表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/55

魔王が仲間になりたそうにこちらを見ている!?

 6人は妖精城の前に転移する。

 城の右半分が壊れているのは、前回と同じだ。


「おお、待っていたぞ勇者たちよ」

 城から真っ先に現れたのは、妖精女王だった。


「一緒に転移したはずなのにわらわ一人だけだったから、心配したのじゃ。魔王殿が事情を説明してくれなければ、探しに戻るところだったのじゃ」


「女王様……」

「心配かけてごめんなさい」

「でも気にかけてくださって、ありがとうございます」

 妖精女王の前で、勇者たちは口々に謝罪や感謝の言葉を述べる。


「さあさあ、城に入るがよい。魔王殿も楽しみにしておるのでな」

 うきうきとした様子で促してくる。


「あ、そうでした。実は私たち、こういうものを作ってたんですが」

 と、祥子が例の結界石をアイテムボックスから取り出し、自分たちが計画していたことを話す。


「なるほど。お主たちもお主たちのやり方で対策を取ろうとしてくれていたのじゃな」

 愛しいものを扱うように、妖精女王は結界石を撫でる。

「この結界石は森に配置しよう。約定の効果と併せて安全がより確実になるからの」

 にっこりと微笑む姿は慈愛に満ちている。


 妖精女王に案内され、魔王の研究室へ向かう。

 中庭にはやはり石碑はなかった。


「すごい。本当にやってのけたのね」

「う~ん。漫画の主人公みたいだね」

「200年という歳月を犠牲にしてまで召喚者たちを助けるとは。敬服の念を抱かずにはいられないな」


「それは本人に直接言ってやるがよいぞ」

 研究室に足を踏み入れると、そこに魔王が待っていた。


「無事に戻ってこられたようで、安心した」

 何事もなかったかのように落ち着いた雰囲気でたたずんでいるが、彼は事情を知るものが誰もいない状況で一人200年の時を過ごしてきたのだ。

 歴史の流れを変えないように。しかし召喚者たちは元の世界に戻してあげて。


「魔王様……」

 本人を目の前にして、なかなか言葉が出てこない。

 魔王もその心情が理解できたのか、少し砕けた笑顔を見せる。


「たしかもう一人の私に、君たちへの伝言を託したはずなのだがな」


 6人は「まさか……」と顔を見合わせる。

 目を見かわして同時にその言葉を口にする。


「『無茶しやがって』?」


「そう、それだ」

 魔王は破顔する。


「なんだか、シリアスな雰囲気がどこかに行っちゃったね」

 智也が頭をかきながらそんなことを言う。


「私自身が選んだ行いだ。君たちが心を痛める必要はない。それより200年ぶりに出会ったのだ、別れの前に話でもしないか?」

「そうですね。私たちも魔王様が過ごしてきた200年に興味があります。ぜひ聞かせてください」

「そうとなったら、お茶の準備よ。アイテムボックスにはまだお茶もお菓子も残ってるからね」

 祥子が元気よく仕切る。


 中庭にテーブルセットを用意して、妖精女王、魔王、人間6名でのお茶会となった。

 丸い大きなテーブルを囲み、魔王を起点にして時計回りに朝香、智也、祥子、凛太郎、舞、光希、妖精女王が席についている。


「先ほどの茶番劇、こちらでも見ていたぞ」

「楽しそうに悪役を演じておったのう」

 魔王と妖精女王から、面白がるような笑顔が向けられる。


「聖獣ちゃんたちは今まさに魔法陣刻み行脚中なのよね~。帰ってきたら、うんとねぎらってあげなくちゃね」

「その聖獣たちだけど、結構楽しんでいるみたい……」

 舞が遠慮気味に申告する。


 自分の聖獣とは、テレバシーで意思の疎通ができる。ナイトウルフも擬態シノビと同じように、映像を転送できるのだ。


 テーブルの上にことりと置かれた魔道具から、スクリーンが浮かび上がる。

 その映像は、ナイトウルフの視点から送られている。


『よおし。次の町に来たぞい』

 張り切るアースドラゴンの大きな背中の上で、幼体化した聖獣たちが、わちゃわちゃしている。


 アースドラゴンが威嚇するように吠えると、おびえた子どもたちが泣き叫ぶ。

『ぐっ、子どもを泣かせるのはワシらの望むものではないのじゃが、今は心を鬼にして悪役を務めねばならぬな』

『ええ。本当に心が痛みますが、あの魔法陣を恐ろしいものだと認識してもらうためには、仕方ありません』


『怪人役のバイトをしていると思えばいいんだっポ。本気で怖がらせてナンボだっポよ』

『お前、さっきの町ではアイスタイガーと組んでノリノリで猛吹雪吹かせてたよな』

 と、ナイトウルフの冷めた声。


『えぇー、何のことだっポ~?』

 明後日の方向を向き、ふゆーふゆーと口笛を吹く真似をする。


『あれは”悪役ムーブ”というものだ。決して遊んでいたわけではない』

