愛に飢えた精霊の子たち~シルフのキースとウンディーネのレイン~ 4
混じり始めた別の思念に気づき、GINは苦虫を潰したように顔をゆがめた。感じ取ったその思念に渋々従い、レインとキースが出会った時間軸の記憶が詰まった繭から抜け出す。ふと顔を上げれば、思念の主が待ち構えていた。
《ベビーフェイスは覗きが趣味か?》
という文句を浮かべたキースの不快感が、ダイレクトにGINの意識へ叩き込まれた。
《そういう訳じゃないさ。どうしてあそこまでキースに固執するのかを知れば、もっと効率よくレインを説得出来るんじゃないかと思って》
《は……ぁん、じゃ、まあお手並み拝見といこうじゃねえか》
キースはそう言って今GINが出てきたばかりの気泡の更に下、深海を思わせる限りなく黒に近い蒼を指差した。
《レインの声が、あの奥から聞こえた》
《なんにも見えないな》
《どうしても弾かれる。少しずつずれてダイブを試している内に、俺もここに辿り着いちまった》
ダイブの中で感じられる視覚や聴覚、触覚などは、脳がダイブした対象の感覚を認識しやすいよう、便宜上GINの五感に対象の感覚を置き換えているらしい。今キースが指し示したそこは、「寒い」「冷たい」といった触感をひどく刺激する印象だ。拒絶がそんな感覚に置き換えているような気もするが、膝をついて手を伸ばしたGINに対して、深海の闇は受け容れるイメージを見せた。粘りのある気泡がGINの手を包み、波立ちを思わせる“とぷり”という音がGINの鼓膜を揺らした。
《俺には弾かれる感覚がないな。どうやらYOUの《淨》が巧くいったみたいだ》
GINはそう語る一方で、キースに左手を伸ばした。
《案内人が要るだろう? お前を拒むってことは、それだけお前の存在がレインにとって重いってことじゃないのか》
彼がどういう意味合いでレインを自分の片割れと思っているのかまでは解らない。だがその内訳がなんであれ、互いが互いを必要としているのであれば、レインの心を壊さずに連れ戻すことが出来るのはキースだけだと思われた。
《でも、レインは》
とキースはためらった。傷ついた捨て犬のような彼の顔を見たGINは、
《大丈夫だ》
と告げた断言に苦笑を添えた。
《さっき俺が見て来たお前たちの馴れ初めの記憶。あんな形でさえ、レインにとっては綺麗で大切な思い出なんだろう、きっと》
彼女の記憶を思い出す。身につまされる切なさと、甘酸っぱい感情。それは間違いなくレインのものなのに、GINにも覚えのある感情だった。
《だから、あんなに綺麗な水玉色だったんだ。あの子にとって自分を必要として欲しい相手は、誰でもいいわけじゃないんだろう》
ずるりとGINの体が深海に引っ張られていく。まるでGINの意識が形作った体をレインに乗っ取られたかのような自然さで、腕が勝手にキースの方へ伸びた。
《待て、レインは俺を拒んでる》
キースが怯えた声でGINに訴えながら、掴まれた腕を振り払おうとした。
《大丈夫だ。レインの本音は、その正反対だから》
GINの紡ぐ言の葉が、GIN自身のものなのかレインの代弁なのか、境界線が曖昧になっていく。
《レインがお前以外の誰を必要だと思えるんだ? そんな相手が現れてくれるようなこれまでだったか?》
《……》
キースが沈黙した。思念を感じられないほど、頭が真っ白になっていく。それがともし火のように深海を照らす。深く引き込まれていくほどにレインの思いとシンクロし、GINの苦痛が増していく。そんな中、唯一の希望ともいえるキースの存在が、ふたりを最深部へ辿り着くまで正常な意識を保たせた。
キースが「レインの声」と称したモノがGINにも聞き取れて来る。ごちゃ混ぜの感情が、さすがに少しずつGINの意識を侵蝕していく。
――どうしていつも、何も知らない子供が犠牲にならなくてはいけないんだろう。
