3.第1話のネームチェック
待望のネームチェック!
原作者の私は監修という立場なので、イチから作品作りに関わるわけではなく、すでに何度も相談して作りあげたネームを、最後に見せて頂いて意見を出します。
原作者に見えている物語の世界と、読者さんに見えているものは違います。小説のイラストを担当されるよろづ先生、漫画の作画をされるひつじロボ先生にも、それぞれがとらえる『魔術師の杖』があります。
互いに見えているものを否定するのではなく、それぞれが持つ世界観を重ねることで、物語により広がりや奥行きを出す。そんな作業を繰り返しました。
私は「ネリアの心情だと、この言い回しはちょっと違和感がある」「グレンのしょぼくれ感はしっかり出して下さい」など、指摘したり注文をつけたりしました。
逆にひつじロボ先生から、「この場面はこういう意図で、『魔術師の杖』を知らない読者さんに伝わりやい……ということを意識しています」と、展開について説明されることもありました。
☆変えてもらった点。
「『倉庫』→『素材庫』かなと思いますが、漫画では分かりやすく今後も『倉庫』と呼ぶ、というのであればこのままでいいです」
→『素材庫』に直ってました。監修といってもこんな感じ。
漫画の場合、重要なのは作画による演出です。読む人をワクワクさせたりドキドキさせたり、笑わせて時には泣かせて。1話目はまだ謎が多いけれど、その1話にギュギュっと『魔術師の杖』が詰まっています。
そういえばマグカンの担当者様は、なろうの冒頭を読んで「この場面を漫画で見たい!」とオファーして下さったのでした。
ひつじロボ先生が描かれるネリアの表情は、とても生き生きとしています。かぶっていたフードを脱ぐところから、髪の扱いに手を焼いている感じ、素の淡々としたしぐさ、横顔も可愛いです。
複数人がでてくるコマの位置関係や、カメラワークなどもしっかりしていて、横開きの紙面を意識したストーリー展開には、緩急があって見応えがあります。次のページをめくらせる引き、そしてめくったとたん目に飛びこんでくる決めゴマ。
ネリアだけじゃなく、他のキャラクターたちにもそれぞれ、見せゴマが用意されていますよ!
どのキャラクターも特徴をよくとらえていて、よろづ先生のキャラデザインとも違和感なくなじんでいますし、しかも表情で全員の性格までわかります。
個人的にはひつじロボ先生がキャラデザインされたカーター副団長!
グレンもいいんですが、カーター副団長がわかりやすい悪役で存在感があります。
この1巻で副団長が頑張らないと、2巻のコミカライズはありません。愛娘のメレッタちゃんに会いたかったら、彼にはぜひ粉骨砕身、ギトギトな悪役を演じて頂かなくては。
ひつじロボ先生の線は力強く迷いがないですし、それでいて繊細さも随所に見受けられ、描かれる『魔術師の杖』には、コミカルな柔らかいタッチの中に、人を酔わせる『毒』のようなダークさも垣間見えます。
モノクロの表現も白黒のバランスがよく、画面が単調にならないようにカケアミを使ったグラデーションなど、細かなところで情感をかもしだす演出が光っています。
とりあえず導入部、最高です!
原作ではあっさりと終わる、ネリア目覚めのシーンをしっかりと描いて下さいました。ネリア相手にボソボソしゃべるグレンも、またいい表情です。
ふたりのやり取り、しょっぱなからホロリとさせます。ネリアとグレンの関係がとてもいいのが伝わってきます。
そして『魔術師の杖』の読者さんならおわかりでしょうが、この先の展開……カーター副団長が出てきたら、そのあと顔面偏差値がいきなりドカーンと上がります。
「見開きに出てくるイケメンはどこに⁉」と思っていた読者さんを、めちゃくちゃ焦らしてここまで引っ張る!
だいじょうぶ、マグカン様は逃げません。
ページは飛ばさず、ネリアのくるくる変わる表情や、枯れ爺グレンの渋いセリフ回し、ギラギラのカーター副団長を堪能してから、ゆっくり先へお進みください。
読んだらイイねボタンを押してね!
イケメン竜騎士ライアスは、すっきりさわやかクールミントみたいな登場です。美形ふたりがそろうと、美麗、綺麗、壮麗、淡麗……とにかく読者さんの心臓が心配です。
表情豊かなライアスと淡々とした魔術師レオポルドが、緩急のある組み合わせです。レオポルドが冷静なツッコミ役かと思いきや、けっこう真顔でボケをかまします。
あとは41p.3コマ目のレオポルドに注目して下さい。私はこのレオポルド、アイコンに頂きたいなと思いました。
なんと第1話は44ページのボリューム。あっという間に読み終わったという方は最初のページに戻り、もう1回読み直すのもアリです。
読んだらイイねボタンを押してね!(大事なことなので2回書きました)
【2025年11月16日追記】
実はコミカライズ1話目のグレンとネリアのやり取りは、2024年6月に書かれた『魔術師の杖』504話『ネリア、グレンとお風呂の話をする』が使われています。
コミカライズが決まった後に書いたSSです。私からは「使ってほしい」とは伝えなかったのですが、これまでしっかり読んで下さったんですね。
ひつじロボ先生が加えたアドリブを言う時の、ネリアの表情に注目して下さい。
次回の『魔術師の杖 THE COMIC』制作記は、第一話から派生したSS『畑作り』です。
デーダス荒野で暮らすネリアとグレンのお話。









