖房も無断で使わせていただきました」

 弥生は申し訳無さそうに正直に伝える。

「そういうことかぁ。確かに女の子だし、風呂には入らないといけないからな」

 優一は教材キャラ達の行動に同情心を抱いてしまった。

その頃、実帆のおウチでは、

「あれ? パンツが入ってるところ、ちょっと引き出しやすくなったような……気のせいかな?」

 お着替え中の実帆が、ちょっぴり不思議に感じていたのであった。

             □

「優一ぃぃぃぃぃぃぃっ、母さんに何か隠し事してるでしょ?」

 その日の夕方六時半頃、優一が帰宅すると、玄関先でいきなり母から険しい表情で問い詰められた。

「べっ、べつに、ないけど」

優一はやや声を震わせながら答えるも、

まっ、まさか。バレた? あの子達のこと。

こんな心境により全身から冷や汗が出て来て、心拍数も急上昇した。

「嘘おっしゃい!」

 仁王立ちしていた母は、眉をへの字に曲げさらに表情を険しくする。

「嘘なんかついてないよ」

 優一は間髪を容れず反論する。

「まったく、優一ったら。母さんは知っとるんよ。明日、〝授業参観〟があるんでしょ?」

「……あっ、そういうこと。たっ、確かにあるよ、三時限目に。なっ、なんで知ってるの?」

 予想外のことを指摘され、優一は焦りつつもホッと一安心した。

「さっき実帆ちゃんが電話で知らせてくれたの。優一、黙ってるなんてどういうつもりなの?」

 母は尚も険しい表情を浮かべる。

「だって、言ったら、母さん絶対見に来るし」

 優一は困惑顔で答えた。

「まあ優一ったら、そんなに母さんに見に来られるのが嫌なのかしら?」

「母さん、高校で授業参観に来る親なんてほとんどいないよ。恥ずかしいからやめてくれよ」

「ダーメ、見に行きます。よそはよそ、うちはうち」

 母は爽やかな表情で、駄々をこねる子どもをたしなめる母親の定番文句を告げる。

「そんなぁ。よりによって一番苦手な英語なのにぃ」

 がっくり肩を落とし落胆する優一をよそに、

「そもそもあんたの高校のホームページに載っとる年間行事予定見て今月にあることは前々から知ってたけどね。さてと、明日はどの服を着ていこうかしら♪」

 母は行く気満々なのであった。

 

         ☆


翌日金曜日、二時限目終了後の休み時間。

「ああ、嫌だなあ。母さんすごく張り切ってたし」

 優一は英文法のテキストと英和辞書、ノートを机に上に出したあと、駿平と圭太に向かってため息まじりに愚痴を呟いた。

「僕んちのママは、お仕事が忙しいから来られないのだ」

 駿平は残念そうに言う。

「見に来て欲しいのかよ」

 優一はすかさず突っ込んだ。

「おれの母ちゃんは見に来ないぜ。というか授業参観のプリントすら渡してないからあること事態知らないぜ」

 圭太は余裕の表情であった。

「いいなあ」

 優一は当然のごとく羨む。

「圭太くん、ダメだよそんないい加減なことしちゃっ! 保護者向けの配布物は全部渡さなきゃ」

「うをわぁぁぁーっ!」

 突如背後から、やや険しい表情を浮かべた実帆に両肩をぐーっと押し付けられ、圭太はびくーっと反応した。

「圭太、そんなに驚かなくても」

 優一は楽しそうに笑う。けれども彼の心の中は不安でいっぱいだった。

ともあれまもなく始まった三時限目、英語。

開始から五分ほど過ぎた頃、

やっぱり、来たか。母さん、なんて格好してるんだよ。

 優一は後ろをチラッと見てみた。

 宣言通り、優一の母は見に来ていた。しかも実帆のお母さんといっしょに。

 優一の母は無駄に厚化粧して、晩秋らしく赤紫のもみじ柄ワンピースを身に着けていた。さらに厚底ブーツという組み合わせ。実帆の母はココア色のカーディガンにグレーのスカート、黒色のハイヒールという無難な格好をしていた。

 このクラスで他に見て来ている父兄の方々は十人くらいいた。

「では先生が今から黒板に書く日本語文をノートに写して、各自英訳してね」

 播野先生はそう告げると白チョークを手に取り、『きみのレインコートが無かったら、私はずぶ濡れになっていただろう。』と板書した。

 それから約一分後、

「皆さん出来たかな? 当てるわよ。今日はノーヴェンバートウェンティワンの三時限目だから、№サーティーンのミスター西風」

「はっ、はいーっ!」

なんで十三番? 普通二十一番だろ。

 いきなり当てられてしまった優一はガバっと椅子を引いて立ち上がり、黒板前へと向かう。白チョークを手に取ると、

Had it not been for your raincoat,I would have been drenched to the skin.

とやや緊張気味に板書した。

「You are correct! 西風くんよく出来たね。ずぶ濡れになるも上手く訳せてるわ。スペルミスもありません」

 播野先生は笑顔で褒めてあげる。

あっ、当たってたのか。 

 優一は上手く答えられた自分自身に驚いていた。

あら優一、やるじゃない。

 母も意外に思ったようだった。

やったね優一くん。でも私、正直、優一くんが正解出来るとは思わなかったよ。

 実帆もちょっぴり驚いていた。

「ユウイチくん、日々の学習の成果が少しずつ現れ始めてるね。仮定法過去完了の重要構文だよ」

 モニカは優一の自室から、モニター越しにとっても嬉しそうに眺めていた。

「アタシもユウイチラコイド達の通ってる学校の授業、いっしょに参加したいぜ。今から忍び込んで来ようかなぁ。見つからねえように気体の窒素に変身して」

 そんな計画を企てた照水裸に、

「照水裸さん、わらわ達は〝家庭学習用教材〟ですよ。基本的にお外へは出ず、受講生の自室に引き篭っているのが役目ですからね」

 弥生はにこっと微笑みかける。

「……分かりましたのだヤヨイソロイシン。今後は緊急の場合を除き、ユウイチラコイド宅内部から外へは出ません」

 すると照水裸は本能的に引き留まったのだった。

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