レインの思念と自分のそれが混じり合い、GINにそんな負の感情を思い出させた。ただ、レインは母親のぬくもりを知っていた。それが過剰なシンクロを阻むという偶然の幸運を生んでいた。GINは親を知らない我が身を呪って来た。恨む対象がない自分を悲劇の場所へ留めていた時期もあった。だが、親の記憶があるということは、憎むことさえ許されないと言える場合もある。レインの深部を実感している今、それを嫌というほど見せつけられた。
《え……っ、え……》
漆黒の中、小さな青い光が見えた。思念はそこから伝わって来る。
《……見つけた》
胎児のように丸まっていた少女の全身が、GINのその思念でびくりと震えた。背後でキースもまた怯えた思念を湧かせ始める。GINは左手を後ろに回し、掌を何度か開いては閉じるジェスチャーを繰り返した。
《俺に意識を合わせろ》
レインに気取られぬように。キースはGINの意図したそれをいち早く察したのだろう。縋るような強い力で握る感触がGINの左手に宿った。小さく一度、二度、深呼吸を繰り返す。次第にキースの動揺がなりを潜め、GINは小さく息を吐き出した。キースが落ち着いたのを確認すると、GINは握った手を離して少しずつゆっくりと青い光に近づいた。
《レイン、俺の言葉が解るか?》
レインの魂は、漆黒の海の中で、更に彼女の魂とほぼ同じ大きさの球体に包まれていた。GINはその球体と少し距離を置き、見下ろす形でレインに語り掛けた。
《……解る。誰?》
くぷ、と小さな泡が球体から飛び出し、少女の思念をGINに届けた。
《キースの、友達》
《きー、す?》
そう言って眉根を寄せて小首を傾げる少女の許に近づいた。キースをレインの目に触れさせない角度から、怯えさせないよう少しずつ球体のゆるい弧に掌で触れた。
《どうしてこんな奥まで潜って、隠れてるんだ?》
水球の中で彼女はくるりと回り、逃げることなくまっすぐ見つめ返して来た。笑っている癖に、涙を流す。やがて彼女は堪え切れずに眉をひそめ、涙を溢れ返らせた。レインに宿ったその表情が一瞬だけGINに言葉を詰まらせた。その瞬間過ぎったのは、モニター越しから由良が最期に見せた微笑。こちらが望んでもいない我慢をしているとよく解る。それに思い至れた自分にほっとする。彼女は由良ではない、レインだ。GINが自分にそういい含めると、ようやく凪いだ気持ちでレインに話し掛けることが出来た。
《キースが話したがっていたぞ》
彼女はまたくるりと身を翻した。それは孵化し掛けている魚の稚魚が、卵の中で身を捩じらせている姿を連想させた。
《イヤ》
《どうして? 嫌いじゃないんだろう?》
《だって、もうあたしはキースにとって、要らない存在になったんだもん》
今度はGINの肩がびくりと小さく震える。《淨》が成功したから潜れた、という判断は間違いだったのだろうか。そんな不安がよぎったせいだ。
《キースがそんなことを言ったのか? 信じられないけど》
とGINがとぼけて訊ねてみると、彼女は小さく二回、首を横に振った。
《言わなかったけど、そういうことなんだよ、きっと。だってキース、ごめん、って》
彼女はそう呟くと、花びらのような涙をはらはらと零した。
《ごめん、って謝ったんだ、もの。あたしが悲しいと思うって解ることを思っているって、こと、でしょう? そのあと急にきゅう、ってお腹が痛くなったの。なんにも見えなくなって……気がついたら、あたし、ここにいたの》
あたしは眠ってるんでしょう、と彼女は言う。GINへの敵愾心を《淨》で差し替えることは出来ても、キースが彼女の意識を失わせたことが強烈過ぎて、そこへ差し替える記憶をひねり出すことが出来なかったようだ。
