第45話 ミライのピース
『……僭越ながら、ミスター・スティーブンに……進言致します』
遅れてやって来たボスにクルクスは跪き言った。
『……彼女にはまだ、利用価値があります。……人種でのご判断と、今までの結果は……適性を見定める、監督側に……一定の非が、あるのではないでしょうか? 先行投資におけるゴールを……見直すべきです。……また十分な素質が、彼女には備わっていると……あたしは考えます──』
淡々とした口調で彼女はそう続けた。
『それは君個人のお願いかね……?』
『……いえ、教官として……オーち──オルカの、潜在能力に可能性を……見出しただけのことです……』
『ほう……っ』
『………………』
指先で顎に触れながら、幼い兵器が申し出た提案に彼は──────
『ならば……道筋を正し、証明して見せてもらおうか。我々に、この組織に──必要な存在だということを』
と彼女に挽回のチャンスを与え、
『……望むところです』
と幹部の男の言葉に頷き返し、クルクスは体勢を起こす。
『──1ヶ月だ……1ヶ月待とう。主力として戦えるよう、短期間で鍛え上げるんだ────アーサー博士は……私に付いて来てくれたまえ』
彼はそれだけ言い残し、アーサーと共にこの場を後にする。
『……お言葉ですが。……この子を主力として、育てるつもりは……毛頭ありません』
『なに──?』
予想外の言葉に足を止めるスティーブン。
『……ですが──組織戦力における、最終兵器として……育成する所存です』
クルクスのその言葉に『……良いだろう、やってみせろ』と満足気に返し、再び歩き始めた。
『……はい。立派な合衆国兵にして……ご覧に入れましょう』
敬礼するクルクスに幹部の男は背中を向けたまま、並んで歩く博士にだけ聞こえる声量で呟く。
『クルクスが失敗したら──そうだな……君の武器開発の実験材料にでもしようか』
『それはどういう──』
前のめりの姿勢で、アーサーはスティーブンの顔を覗き込む。
『先の件。断れば彼女が実験体となる──ということだ。良き答えを期待しているよ、博士』
何が何でも、どんな手を使ってでも。
コイツは──
『……分かりました』
彼の要求を拒むという選択は……彼には無理だった。
『即答かね……? これは少々驚いたよ。あと数日は保留されると思っていた』
心底予想外だったと、彼の口から明かされる。
『今日はとても気分がいい──よしっ、ピザでも奢らせてくれ』
────後日、武器開発チームによる兵器開発は難航を極めたものの、無事試作の開発に成功した。




