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底辺おっさん、配信アプリで「TS聖女」に進化する ~最強の美貌で配信界の天使をざまぁします~【全11話完結済】  作者: duckman


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4/11

聖女爆誕

 深夜2時。

 俺の部屋は、異様な熱気に包まれていた。


 配信画面の同接カウンターが、狂ったように数字を上げている。

 【現在の視聴者数:1,200人】

 ついに、桁が変わった。

 『天使りりか』の配信から流れてきたアンチ予備軍、そして俺の「イケボ」と「兄貴分ムーブ」に惹きつけられた迷える子羊たち。


 彼らは今、固唾を呑んで画面を見つめている。

 画面にはまだ、ピエロのマスクを被った俺の顔だけが映っている。

 首から下は見せていない。

 だが、マスクの隙間から覗く肌の白さと、濡れたような瞳の輝きが、視聴者をざわつかせていた。


『今日、ついに顔出しするってマ?』

『この雰囲気、絶対イケメンだろ』

『Kenさん、マスク取ってくれ!』


 コメント欄が加速する。

 俺はマイクに唇を寄せ、甘く、低い声で囁いた。

「ああ、約束通り、今日は全部見せるよ。……でもその前に、少しだけ昔話をさせてくれ」

 俺は語り始めた。

 用意していた、極上の「嘘」を。


「俺はずっと、自分が嫌いだった。この世界の競争に馴染めなくて、ずっと底辺を這いつくばってた。お前らと同じだよ」


 同情と共感。

 コメント欄がしん、と静まる。

「でも、気づいたんだ。俺が本当になりたかったのは、『強い人間』じゃない。……誰かに愛される、『美しい存在』だったんだって」


 言いながら、俺は手元のスマホを操作した。

 アプリの画面に、あのボタンが表示されている。

 【登録者数:1,000人 達成】

 【報酬「性転換(TS)& 初級魅了スキル」がアンロックされました】


 俺は震える指で、『Yes』をタップした。


 ドクンッ!!


 心臓が跳ね上がる。

 これまでの「痩身」や「骨格矯正」とは比にならない、魂ごと書き換えられるような衝撃。

 骨が軋み、筋肉が溶け、再構築されていく。

 喉仏が消え、肩幅が狭まり、骨盤が広がる。

 胸の奥から、熱いものがこみ上げてくる。


「っ……あ、あぐっ……!」


 マイクが、俺の苦悶の声を拾う。

 だが、その声はすでに、低音のバリトンボイスではなかった。

 鈴を転がすような、高く、甘く、砂糖菓子のように可愛らしい少女の声。


『え? 今の声……』

『女?』

『ボイチェン切れた?』


 混乱するコメント欄。

 俺は荒い息を吐きながら、自分の身体を見下ろした。

 ダボダボになったシャツの隙間から見える、白く華奢な鎖骨。

 胸元には、ささやかながら確かな膨らみがある。

 そして何より、身体の奥底から湧き上がる、万能感。


 【スキル「初級魅了チャーム」を獲得しました】

 【効果:視線や声で、対象の好意を増幅させる】


(来た……!)


