放送事故! 剥がれる仮面と暴かれる「彼氏」
「あっ、きゃあ!」
バシャッ!
透明の液体が、聖羅の顔面を直撃する。
「ご、ごめんなさい! 手が滑っちゃって! 大変、拭かなきゃ!」
りりかはタオルを掴むと、謝罪するフリをして、聖羅の顔を力任せにゴシゴシと擦り始めた。
メイクを落とすためだ。
ファンデーションが落ちれば、下の汚い肌が露呈するはず――そう信じて、親の仇のように擦る。
「痛っ……りりかちゃん、大丈夫だから……」
「ダメよ! メイクが崩れちゃう!」
りりかがタオルを退けた時。
そこに現れたのは、水に濡れてさらに瑞々しさを増した、ゆで卵のような「完全無欠の素肌」だった。
ファンデーションの色すらついていない。
「……え?」
りりかが絶句する。
聖羅は濡れた前髪をかき上げ、困ったように微笑んだ。
「もう……私、今日すっぴんで来たのに。タオルが汚れなくてよかった」
完全敗北。
りりかの手が震え始める。
俺――聖羅は、心の中で舌を出した。
お前の負けだ。だが、まだ終わらせない。
俺は炭酸水で濡れた服を気にする素振りを見せながら、俺をうっとりと眺めて放心状態のマネージャーに、潤んだ瞳を向けた。
【スキル「魅了」+「催眠音声」発動】
「……あの。タオル、もう一枚いただけますか? ちょっと服も濡れちゃって……」
甘く、困ったような声。
その響きがスタジオの隅にいたマネージャーの男の理性を、音を立てて引きちぎった。
彼は隣に居たスタッフから追加のタオルを奪い取ると、ふらふらとセットの中に乱入した。
自分の担当タレントであり、恋人でもあるりりかを押しのけ、吸い寄せられるように俺の横までやってくる。
「おい! 何してんのよあんた!」
りりかが可愛こぶるのを忘れ、素のドスの効いた声で叫ぶ。
だが、マネージャーは彼女を見ようともしない。彼女の声など、今の彼には雑音ですらないようだ。
彼の目は、濡れて艶めく俺の顔と身体に釘付けになっている。
「……君は、美しいな。本物の天使だ」
「えっ……?」
「りりかなんて目じゃない。僕が、君をプロデュースしてあげるよ」
配信中の、(おそらく)彼氏による公開浮気。いや、公開裏切り。
あまりの展開に、コメント欄が爆速で流れる。
『うわぁ……』
『りりか捨てられたw』
『NTR展開きたこれ』
『マネージャー、ガチ恋勢の目をしてるぞ』
りりかの顔が、怒りと屈辱で真っ赤に染まる。
信頼していたパートナーに、公衆の面前で「お前よりこっちがいい」と言われたのだ。プライドの高い彼女にとって、これ以上の屈辱はないだろう。
俺はマネージャーからタオルを受け取ると、申し訳なさそうに眉を下げてみせた。
だが、伏せた瞳の奥は獲物を前にした獣のようにぎらついている。
喉まで出かかった哄笑を必死に飲み込み、俺は「とどめの一撃」の照準を定めた。
(悪いな。事前打ち合わせの通話で『催眠音声』を使って全部吐かせたんだよ。お前がりりかと付き合ってることも、何もかも――お前自身の口からな)
さあ、仕上げだ。りりかのアイドル生命を、ここで確実に断つ。
俺は思いっきり潤んだ瞳でマネージャーを見上げ、怯えたように尋ねた。
「でも……マネージャーさんって、りりかちゃんの『彼氏さん』とかじゃないんですか? それだと……」
「大丈夫! りりかとは別れるから! これからは君だけだ!」
即答するマネージャー。
その言葉は、スタジオのマイクに乗って全世界に配信された。
俺は、ちらりとりりかの方を見る。
りりかは、あまりの事態に怒りと動揺で、目と口を大きく見開いて完全に固まっていた。
自分の彼氏が、公衆の面前で自分を捨てて、別の女に乗り換える宣言をしたのだ。
俺はカメラに向き直り、とびきり悲しげな顔で告げた。
「りりかちゃん、ごめんなさい……。でも心配しないで。私、りりかちゃんの『彼氏さん』を奪うつもりなんてないから……」
決定的な「彼氏バレ」と、公開処刑。
天使の仮面が、今、完全に粉砕された。
スタジオ内の空気が凍りつき、りりかはパクパクと口を開閉させるだけで言葉が出てこない。
致命的な一撃を放った俺は、もうこの話は終わったとばかりに視線を外した。
そして、受け取ったタオルで胸元を拭くフリをしてわざとらしく前屈みになった。
カメラの位置を計算し尽くした完璧な角度。
濡れて肌に張り付いた白いワンピースの襟元が重力で下がり、そこから形の良い双丘の谷間がチラリと覗く。
(どうだ! このチラリズムが嬉しいんだろ!)
