第52話 ゴジラ姉妹に終止符を打つために
S.W.A.T.と海軍精鋭部隊壊滅の一報が入ってから数時間後────
キュキキッ、キュリリリリッ
地面を小刻みに揺らすキャタピラ音。
ブルルルルルッ、ロロロロロンッ
負けず劣らず発せられる空気を切り裂くプロペラのブレード音は空を舞い、戦車の上空を複数機が通過。
そして不規則に増え続ける足音が幾重にも重なり、ズシンッと腹の底に重く響き渡る。
その音の主たちは、目的地へ向け崩壊寸前の建物間を進んでいた。
世紀の変わり目を意識された1999年──。
2000年をまもなく迎える最後の年だと。
本当であれば節目となる年の予定だったと。
誰もがそう思っていたある日──災厄の歯車が動き出してしまったのだ。
「…………っ!」
現場指揮官がハンドシグナルを出し、部隊一行は停止。
再び手信号で数名の隊員を先行させ、音の鳴る方へ向かわせる。
「────クリアッ」
指揮官は安堵し再度前進の合図を部隊に出そうとした──その時だった。
ビッシュュューーッ!
「…………ッ!」
ビシュューービシュュューーーーッ!!!!
空気を引き裂くような、連続した低い轟音が地面を揺らす。
ドゴオォォオオオオオオオオオンッ!!!!
先行した多数の|ガンシップ──武装ヘリコプターより、市街地にて発見した標的の1人目掛けて、ミサイルが複数発射されたという報告を受ける指揮官。
「敵だ──ッ! コンタクトッ!」
そして隊員の1人が、もう1人の目標を目視し声を上げた。
「目標視認した! 正面にいる、行くぞッ!」
「正面に敵だッ!」
「側面から援護するッ。戦車を前へッ!」
その合図を皮切りに、隊員たちは一斉に戦闘状態へと突入する。
「──本部に報告ッ! ターゲットに効果認められずッ!」
「了解ッ、目標にダメージなしッ!」
「この場にいる市民全員が、安全に避難するまで何としても食い止めるんだッ! 攻撃の手を緩めるな──」
攻撃指示を的確に送りつつ、避難誘導も並行して行いながら忙しなく動き回るArmy及びMarineだったが……
戦闘が開始されて30分が経過した頃──
「どけぇ! 邪魔だ!」
「ママぁああああ! パパぁあああああっ!」
「オワリだっ! 全部オワリだっ!」
周囲一帯は燃え盛る炎と、道のあちらこちらに力尽きた兵士の死体がごろごろと転がり始めていた。
「グハ──ッ!」
「ドワ──ッ!」
「キャーッ!!」
壁に、床に、空に──その視界を染め上げるのは、ビシャりと血の華が咲き誇る光景ただ1つ。
「制圧射撃をそのまま続けろッ! 食い止めるんだ!」
積み上がる瓦礫を壁にしながら、敵の猛攻から身を守り、側にいる味方を指揮官は鼓舞する。
ダダダダダダダダッ! ドゴーン──ッ!
「やってますが、もう持ち堪えるのも限界です──ッ!」
ズドーンッ! ダダダダダダダダダッ!
「もうまもなく援軍が到着する! それまで耐え切るんだッ!」
パニックに陥る人々の叫び声に負けぬよう、張り上げた兵士の声が現場に飛び交う。
地上を走る装甲車。雲を切り裂いて飛ぶ戦闘機。
「行かないと……あそこへ、行かないとッ!」
自分たちの生命を脅かしているのが何なのか。
逃げ惑う民間人の一部には非日常な光景に興味を掻き立てられ、その衝動を抑えられずに来た道を走って後戻りする者が後を絶たず、戦場は入り乱れる。
「危ないですからッ! 下がってッ! 下がって──ッ!」
押し返そうと尽力する兵士たち。
しかしながら、次から次へと人が戦場へ雪崩込む。
「この狂人がっ! 死にたいのかっ!」
米軍は慌てふためく無力な一般人の対応に追われ、全力を出し切れずにいた。
「あはははははははっ! あたしぃ。絶対今、すっごく悪い顔してる」
キュリリリリッ──ドンッ!
自己陶酔する彼女へ、戦車砲から砲弾が発射される。
「────ガハッ!」
砲弾は少女の左半身に命中し、血反吐を吐いた。
「うあぁあああああっ! 秘密兵器、: No.96発動ッ!」
銃口の先を戦車へと狙いを定め──少女の両手に握られる二挺拳銃が火を噴いた。
キュイイイイイイイン──ドガアァァアアアアンッ!
「……恥じるべき傷と恥じても構わない傷を──あたしは明確に基準を設けている……」
視覚認識速度を超えたスピードが組み合わさり、キャタピラ部分より上半分の戦車の砲台が空中へ飛ぶ瞬間────。
プシャー──ッ!
狭き世界から解き放たれし紅き雫。
姉妹が憩うためだけの紅蓮に染まった噴水戦車が設置される。
「……傷は癒える。癒えるとはいえ──この体は全部あの子のものだ──ッ!! テメェらが汚していい代物じゃ、ねぇんだよ──ッ! クソボケがあぁぁああああああああッ!!!」
車内にいた乗員を皆殺しにすることで、少女は欠損箇所のあった左半身を無理やり修復させていた。
「んな!? 隊長っ、最後の1両がやられましたッ! もう敵を足止めできませんッ!」
「止むを得ないか──撤退だ。よく聞けっ! これより弾幕を展開しつつ、防衛ラインを下げ自陣へ後た──」
現場指揮官が全部隊に撤退戦への移行を伝えようとした────その瞬間だった。
『────こちら司令部』
無線に司令部からの連絡が舞い込んできた。
彼らはその内容を聞き逃さぬよう、一斉に耳を傾ける。
『まもなくそちらに、援軍が到着する──注意されたし』
無線連絡の後、彼らは後方から接近する気配を察知し振り返る。
「友軍ッ! 来てくれたかーッ!」
苦境に立たされていたこの状況を打開すべく、助太刀に来てくれたヒーローたち。
その嬉しさで思わず、兵士たちからは喜びの声が溢れ出るのだった。




