表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『筋肉の詩(うた)を、君に。』 ――笑われる勇気を、青春と呼ぶなら。  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/40

(体育館の喧騒と異世界感)

体育館の空気は、詩には向かない。


そのことを、澄音は入場して三秒で悟った。

ステージを照らすスポットライトはやたらと眩しく、スピーカーから流れるBGMは陽気すぎた。観客席ではクラスメイトたちが声を張り上げ、笑いと汗と紙吹雪のような熱気が、言葉の隙間を埋め尽くしている。


彼女は端の席に腰を下ろし、膝の上にノートを置いた。

開いたページの白さが、この喧騒の中ではやけに無防備に見える。筆箱からペンを取り出す手が、少し震えているのは――緊張ではなく、場違いな意識のせいだ。


体育館の空気は、詩には向かない。

汗と笑いが、言葉よりも先に飛び交っている。

けれど、私はここにいる。


軽口ひとつで、言葉に責任を持つ羽目になった詩人として。


観客席のあちこちから、坂井の名前が叫ばれるたび、澄音の胸が微妙に揺れた。

その振動はまるで、詩行のあいだに無理やり差し込まれた感嘆符のようで――音と熱の渦の中、彼女だけが静かに息を呑んでいた。


ノートの片隅に、ふと小さく書く。

「筋肉という言葉が、こんなに響く日が来るとは。」


書いて、自分で苦笑した。

今日の空気は、どこまでも現実的で、どこまでも不詩的だった。

だがその現実の只中に、なぜか目を離せない何かが、いま光を放とうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