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ヒーローたちの内緒話(1)

今回ちょっとだけ長くなりましたので、2回に分けました。

「は~~~。異世界召喚されただなんて、いまだに実感わかないな~」

 智也がソファの背もたれに体を預ける。


「ふふふ。皆似たようなものよね」

 祥子はテーブルに並んだお菓子を一つつまんで口に運ぶ。

 提供された飲食物に害がないか、鑑定魔法で確認済みだ。


「ん。このクッキーみたいなお菓子、普通に美味しい」

 少々失礼な感想を祥子がもらすが、その趣旨は理解できる。


「異世界ものの小説では、食文化が未発達で、転生や転移した主人公が美味しい食事を広めるパターンがあるものね」

 祥子の影響でライトノベルをたしなむ程度に読んでいる朝香が言う。


「この世界では何度も異世界召喚を行ってきたらしいから、食文化を発展させてくれた異世界人がいたのかも」

「感謝感謝。和食っぽいものもあればいいなあ」


 1階の談話室。

 テーブルを挟んで、男女に別れて3人ずつ並んで座っている。

 女性側は右から朝香、祥子、舞。

 男性側は智也、凛太郎、光希。


 老魔法使いは帰っていき、世話係たちはそれぞれの仕事に向かってもらった。

 そんなわけで、現在は召喚された6人の戦士たちだけとなっている。


 自分たちの周辺には光希が幻影の魔法をかけている。もしこの部屋の様子を誰かが覗いたら、先週放送された「スクウンジャー」の話題で盛り上がる6人の姿が見えるはずだ。

 魔法がある世界なら、監視や盗聴の魔法で覗かれているかもしれない。

 念には念を入れたのだ。


「それじゃあ、ミーティングを始めるね。不安や疑問に思っていることがあったら、先に話し合っておきましょうか?」

 6人の話し合いで議長を務めるのは、だいたい朝香の役目だ。

 仲間たちいわく、「だってレッドだから」とのことだ。


 はいはーい、と真っ先に手を挙げたのは智也。

「魔王ってさ、ボクたちみたいに召喚されたんじゃないかな?」

「やっぱりそう思う? 突然現れたっぽい感じが怪しいわよね」

 智也と祥子の間では意見が一致したようで、盛り上がっている。

「私たちと同じく、魔王も召喚の被害者かもしれないのね」

 舞はしんみりとしている。


「ちなみに、ここが何かの作品世界ということはない? 人物や国の名前を聞いても、ピンとくるものはなかったけど」

 智也が指摘したのは、ライトノベルあるある的な可能性だ。


「ラノベやゲームの知識は智也君が一番でしょ。よっぽどマイナーな作品か、BL・乙女ゲームあたりの世界かもしれないけど、私たちが元ネタを知らないなら対策のたてようもないし、ここは『そういうこともあるかも』ぐらいでいいと思う」

 祥子の言葉に、凛太郎や舞もうなずいている。


「今は色々な可能性があることを胸に留めておくのが良さそうね。邪妖族や魔王とも、可能なら会話しておきたいね」

 朝香はそのように締めた。


「相手の情報はおいおい調べるとして、まずは自分たちの能力の確認をしておきたいかな。魔法やスキルの威力や、ブレスレットに付属している機能もね」

 と、挙手して祥子が言う。


 ブレスレットは革のバンドに銀の装飾が施され、いくつかの宝石がはめ込まれている。

 中央の大きい宝石はメンバーの色に合わせてあり、変身機能が。

 その上側に二つ並んでいる宝石は通信とスクリーン。音声会話のみでの使用もできるが、スクリーンを表示させてビデオ通話もできる。画像や音声の送受信も可能となっている。

 下側に並ぶ小粒な宝石はアミュレット。それぞれ毒、まひ、眠り、石化、洗脳を防いでくれる。


「アミュレットの動作確認は、他の話題を検討した後でしましょうか。変身と通信は庭に出た時でいい?」

 朝香が確認を求め、仲間たちは同意する。


 次の話題を求めたところ、舞が手を挙げた。

「実は、お城からこっちにくる間に、擬態シノビをいくつか放ってきたよ。今頃は情報を得られそうな場所を探してお城の中を移動していると思う」

「おお、舞ちゃん、グッジョブ!」

 隣に座っている祥子が肩を抱き、ほめたたえる。


 擬態シノビとは、スクウンブラック専用の情報収集用アイテムだ。小指ほどの大きさで、忍者の姿をしている。ドラマの中ではマスコットキャラ的な可愛らしさで人気がある。


 普段は魔力で透明化させてブラックの髪や衣類にくっつけている。髪をかき上げたり服のほこりを払ったりという、何気ない仕草で擬態シノビを解き放つ。

 ブラックの体を離れた擬態シノビは、時間の経過とともに透明化が解ける。そこで周囲に溶け込むように色や形を自在に変化させる。植物の葉の1枚に化けたり、壁紙の模様を真似したり。

 擬態シノビはブラックの意図をくみ、自発的に移動し情報収集を行う。


「重要そうな情報を入手したら報告がくるはず――ドラマと同じ仕様ならだけど」

 舞は少し恥ずかしそうに追加する。

 擬態シノビが録画したデータは、通信機能を使って仲間にシェアできる。急を要する情報なら、時間を問わず送信することになった。


「あとさー、これも定番の懸念事項なんだけど、ボクたちに何らかの呪縛が施されているかもしれないんだよね。自分たちより強い存在を召喚するんだから、逆らったり逃亡したりしないような仕掛けがさ」


「じゃあ鑑定しちゃおっか」

 と、祥子が仲間の1人1人に鑑定魔法を使う。


「うーん……。状態異常にはかかってないわねー」

 少しほっとした空気が流れる。


「それ関係で報告したいことがあるんだ」

 それまで静かにしていた光希が右手を挙げる。

読んでくださって、ありがとうございます。

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