俺は内心で叫んだ。
男が何を求めているか、どこを見たいか、俺は誰よりも知っている。だっておっさんだからな。
その一瞬の「サービス」に、コメント欄が爆発的な反応を見せた。
『うおおおおおおおお!』
『谷間ッ! 谷間ァアアアア!』
『スクショした! 家宝にする!』
『けしからん! もっとやれ!』
画面が埋め尽くされるほどの弾幕。祭り状態だ。
そして、その破壊力は目の前にいる男にも直撃していた。
マネージャーの男の目が、俺の胸元に釘付けになる。
彼の理性の糸が完全に焼き切れたのが見えた。
「……あぁ、すごい……触らせてくれ……」
男が涎を垂らしそうな顔で、俺の胸に吸い寄せられるように手を伸ばしてくる。
その指先が俺に触れようとした、その瞬間。
「きゃぁぁぁっ!」
俺は可憐な悲鳴を上げて、大袈裟に後ろへ飛び退いた。
その悲鳴を合図に、我に返ったスタッフたちが慌てて駆け寄ってくる。
「おい、やめろ!」
「配信止めろ! 早く!」
男が取り押さえられ、スタジオ内が怒号と混乱に包まれる中、配信画面はプツリと切断された。
(……あぶねぇ!)
俺は心臓を押さえながら、内心で冷や汗を拭った。
危うく、いつもの癖で「うわっ」とか「何しやがる」とか野太い声が出るところだった。
とっさに「きゃぁぁぁ」なんて可愛らしい悲鳴が出せた自分を、褒めてやりたい。
俺は混乱するスタジオの片隅で、ニヤリと笑った。
りりかの破滅、彼氏バレ、そして俺の被害者としての立場確立。
すべてが完璧。
今日の勝者は、間違いなく俺だ。
◇ ◇ ◇
【放送事故】天使りりか×聖羅 コラボ配信反省会 Part88【彼氏バレ】
1 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(日) 14:15:00
伝説を見た
2 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(日) 14:15:23
情報量が多すぎるwww
・聖羅ちゃんガチすっぴん(美肌すぎ)
・りりか厚化粧バレ&飲み物ぶっかけ自爆
・りりか彼氏持ち確定(しかも公開浮気される)
・最後マネージャー発情して襲いかかってBAN
3 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(日) 14:16:45
りりか終わったな
彼氏いたのもショックだけど、その彼氏に目の前で「りりかなんて目じゃない」って捨てられたのが惨めすぎる
4 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(日) 14:18:10
それより最後の聖羅ちゃんの谷間見たか?
あれは男なら理性飛ぶわ、マネージャーの気持ちも分からんでもない
スクショ永久保存した
5 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(日) 14:20:05
とっさの悲鳴可愛すぎた
あんなん守ってあげたくなるだろ
それに比べてりりかの顔芸よ……
6 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(日) 14:22:30
結論:聖羅ちゃんは本物の聖女。りりかは偽物。
解散!
7 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(日) 14:25:00
りりかの登録者数、秒速で減ってて草
全部聖羅ちゃんに吸われてるなこれ
天下交代の瞬間だわ




