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『筋肉の詩(うた)を、君に。』 ――笑われる勇気を、青春と呼ぶなら。  作者: 南蛇井


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(坂井の登場 ― 光の中心)

坂井が登場した瞬間、体育館の空気が変わった。


まるで照明が彼の動きに合わせて呼吸しているようだった。

日焼けした肌が汗をまとい、スポットライトを受けて眩しく光る。その光は反射ではなく、自ら発しているように見える。

澄音は思わず息を呑んだ。


歓声が渦を巻く。

「うおーっ!」「坂井ー!」「いけーっ!」

体育館全体が、名前という呪文で一人の少年を支えている。


澄音はその真ん中にいる坂井を見つめながら、心の中で呟く。


まぶしい。

けれど、それは虚飾の光ではない。

彼は、自分の“信じる”を体で証明している。

そういう光を、私は知らなかった。


ステージ中央に立った坂井が、ゆっくりと両腕を掲げる。

照明が一斉に集中し、観客の声が弾ける。


――「ダブルバイセップス!!」


筋肉が、まるで生きもののように光を吸い込み、形を変える。

汗が滑り落ち、光を線に変えて彼の体を縁取る。


詩人の世界における“光”とは、通常もっと繊細なものだった。

たとえば月明かり、ガラス越しの午後、あるいは涙の縁。


だが今、目の前にあるのは――肉体の光。


澄音はノートを閉じた。

もはや言葉で説明できる領域ではなかった。

ただ、胸の奥で、何かが音を立てて揺れた。

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