第1話 カミサマはいるの?
全50〜60話で完結予定(現在中盤)
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救われるのは、私ではなくもしかすると……?
「カミサマはイタンだよ! ママの言った通りだったんだよーっ!!」
足元に転がっている数々の肉塊は、つい数分前までは人間だったものだ。
「あの日、ママはカミサマはいるって、言ったよね。ニナニナ、悪い子だから、カミサマなんていないって、ずっとそう思ってたの。でもね、ママ。ニナニナ、クーちゃんと会えたっ!! だいすきなクーちゃんと会えたのっ! ママ。ニナニナ、今すーーーっごーーーーく、幸せだよ──っ!!」
一方は長く伸ばされウェーブする熱狂と破滅、もう片方は短く切り揃った愛と無垢。
左右で髪の色味と長さが異なる、返り血を浴びた彼女の笑顔はあの頃と何も変わらない、無垢な太陽だった。
しかし、その髪色を言葉で表現するにはあまりにも不気味で、口に出すことすらも憚れる空気が漂っていた。
ふと、視界の端を十字架のヘアピンで留めた長い髪が風により靡くと、彼女の古い記憶が呼び起こされる──
「ねぇ、ママァーーッ!!」
トーストに厚くマーマレードを塗り、キッチンでフィッシュ・アンド・チップスの準備をしていた女性に、幼いニナニナが駆け寄る。
窓の外にはどんよりとした灰色の空が広がり、遠くでビッグベンの鐘の音が、重く湿った空気を震わせていた。
「なあに、ニナニナ?」
背中まで届く、柔らかなロングヘアを揺らす少女に、女性は手を止めて目線を合わせる。
「カミサマって、いるんでしょっ!?」
ニナニナは、深い森の奥を思わせるメドグリーンの瞳をキラキラと輝かせ、ママを見上げた。
「えぇ、カミサマはいるわよ。私たちのことを、お空から見守っていてくれてるわ」
「本当に……?」
「本当よ。だからニナニナ。いい子にしていれば、いつか必ず大切な人にカミサマは会わせてくれるわ」
「……そっか。やっぱり、カミサマって……いるんだねっ!!」
期待通りの返答が、少女の目をすうっと濁らせた。
「でもどうしたの? そんなこと突然聞いてきて──」
「ううん、聞いてみただけっ!」
すぐさま貼り付けた満面の笑みに、彼女は「そっかー」と疑いもなく笑い、ニナニナのさらさらした髪をくしゃりと撫でる。
「えへへ〜っ」
(……なんだろうこの気持ち……ママに撫でられると……とてもふわふわする)
その手のひらの温かさは、紅茶に溶ける角砂糖のように甘く、そして──酷く退屈だった。