 俺は、俺じゃなくなった。

 いや、これこそが「俺」の完成形だ。


 俺はゆっくりと、顔に張り付いたピエロのマスクに手をかけた。

「……驚かせて、ごめんね」


 マスクを外す。

 長い黒髪が、さらりと肩にこぼれ落ちた。


 立てかけたスマホの隣にある鏡に映った自分の顔を見て、俺自身が息を呑んだ。

 そこにいたのは、天使りりかなんぞ比較にもならない。

 まだあどけなさの残る、16、7歳くらいの可憐な美少女だった。


 大きな瞳は子猫のように愛らしく、透き通るような白い肌は、触れただけで壊れてしまいそうな儚さを持っている。


 男なら誰もが「守ってやりたい」という庇護欲を掻き立てられる、奇跡のような造形。

 まさに「聖女」と呼ぶにふさわしい。


 俺はカメラを見つめ、涙を一筋、計算通りに流してみせた。

「はじめまして。……これが、本当の私」


 コメント欄が、止まった。

 あまりの衝撃に、言葉を失ったのだろう。

 数秒の静寂の後、爆発的な勢いでコメントが流れ出した。


『は!? 女!?』

『嘘だろ、超絶美少女じゃん』

『待って、今まで男のフリしてたの?』

『ボイチェン使ってたってこと!?』


 混乱する彼らに、俺は「聖女」の微笑みを向けた。

 手に入れたばかりの魅了スキルを乗せて。


「ごめんなさい。……私、怖かったの。女だってバレたら、また傷つけられるんじゃないかって。だから、機械を使っておじさんの声を出して、強い男の子のフリをしてたの」


 嘘だ。全部嘘だ。

 だが、今の俺の姿と声には、それを真実だと思わせる説得力がある。


「でも、みんなは優しかった。私の愚痴を聞いてくれて、励ましてくれた。だから……信じてみようと思ったの」

 俺は画面に顔を寄せ、視聴者一人一人の目を見るように、潤んだ瞳で訴えかけた。


「ねえ、男とか女とか、関係ないよね? 貴方たちが救ってくれたのは、この『心』だもんね?」


 ズドン、と。

 画面の向こうの男たちの心臓を撃ち抜く手応えがあった。

「俺たちは、か弱い美少女を支えていたんだ」という、歪んだ庇護欲と優越感。

 そして、「自分たちだけが彼女の真実を知っている」という秘密の共有感。


『当たり前だろ!』

『関係ない! 一生ついてく!』

『むしろ最高すぎる』

『Kenちゃん……いや、なんて呼べばいい?』


 画面がスパッチャの赤色で埋め尽くされる。

 1万、3万、5万……。

 コンビニバイトの月収が、わずか数分で超えていく。


 俺は口元を綻ばせた。

 ああ、チョロい。チョロすぎる。

 だが、これでいい。お前らは俺の養分だ。


「ありがとう……嬉しい。名前、変えなきゃね」

 俺はキーボードを叩き、配信者名を変更した。


 『Ken』の文字を消し、新たに打ち込む。

 【聖羅(Seira)】


「今日から私は、聖羅。……貴方たちだけの、聖女になるわ」

 俺は、花が咲くように微笑んだ。


 おそらく、ここに居る視聴者は全員魅了されただろう。

 その瞳の奥で、中身のおっさんが舌を出して嘲笑っているとも知らずに。


 【現在の登録者数:1,850人】

 【急上昇ランキング:3位】


 祭りが始まる。

 天使りりか、首を洗って待っていろ。

 本物の「悪魔」が、今、産声を上げたぞ。



 ◇ ◇ ◇

【聖女降臨】聖羅(元Ken)について語るスレ Part12【神回】

 1 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(火) 02:45:00

 神 が い た


 2 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(火) 02:45:10

 >>1

 それな

 興奮して眠れねえよどうしてくれんだ


 3 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(火) 02:46:33

 まさかの中身女、しかも超絶美少女とかいうラノベ展開

「男のフリしてました」って告白した時の上目遣い見たか?

 あれで落ちない男いんの?


 4 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(火) 02:48:12

 今まで「兄貴」って呼んでた俺、無事死亡

 これからは「聖羅様」って呼んで一生ついていくわ

 給料日だったから全額投げちまった


 5 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(火) 02:50:55

 てか、今まで男社会で苦しんでたって話、全部ガチだったんだな

 あんな可愛い子が男の声出して自衛してたとか……泣けるわ

 俺たちが守ってやらなきゃダメだろこれ


 6 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(火) 02:52:10

 正直、りりかより可愛くね?

 あっちの加工まみれとは透明感が違うわ

 今夜、歴史が変わったな


 7 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(火) 02:55:00

 >>6

 それ

 俺もりりかの登録解除してきた

 これからは聖羅一筋だわ


 8 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(火) 02:56:45

 おい、SNSのトレンド見ろ

「聖羅ちゃん」「ボイチェン」が1位と2位独占してるぞwww

 祭りだwwww


 9 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(火) 02:58:20

 某掲示板から来ました

 ここが女神の降臨地ですか?

 アーカイブ見たけどガチで震えた、明日会社休みます


 10 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(火) 02:59:12

 騙されんな、絶対AIか加工だ

 あんな顔はこの世に存在できない


 11 名無しさん@配信中:202X/XX/XX(火) 03:00:00

 りりかの囲いだったけど目が覚めた

 あっちが「アイドル」なら、こっちは正に「聖女」だわ

 格が違う

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