《初めてこんなに長く離れていたから、キースは自分がすごく身軽に感じてあたしが重たくなっちゃったんじゃないかな。本当にキースが好きなら、そんな風に思っちゃいけないのに、悲しくて、苦しくて、今までありがとうって、上手に言えないの》
反射的に、GINの右手が上がる。自分とレインを隔てる球体に小規模な《流》を当てて殻を壊し、彼女を思い切り抱きしめた。それは衝動に近い行動だった。
――違う。これは俺の思念や感情じゃ、ない。
GINは背後からの強い視線で、この感情の持ち主に思いを馳せた。その存在を意識しつつ、GINは悪戯な笑みを浮かべてレインに囁いた。
《レイン、俺はキースと同じ属性のサイ、《能力》者ってヤツだ。お前の仲間でもある、ってこと。だからこうして、お前の中でおしゃべりが出来る》
《これって、あたしの作った夢じゃないの?》
《ああ。日本人なんて見たことないだろう》
GINはそう言って、自分の黒髪を指差した。
《うん、見たこと、ない。日本人はみんな黒髪なの?》
《そう。みんな、黒い髪で黒い瞳。今《気》を操っている俺は違う瞳の色になっちゃってるけどね》
彼女は乱暴に目許を拭い、少しだけ興味深げに、だがかなり無理のある笑みを浮かべた。純粋な蒼い瞳がGINをまっすぐに見上げて訊ねて来た。
《おじさんもキースと同じグリーンの瞳をしているのね。シルフなの? キースが傍にいれないからって、あたしのことを気遣って代理におじさんを寄越してくれたとか?》
軽くへこんで頭が垂れた。
《おじさん、ね……。レイン、そこはまあ、間違ってないけど、もう一個の方は間違ってるよ》
代理ではない、という意味で「間違っている」と表現したが、レインはその言葉を聞いた途端、剣呑な表情に戻った。あっという間にまた水の玉を作り、とぷんとその中へ逃げ込んでしまった。
《どうした? 出ておいで。いいものを見せてあげるだけだから》
《やだ。おしおきされる。間違えたもの、あたし》
おしおき。その言葉に過去のGINがシンクロする。頭を抱えて膝を折り、受身の姿勢で縮こまる彼女は、遠い昔の日々をGINに思い出させた。繋ぐ言葉を失ったGINは、あのころ抱えていた膝をゆるめさせたのが誰の何だったのかを思い出そうと、必死で自分の過去を探った。
《今まで》
思い出したその言葉を、複雑な思いで口にする。
《随分怖い思いをして来たんだろう》
そう紡ぐ声が、上ずってしまう。
《でも、もう大丈夫だ。そんなヤツらに、二度とレインを触れさせやしないから》
だから顔を上げろ、ついて来い。身を守る術も教えてやる。そう言って手を差し伸べてくれたヤツの顔が、GINに苦笑を浮かばせた。大人だって間違うのだから、そのときは堂々と顔を上げて間違いを正してやればいいのだ。GINにそう教えてくれたヤツが誰なのかを思い出した。自分にとっての紀由が、レインにとって誰なのか。それがこの球体からレインを取り出すキーパーソン。
《ほら》
彼女を促すように、GINは親指を立てて背後を指し示した。
《お前さんの騎士が焦れったそうに待っている。だから早くそこから出ておいで。一緒に帰ろう》
GINがそう告げ終え、ようやく後ろを振り返る。キースが待ちかねたようにすぐ隣まで降りて来た。
《レインごめん! 手を上げたことは謝るから! とにかく落ち着いて話がしたかっただけだ。お前と離れるとか、考えたことなんかない! だから頼む、出て来て。レイン!!》
――とぷん。
叫び続けるキースの声に応えるように、水球から泡の弾ける音がした。レインを包む黒ずんだ蒼い水の球は、フラスコの底が溶けていくように下から形を崩していった。
《キース、あたしのことが邪魔になったんじゃないの?》
怯えた瞳がおどおどとキースを見つめ、スカートの裾を握りしめる。
《それだったら最初から拾わない》
泣きながら訴えるキースは、レインの記憶の中で見た少年そのものだ。
