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狂氣の果て〜クルーエル・デッドエンド〜  作者: クロス
序章:It is Bonkers

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13/21

第13話 極秘組織NSTF機関

「ミス・クルクスをお連れしました」

 扉前でノックと同時に声をかけ、相手側の返事を待つカラスマスク兵。

「──入れ」

「どうぞ、お入り下さい」

 カラスマスクの兵士は、正面扉を横にスライドさせ、クルクスに入るように促す。

 クルクスの入室を確認し、「失礼しました」と言いながらカラスマスクの兵士は扉を閉め、来た道を戻って行った。

 クルクスが入った部屋には、横長のソファが2つ相対するようにあり、中央には横長の机が1つ置かれている。

 机の上には、吸い殻でパンパンの灰皿があった。

 他にも、車内とは思えないほど豪華に彩られている。


「──クルクス、座れ」


「……はい」


 言われるがまま、クルクスは対面する形でソファに腰を下ろす。

 彼女の目の前にいるのは、足を組みソファに腰掛ける1人の女性。

 高身長で緩やかなウェーブのかかった金髪。

 ラウンド型サングラスでも隠し切れない、顔半分を覆う生々しい大きな火傷痕は、見る者の恐怖を増幅させる。

 軍用コートにとても似通った、組織特注の()()()()が着ることを許される、専用コートをスーツの上から羽織っていた。

 その両サイドには、肌がこんがりと焼けた屈強な男が護衛として立っていた。


「……ミス・ヴァレンタイン──」


 クルクスが話を切り出そうとした所に、ヴァレンタインは手で待ったをかける。

 スーツのポケットから何かを取り出した──タバコだ。

 葉巻を彼女が咥えると、箱を仕舞う前に先端に火が付けられる。


「……動きが早いじゃないか──クルクス」


 赤い液体を手足同然に扱い、クルクスは座った状態で、彼女にライターを差し出していた。

「……それが、務めですから」

「務め、ねぇ…………お前たちは下がりなさい。この子と2人きりで話がある」

「「はっ!!」」

 彼女の命令で護衛2人はそそくさと部屋を後にした。

 護衛が出て行ったのを確認し、ヴァレンタインは口を開く。


「クルクス。よもや忘れたわけじゃないだろうな……? 米国極秘研究組織われわれ、“国家《N》科学《S》技術《T》財団《F》”の目的を────」


 米国極秘研究組織、国家科学技術財団《National Science and Technology Foundation》────通称“NSTF”機関。

 冷戦時代に米国政府によって、秘密裏に認可及び設置された、クルクスが所属する秘密組織。

 世界中から「最高峰の頭脳」と称される科学者、技術者、研究者をこの一箇所に集約。

 これにより、米国は人類全体の技術発展を意図的に抑制し、水面下で技術的優位性を確立。

 世界の技術的な総取り状態を密かに作り上げることに成功した。

 ──結果、組織の技術力は既存の世界水準を遥かに凌駕し、その確固たる地位はもはや誰にも揺るがすことのできない、絶対的なものとなっていた。

 冷戦終結後も組織は解体されることなく、現在も驚異的な速さで、進化を続けている。


「⋯⋯もちろんです。⋯⋯片時も忘れたことは、ありません」

「なら一言一句言ってみろ」

「……はい。……あたしたち、NSTFの使命は――大いなる神の御名みなのもとに、侵略者、異分子……国家の安寧を脅かす、その全ての脅威を断罪し……排除デリートすることです」

「その通りだ。『神の御心』に従い、母なる祖国とその民に、一切の穢れなき永劫の夜明けをもたらす──それこそが、我々NSTFの存在意義だ。我々の技術は、世界中から選りすぐり結集した精鋭たちの賜物(たまもの)だ。従順な犬には『慈悲の免罪符』を、歯向かう愚者には、神の代行者として『冒涜者の烙印』をくれてやった。我々の玉座は、万の(しかばね)の上に築かれる神意そのものだ。その血塗られた礎を忘れるなど、決してあってはならない……だからこそ──ッ!!」

 ヴァレンタインは、束になった写真を力任せに、ドスンッと机に叩き付けた。

 机一面に広げられたのは、ニナニナに翻弄されるクルクスの様子を収めた無数の写真だった。

「『慈悲の免罪符』ではなく、『冒涜者の烙印』がお望みか……クルクス? 神意(しんい)の礎にその若さでなるつもりか……? 答えろッ──!!!!」

 拳が凄まじい勢いで振り下ろされ、机を激しく揺らし、乾いた衝撃音を響かせた。

 サングラスから覗く、煮えたぎるような鋭い眼差しは、一瞬たりともクルクスから視線を外さない。

「…………何か、誤解されています」

「誤解……?」

「……これは姉役の、演技に過ぎません」

「それにしても、随分とまあ親しい雰囲気そうだが……?」

 ヴァレンタインは一枚の写真を手に取り、クルクスへ突き出す。

「……普段と変わりがないように、見えます」

 表情が皆無なクルクスが、自由奔放のニナニナの世話を焼いている、一見問題がなさそうな写真。

「誤魔化せると思ったら大間違いだ。ここをよく見てみろ」

 そう言ってヴァレンタインは、写真に写ったクルクスの表情に指を当てる。

「ここ、反射的に表情筋が動いた跡があるだろう? 見慣れないものだから、正直見間違いだと思った──異論は?」


「……表情は──()()()()()()です。……敵を騙すなら、まずは味方からとも言います」


「──何が言いたい?」

「……それは、あなたがよくご存知のはず。……ミス・ヴァレンタイン」

「フッフッフッ、クックックッ──フハハハハッ!!」

 ヴァレンタインは思わず吹き出した。

「言うじゃないか、クルクス! 良いだろう。その度胸を認めて、今回は不問とする。だが、次はない」

 ヴァレンタインが空中に放おった物を、クルクスは触手を伸ばしてキャッチした。

「そろそろ切れる頃だと思ってな」

 それは携帯型吸入ステロイド薬だった。

「……感謝します」

「さてと……話はこの辺にして。現場で起きたことについて、報告を聞くとしようか」

「……了解ラジャー

 そしてクルクスは話し始めた。


 

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