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プチラモラは始まった

さして大した内容もない癖に、一度聞くとなかなか耳に付いて離れない旋律と言うのがある。ゲモゲモ・プチラモラと言う歌もそのような力があった。赤ヘルと言う、名のごとく赤いヘルメットを被った歌手が歌った曲だ。毎回ヒットランキングで一位に登場した。以下のような旋律と歌詞である。


挿絵(By みてみん)




こんな下らない歌が、ライブで何度も上演され、着メロナンバーワンにランクインされ、カラオケで必ず歌われていた。それもひとえにこの曲の依存性のような印象の強さである。これが、何故そんなに意識に残るのか全く不明であった。他の印象的な旋律はあるはずなのに、これだけはどこか不自然に聞く者の意識に刻み込んでいたのだ。「ゲッモゲモッ、プーチラモラ」と呟く人々のなんて多い事か。


相田小見郎という学生はその不自然さに疑問を抱いていた。ひょっとしてこれは旋律や歌詞そのものに印象の効果があるわけではなくて、実は他に要因があるのではないか、それをあらゆる友達に話した所、つぎつぎと共感者が現われた。それはやがて5~6人と少人数ながら「ゲモゲモ・プチラモラ反対の会」略して「反ゲモの会」を作るまでに至った。

彼らのメンバーは、相田の友達である。男性は相田小見郎、藤上学、様田曽根次郎の3人、女性は牧中菜穂子、琉田龍子の2人てある。


今日も「反ゲモの会」がカフェにて開かれた。まず相田が口を開いた。

「どう思う?どうしてあの歌があんな頭に残るのだと思う?」

「そりゃ、たまたまそうだったとも考えられるが…」

「いや、それはほぼありえない。考えてみろ、クラスの誰もがゲモゲモ・プチラモラを名曲と崇めていて、僕達も変に印象に残って、何度も頭の中で再生されるのは事実なんだ。つまり僕達の身の回りでほぼ全員がゲモゲモ・プチラモラの影響を受けてるんだ。これは、嗜好性の違いで考えてみたらおかしいんじゃないか?一人もあれは下らないとは無意識では認めてない。僕もこう話しているが、しばらくしたらあの旋律が頭に来るかもしれない。」

「でも、じゃあなんで…」

「私の考えなんだけど。」

「なんだ?琉田さん。」

「なんかエスパー的なものじゃないかな。赤ヘルがそんな力をもってて、人々を洗脳するみたいな。」


翌日も翌々日も同様にカフェで「反ゲモの会」は話し合っていた。だが会話は依然不毛な状態で、ひょっとしてこの疑問は単なる杞憂に過ぎないのではないか、ただのひねくれた考えではないかと影で思うようになった。やがて人は減り、相田一人になってしまった。


そして一人でカフェで珈琲を飲んでいた時、二人の女性が話していた。

「…それでさー、あいつね、何言ったと思う?」

「え、何何?気になる。」

「『僕が人間関係のコツを教えてあげるよ』って蟹子に言ったんだって!」

「うっそ、あんな人格破綻者が!?まじうける。」

「あはっははは。」


その時一方の女性の耳に「プーチラモラ」とうなる声が聞こえた。

「誰か私に囁いた?」

「いや?なんも聞こえないし、だれも近くにいなかったよ。」

しかし再び「プーチラモラ」のうなりが聞こえた。

「ほら、プチラモラって。」

「そんなわけが。」

プチラモラと聞いて相田は警戒した。


やがてその女性への「プーチラモラ」のうなりが徐々に繰り返され、そのうちどこからともなくそれに合わせて伴奏のドラムが聞こえて、「プーチプチ言っちゃうよー」「イル・ナンケストラ・ウラ・ウー」などと妙なうなり呟きのような掛け声が聞こえた時、彼女の目の前の視界が奇妙に歪みだした。突然正気を失い始めたかもしれない、と彼女は怯え、脳内に迫り来る「プチラモラ」を追い払おうとうめき声を出してもがいた。それははたから見て、突然彼女が目に見えない何者かに怯えて苦しみ出したように見えたので彼女の友達が話し掛けた。


「くみちゃん、大丈夫?」


くみちゃん、と呼ばれた彼女はやがて頭を抱えて激しくかぶりをふった。いまや彼女の意識内は突如襲い掛かった「プーチラモラ、プーチラモラ」「イル・ナンケストラ・ウラ・ウー」「プチプチ言っちゃうよー」の各掛け声が繰り返され複雑に入り交じって増大しており、今や彼女を発狂寸前まで追い詰めようとしていた。


「くみちゃん!」


その時、くみちゃんは壊れた。椅子から立ち上がり激しく歌いながら踊りだした。


「ゲッモッゲモッ、プーチラモラ!私もみんなも繋がるー!」


「くみちゃん!」

友達は止めようとするが彼女は何かに憑かれたかのように踊り狂った。


「ゲッモッゲモッ、プーチラモラァ!あなたも一緒にプチラモラー!」

最後の「プチラモラー!」の時に彼女は突然友人の方に両腕で指した。指された友人はなにか冷凍光線でも受けたかのように硬直し痙攣した。程なくして友人も一緒に「ゲッモッゲモッ!プーチラモラァ!」と歌い踊った。狂気は伝染し、次々と人々が踊りだした。


相田は思わずカフェを抜け出した。大変だ!不可解ではあったが一つだけはっきりしていた。赤ヘルの歌う、ゲモゲモプチラモラが人類を洗脳しようとしている・・・・

楽譜作成・・・ぬじゃわきし

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