《ちゃんと信じろよ……俺を独りにするな……話を、聞いて……独りぼっちに、しない、で……くれ、よ……》
犬っころのようにしおれたキースの姿を彼らの頭上から見下ろし、GINはつい顔をほころばせた。
《キース……キース、ごめんね? どうしてあたし、あんなにキースと離れなきゃ、なんて思ったんだろう?》
レインはそう自分を責めながら、恐る恐るキースのぐしゃぐしゃに濡れた頬へ触れた。キースはそんな彼女を壊さないよう、そして怯えさせないように、そっと優しく包んでいた。
そんなふたりを見届けたGINは、少しだけ罪悪感を抱いた。元はといえば、GINとキースの初対戦がレインの誤解を招いた。だがYOUの《淨》がその事実まで改ざんしてしまったために、レインの理不尽な勘違いとしてとどまってしまい、彼女に自分を責めさせる格好になってしまったのだと思う。
《帰り方は、もう解るだろう。先に戻ってるぞ》
彼らにその思念が伝わっているのかは解らない。だがきっとキースの《風》としての《能力》が、巧く彼らを表層意識へと運んでくれるだろう。自分がかつてそうだったように。
(さて。お邪魔虫のおじさんは消えますか)
GINは苦笑いでぼやきつつ、頭上に広がる青い水面でひときわ白く輝く光を目指してジャンプした。
こめかみがズキズキと痛む。不可解な焦燥感がGINの不安を煽っていた。レインの深層から表層意識へ浮き上がるまでの中で、彼女の思念から何か大事なものを視たように思うのだが、それがなんだったのかを思い出せない。深層までのダイブはかなりの疲弊を伴う。RIOにダイブしたときと違い、今回はダイブ前にキースと一戦交えたことで疲労度が増していた。
「うわあ、認めたくないけど、年かな」
思わず自己嫌悪を口にしながら、鎮痛剤を求めてポケットをまさぐった。
「大丈夫ですか」
という声掛けでYOUの存在を思い出した。彼女はそう言いながら、GINの左耳にあてがってくれていたらしいハンカチを除けた。そしてGINに代わり、錠剤をついと差し出す。
「苦しそうな顔をしていたので、すぐ飲めるようにと用意しておきました。勝手にポケットの中を探ってごめんなさいね」
苦笑を浮かべてそう告げる彼女に、GINも釣られて表情を崩した。
「さんきゅ」
礼の言葉と一緒に、彼女から受け取った錠剤を噛み砕く。意識の三割くらいをダイブ中のキースに向ける。万が一迷走したときに誘導出来るよう彼の額に素手で触れたまま、YOUに経過時間と現状の確認を取った。
「GINがダイブしてから十分少々です。胡主席と鷹野総理は、シガツェから連絡を受けた華僑の方々と合流し、無事都内へ入ったとのことです。本間さんは、サラマンダのリザ・フレイムから心理攻撃を受けて一時通信が途絶えましたが、今はRIOとRAYに指示を出しています。こちらの状況も本間さんに伝達済みです。ノームのマッド・タイロンは、このミッションを“時間稼ぎ”と口にしていたそうです」
「時間、稼ぎ」
その言葉が妙に引っかかり、GINはおうむ返しのように二度繰り返した。
「時間稼ぎ……なんの、時間稼ぎ、だったっけ」
だったっけ、という自分の言葉が、レインの中で知った情報の失念を悔やませた。
「GIN、あなたには、レインとキースを確保し次第、早急に戻るよう指示が出ています」
「らじゃ。ふたりの意識が戻り次第、先に行く」
とは答えたものの、焦燥感が治まらない。嫌な予感が拭えないでいる自分が最も不可解だった。
「ん……ん」
不意に聞こえた呻き声で、GINの思考が中断された。先に身を起こしたのはレインだった。キースは慣れないダイブの副作用で頭痛に襲われているのだろう、唸りながらごろんと一度だけ頭を抱えて身を起こせずにいる。それらは二人の意識が支障なく戻って来れたことを知らせていた。GINは無事を確認すると、小さな安堵の溜息をついた。
