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狂氣の果て〜クルーエル・デッドエンド〜  作者: クロス
最終章:狂依存。その果て、

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第50話 Y2Kミレニアム合衆國事変対策本部

 オルカが重傷を負ったジョーズと帰還してから数時間後──


 NSTF機関本拠地に設置される、対策本部のある一室。

 その作戦会議室では、燭台(しょくだい)のロウソクの灯りのみで部屋全体が照らされており、今後の作戦方針を決定すべく、陸軍と海軍──そして|米国極秘研究組織の国家科学技術財団《National Science and Technology Foundation》の主要メンバーが集められていた。


「貴様らには今まで、合衆国における技術全般の中核を担ってもらっていた。だが⋯⋯これは一体、どういうことだ──ッ!!」


 地獄到来! と一面に書かれた新聞がバンッと陸軍元帥によって、対面に座るある人物の机の前に投げ渡される。


「はい⋯⋯存じております」


 指に挟む火の(とも)った葉巻のフィルターギリギリ。

 1番濃い一吸いを吸い切ったところで、その人物はタバコを灰皿に押し付ける。

 灰皿に積み上がる吸い殻の(しかばね)は、崩れたら負けだと煽らんばかりの絶妙なバランス保ちながら、新しい魂を待ち続けていた。


「存じていますだぁ〜? 貴様らの開発した技術兵器が、本来守るべき祖国とその民に、牙を剥いたのだぞッ!!!! どう責任を取るつもりだ──()()()()()()()ッ!!!」


 陸軍元帥は感情が剥き出しな怒号を飛ばし、机を勢いよく両手で叩いた。

「そうかっかなさらずとも。事の発端であるミスター・スティーブンに関しましては、()うにこちらで片が付いております。そして我々も、この事には十二分、重く受け止めているつもりです」

 ヴァレンタインはあくまでも冷静な態度で、陸軍元帥に対応していた。

「この状況で落ち着けだと?! 平常心を保ってられるほどの余裕は、先の捕獲作戦で既に(つい)えた。そもそもだ……将校に対して指図するとはお前は何様のつもりだッ! “閣下”と呼べ、閣下とっ!」

 彼女に数々の罵詈雑言(ばりぞうごん)が再び陸軍元帥より浴びせられる。

「お言葉ですが、陸軍元帥閣下。我々NSTFは創設以来、大統領の命令以外に従ったことはありません。ですので──我々がとやかく言われるようなことではないかと。それに急ぎの招集なのですから、本題に早く入りましょう」

 ヴァレンタインがそう促すも、彼のスルースキルは万能ではなかった。


「はぁーん? 貴様らは責任を大統領に押し付けるのか!? この薄情者めが──ッ!!!!」


 彼女は地雷を踏み抜いてしまい、陸軍元帥の逆鱗に触れてしまう。

「……まあ。この際そんな事は、もうどうだっていい。だがこれだけは胸に刻んでおけ──」

 ドサッと重力に身を任せ椅子に腰掛ける陸軍元帥。

「家族のため、国土のため、愛する者のため。故郷である祖国のために、我が軍の兵士は戦っているのだということを。我々がこうしてのんびり話している間にも、戦場で戦っている多くの尊き兵士の命が、貴様らの作った兵器で踏み躙られているのだぞッ!! 私の部下も、先日その犠牲になった。……これを許容し、黙って見ていられるほど落ちぶれた上官が⋯⋯どこにいるんだ? ⋯⋯ここにいる、そうここにいる私だ。ハハッ……ふざけるな──ッ!!」


 ダン──ッ!

  

 陸軍元帥は体を前へと乗り出し、握り拳を机へ一気に振り下ろす。

 叩き付けられた箇所は凹み、その手は赤い血で染まる。

「後方で踏ん反り返り、安全圏から指示を出す無能に、私は成り下がるつもりはない。自ら打って出るッ!」

 椅子から立ち上がると、陸軍元帥は部屋の出口へ真っ先に向かう。

 そんな部屋を出て行こうとする彼を引き止めるため、ヴァレンタインは敢えて挑発する。

「……現地へ赴いて、一体何をなさるとおっしゃるので? 早々に吹き飛んで散るのが目に見えていて、なお兵士を思い突貫しようとする。閣下のその心意気は非常に立派なことですが……少し怒りに身を委ねすぎかと──」

「な・ん・だ、とぉおおおっ!!!!」

 陸軍元帥は向き直ると、鬼の形相のまま彼女を睨み付ける。彼の感情は大噴火寸前であった。


「────不毛な争いはやめんか!!」


 今まで口を(つぐ)んでいた海軍元帥が突如声を張り上げ叫んだ。


「いがみ合いで時間を食い潰すほど、猶予が我々には残っていない⋯⋯違うか?」


 ヒートアップしていた2人を海軍元帥は一斉に(なだ)めた。

「こちらも、少々熱くなりすぎたようだ……話を再開しようか」

 旧友である海軍元帥の言葉を受け止め、陸軍元帥はドアノブからそっと手を離し、元居た席へと座る。

「こちらにとっても、あれは想定外の事態です。──とは言え、組織創設以来の歴代最大の過ちであるということには変わりありません。合衆国の歴史を(けが)不名誉(ドロ)は、全身全霊で即刻取り除く所存です。御二方には──どうかそのお力添えを頂けると、幸いです」

 ヴァレンタインの要請に海軍元帥は間髪入れずに、陸軍元帥は渋々頷いた。

「もちろんだともっ。第一、あのようなバケモノを諸君らの力だけで収められるとは、微塵も思っていなかったからな。報告にも上がった通り、現地に派遣したS.W.A.T.と海軍特殊部隊の精鋭が、現在交戦状態にある。当初は過剰戦力ではないか。わざわざ精鋭部隊を使わんとも、制圧可能ではないか、と……。しかし私は侮っていた。お前たちの技術力が、この世に生み出してはならないものを生み出したことに…………心底恐怖したよ」

 顔には出さないでいるものの、机下に隠れる海軍元帥の膝は僅かにビクついていた。

「今思えば在来戦力だけで、ここまで戦線を維持できているのが奇跡なぐらいだ。戦線はいつ崩壊してもおかしくはない。そう長くは⋯⋯持たないだろう。ジリ貧だ、あまりに。この状態が長く続いてみろ。兵士が足らず徴兵が始まり、国家総動員体制となることはまず免れないだろう──」

 旧友に続き、口を開いた陸軍元帥……しかし、より最悪の事態が脳裏を(よぎ)り、その顔を(しか)める。


「──パスだな。国家の総動員は、今回に限っては愚策がすぎる」


 陸軍元帥は「何故だ?」と疑問そうに首を傾げた。

「それは彼女の口から直接聞いてくれ」

 そう言われた彼の視線は、海軍元帥からヴァレンタインへと移る。

「では、お話しましょう。国家の総動員が、どうして悪手なのかを──」


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