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狂氣の果て〜クルーエル・デッドエンド〜  作者: クロス
序章:It is Bonkers

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第8話 狂喜に酔いしれる無垢なる虐殺


「ねぇねぇっ! 今の、なあに、なあに──っ?!」


「「──ッ!?」」

 一触即発で緊迫した空気がイレギュラーによって打ち破られた。

 彼らの経験上テーザーガンを当てられて、ピンピンしている者など、今までにいなかったのだから。


「んなバカな……っ」

それを少しの間を置いた後、誰もが内心で思っていたことを、碧眼の金髪警官が咄嗟に零れ出た一言が代弁した。

 この場にいる全員が目の当たりにした、目を疑う非現実的な光景。

「……お嬢ちゃん、ケガは……ないんだね?」

 碧眼の金髪警官の胸ぐらを摑んでいたトーマスの腕から、安堵のあまり力が抜ける。

「すっごい、びっくりしちゃったっ! ニナニナにくれたビリビリ、ニナニナからは、()でお返しするねっ! えい──っ!」


「うぁああああああああ──ッ!!!!」


 その瞬間、青白い電撃に襲われた隣の警官から苦痛の悲鳴が上がった。

「……あーあっ、真っ黒焦げ……壊れちゃったっ。キャパシティオーバーってやつーっ?」

 碧眼の金髪警官は全身が焼け焦げ、棒立ちのまま絶命する。


「全員、距離を取れ──ッ!!」


 トーマスの叫びで警官全員我に返り、この場を離脱するためすぐさま駆け出した。

 彼が一瞬だけ後ろを振り返ると、碧眼の金髪警官の遺体近くで、何やら両手を出して甘えるような仕草をしている、ニナニナが見えた。

「ん~~~──ラブリー……っ!! もっと、もっとっ! ニナニナに、試させてーっ!!」

 巨大な武器を軽々と持ち上げた幼女からどデカい一発が放たれる。


「──来るぞーッ!」


 トーマスは大声を発しながら間一髪で回避するも、近くにいた警官2人はそれに巻き込まれ跡形もなく消し飛んだ。

「きゃははははははははっ! 弾け飛んじゃったっ! でも玩具まとは逃げたら、ダメなんだよーっ?!」

 警官2人が降らせる血しぶきのカーテンの中を幼女は上機嫌に闊歩する。

 残ったのは、トーマス、デイヴィッド、小太りの警官の3人を残すのみとなった。

「もっと、もーっと! 遊んで、たいしーっ! 今度はちょっと弱くしちゃおうっと……えりゃあ──っ!!」

 その声と同時に、パトカーのボディが大きく凹み大破する。

 右側面の前後のタイヤは一度少し浮き、数秒後再び地に足を着いた。

「先、輩……ッ」

 デイヴィッドはちらりと隣にいるトーマスを横目で見た。すんでのところでパトカーは形を保っていたが、デイヴィッドの表情は普段とは掛け離れており、目が怯えきっていた。

「それそれそれそれそれそれぇっ!」

 何度も何度も、繰り返し放たれる重々しい一撃。

 高頻度で放たれる一発一発高威力の衝撃が一定間隔でパトカー越しに3人を襲う。

 狂い咲く少女の射線を遮蔽し、相手が出力を落としたとはいえ、トーマスたちをパトカーもろともスクラップにしてしまう勢いだった。

「し、死にたくなぁい──ッ!」

「あっ! 待てぇ──ッ!」

 トーマスの制止を振り切り、小太りの警官はエンジンがまだ生きている、無傷のパトカーに走る。

玩具まとが逃げた逃げたーっ! 逃さないよーっ!!」

 幼い少女ニナニナは、視界に捉えた獲物は何人たりとも逃さない。

 すかさず、彼女の銃口から高圧縮されたエネルギー弾が連続して発射される。


「──うわッ!」


 しかし──運命の悪戯か。彼はアスファルトに広がった赤い液体で足を滑らせた。

 運が良いのか悪いのか死を回避することに成功する。

 攻撃は空振りに終わり、獲物に逃走時間を与えてしまったニナニナ。避けられたのが余程不服だったのか、彼1人をターゲットを絞り込む。

「ら、ラッキィッ。こんな所で死んでたまるかよっ」

 恐怖のあまり彼の表情は笑っていた。


「ニコニコーっ! 逃さないよーっ!」


 後を追う彼女もまた、絶えない笑顔を振り撒いている。

 彼女の注意がトーマスとデイヴィッドから逸れた。


「デイヴィッド、全力で走るぞッ」


 トーマスの言葉にデイヴィッドは短く頷く。

 この隙にもう1台のパトカーで逃げようと、2人は走り出した。

 幸いにも2人は彼女に勘付かれることはなかった。

「ははッ、はははッ! 逃げるんだ、逃げるんだッ! クソー、どうしてだッ! どうして動かないッ!」

 小太りの警官が乗り込んだ、パトカー車内の後部座席で────何かがうごめいた。

 恐怖で狂う彼の頭は焦りと苛立ちに溢れ、小さな異変は視界から排除されていた。

「はぁはぁ……あっ?」

 落ち着きを取り戻した小太りの警官は、ここでふとルームミラーを確認する。

 すると…………どこか見覚えのある、赤い液体が映り込んだ。

 そのサイズは、成人男性を飲み込めるくらいには────デカかった。

 ゆっくりと振り返りながら、彼はこう言った。

「オー、マイ……ガッ──」

 遺言の途中で車内は血の水槽と化し、赤い液体は残る肉塊の消化を始めた。


 ─────────────────────────


「──早く乗り込めッ」


 ドアを閉めたトーマスはパトカーのエンジンを始動させる。


 キュルキュル、キュルルル


「先輩ぃいい! 早く、早く出して下さいッ!」

「わあってるよッ!」


 キュルキュル、キュルルル


 トーマスの頭にイヤな予感が走る。

 もう一度だけ、エンジンを始動させようとトーマスは試みる。

 

 キュルキュル、キュルルル


「クソったれがッ! 使えねぇなッ、このオンボロエンジンがッ! このタイミングで、どうして壊れるんだッ、チクショウ──ッ!!!!」

 焦りのあまり苛立ちを隠せず、ハンドルを思い切り叩くトーマス。

 何度やっても結果は同じ……それつまり死を意味する。

「もっともっと、ちょうだいちょうだ~い!」

 狩りを終えたのか、ニナニナが2人へ接近していた。

 遂に標的は彼らとなり彼女は牙を剥いたのだ。

「降りろ、トランクの武器を使うぞッ──」

「は、はいッ!」

 車のトランクから、トーマスはM4カービンを、デイヴィッドはモスバーグM500を、各々引っ張り出す。

「覚悟を決めろッ──行くぞ」

 そう言って2人は決意を固め、応戦を開始するのだった。

 

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