「(初めまして。レイン。キースには本名の思安と呼ばれているけれど、日本名では水越ゆかりといいます。あなたと同じ、《水》の仲間よ。よろしくね)」
YOUが模範的な英語で自己紹介をし、すかさず手を差し伸べる。柔和な彼女の笑みが、レインの怯える瞳を少しだけ和らげた。
「なか、ま?」
レインは日本語でそう繰り返した。YOUが驚いて目を見開く。
「キースから言葉もラーニングした済みなんだな。取り敢えず日本語はOK?」
GINは敢えて日本語で問い掛けた。こちらへ向けられた視線が、とてもおどおどとしていることに軽く驚かされる。
「あ? わかんなかったかな」
「ううん、大丈夫。あの……ごめんなさい」
ぽとりと零す涙は、混じり気のない透明なひと雫だった。
「キースがあたし以外の人を信用するなんて、今までなかったから……悪い人じゃないからなのに、ごめんなさい」
戻って来るまでの間に、キースの思念を視たという。紀由やGINが、レインごとキースを仲間として受け容れる態勢にあることを知ったらしい。彼女の瞳に宿った怯えの理由が自責から来る罪悪感だと解ったら、GINの面が場にそぐわない笑みをかたどった。
「キースが前もって話しておけば済んだ話だったんだ。レインが謝ることじゃないから気にするな」
そう言って彼女の赤毛をくしゃりと撫でると、ようやく彼女が笑みを浮かべてくれた。
「ありがとう。信じて、いいんだよね?」
縋るような瞳をまっすぐ向けて、彼女がGINへ確かめるように問う。それは遠い昔、自分が紀由に告げた言葉と同じだ。そして恐らく抱く思いも一緒なのだろう。
「当然だ。こっちが好きでそうしてるんだ。もし裏切られたら、なんて考える必要はない」
かつて紀由が告げた言葉を、今度はGINが自分の意思としてレインに送った。
「さて、んじゃ、残りはサラマンダ、だな」
GINは立ち上がって膝についた汚れを形ばかりの仕草で叩き落とした。リザ・フレイムの物理戦闘能力は不明だが、さすがに総勢で臨めばどうにか出来るだろう。涸れることを知らずに溢れ返る不安や焦りは、正体不明の彼女にあると自分に言い聞かせた。
「レイン、俺とYOUは先に行く。キースを頼むな。こいつをキースに飲ませてやれば頭痛が軽くなるはずから」
そう言って自分の飲んだ痕跡のある鎮痛剤のPTPシートをまるごとレインの手に握らせた。
「これ、なあに?」
「鎮痛剤。痛み止めってヤツ」
GINがそう答えても不安げな表情で小首を傾げるレインに、YOUが思い出したようにつけ加えた。
「ああ、そうね。レインの立場だと、なかなか薬を目にする機会もなかったでしょうね。大丈夫。日本の薬は安全管理がしっかりしているから、キースに悪い影響はないはずよ。ついさっきGINもそれを飲んだところだから、そういう意味でも安心して飲ませてあげげられるわ」
優しいアルトの声が、GINの後押しをしてレインの不安を拭ってくれた。
「うん、わかった」
と力強く頷くレインの誇らしげで勇ましい声と笑みを見て、思わず小さく笑う。この少女もまた、守りたい者がいるからこそ、《能力》に翻弄されながらもまだ笑うことを忘れずにいられるのだ。そう思うと、彼女にも妙な親近感が湧いた。李淘世の発した“神童”の単語が脳裏をよぎった。
「キースが持ってる通信機を使って本間と合流しな。コイツにも本間から指示が出るはずだ。ちゃんと本間の言うことを聞くんだぞ」
GINは言うが早いか、一気にアキレス腱へ《流》を集中させた。YOUも立ち上がってGINにしがみつく。
「うん、わかった。キースが起きれるようになったら追いつくね!」
GINはレインの元気な答えに微笑を返すと、YOU彼女を抱き上げて目的地の方角を目指し、最大の勢いでジャンプした。