 心外だ、という表情でアイスタイガーは尻尾を振る。


『地面が水浸しにならないようにファイヤーちゃんがこっそり乾燥してくれたことに、感謝なさいね?』

 しっかり見ていたらしいクリスタルオウルが指摘すると、ホーリーピジョン、アイスタイガーに加え、ファイヤーバードまでが身を縮こまらせた。


 聖獣たちの会話を見た一同は、くすりと笑ってしまっう。


「地球に帰ったら聖獣ちゃん達ともお別れなんだよね~。帰る前にしっかりモフらなくちゃ」

「そっか。お別れなのね」

 舞が寂しそうにスクリーン上の聖獣たちを見つめる。


「いや、ボクはそんなことない、に1票だね」

 自信たっぷりに智也が言ってのける。


「聖獣に関する公式設定か」

 凛太郎のつぶやきに、智也が「そう、それ」と笑顔になる。


「スクウンジャーが呼べば、現れるんだよ。”どこにいたとしても”、ね」


「じゃあ、地球に戻っても変身したり魔法やスキルを使ったりできるの?」

 舞の質問に、今度は歯切れが悪くなる智也。

「どうだろう。地球に魔素がないなら、魔法や魔素を消費するスキルは使えないと思うんだよね」


「元の世界に戻るのなら、今まで通りの生活で十分よ」

「まったくだ。平凡で平穏が一番だ」

 朝香、凛太郎の言葉に舞もうなずいている。


「堅実派3人衆は相変わらずね。まあそれはさておき、今度は魔王様のお話を聞きたいんですけど」

 と、祥子が話題を振る。


「ああ、それは構わないが。せっかくなので、私のことはフィアードと名前で呼んでくれないか? 私は君たちの上に君臨する存在ではなく、同じ困難に立ち向かった同志だと考えている。できれば敬語も省いてほしい」


 その言葉に、祥子、智也、光希が短く息をのんだ。


(魔王が仲間になりたそうにこちらを見ている!)


 彼らの脳裏には、とある国民的ロールプレイングゲームの1場面風の絵が浮かんでいた。が、口にしないだけの理性はさすがに持っていたようだ。


 魔王が口を開く。

「私はまず、ファズマ王国で召喚が行われる場所にカメラを設置した。魔法陣を見れば、召喚者にどのような枷がつけられるのか事前に知ることができるからな」


「こともなげに言うけど、魔王様の頭脳と実行力って本当に規格外だね」

 賢者の能力を持つ光希だから、実感を持ってそのすごさがわかる。

「ミツキの頭脳もかなり優秀だと思うのだが」

「僕のはズルだから。シルバーの頭脳と魔法書のシリル先生がいたから、どうにかなったんだし」

 魔王の賛辞を、光希は即否定する。


「ではフィアード様、召喚者につけられた枷を、どのように外していったのでしょう?」

 いきなり敬語オフは難易度が高い。朝香はとりあえず名前を呼ぶことから始めてみる。


「召喚者にかけられた枷を、私の祝福で上書きしたのだ。例えば『ファズマ王国に背けば全身に激痛が走る』という枷ならば、『ファズマ王国に背いたとしても、いかなる苦痛も訪れない』というふうに」


 一同は感嘆の声を上げる。


「あ、じゃあ契約書の類はどうしたの?」

 祥子が挙手して尋ねる。


「それには若干苦労した。契約書は1人につき1通しか作られず、王城の重要文書保管庫にしまわれるからな」

「でも、やってのけちゃったんだよね?」

 期待に満ちた目で智也が続きを催促する。


「保管庫の位置を正確に測り、その中へ直接転移した。該当する契約書を探し出し、見た目だけはそっくりな偽物とすり替えた。そして入手した契約書は破り捨てた」


「え、破っちゃってよかったの?」


「うむ、問題ないぞ。あの国が作ったのは『本人の意思確認をとらない条項を含んだまま署名させた契約書』じゃから、破棄するだけで効果は消えるのじゃ」

 専門分野の妖精女王が答える。


「詐欺にあった人への救済措置のようなものか。いずれにせよ、召喚された人たちが無事に故郷へ戻れてよかった」

「契約書の入手手段がスニーキングミッション的なやつじゃなくて、ちょっと残念」

 凛太郎の真面目な感想のすぐ後、光希がおかしな残念がりかたをする。


 スニーキングミッションについて説明を求める魔王と、詳細に語る智也。

 「魔王様」のイメージが崩れるからやめてー、と抗議する祥子。

 面白そうなのでわらわも習うのじゃ、と輪に加わる妖精女王。


「やー、賑やかだねえ」

 光希は塩せんべいをパリポリと食べている。

「フィアード様も女王様も楽しそうだから、まあいいだろう」

 凛太郎は静かにお茶をすする。


「舞ちゃんてお料理だけじゃなくておやつ作るのも上手ね。このおはぎ、お店で買ったのよりおいしいわ」

 朝香が素直に賛辞を贈ると、舞は笑顔を見せる。

「わ、うれしい。お菓子作りは子どものころから好きだったの。そうだ、朝香さんの興味が持てるもの探しに、お菓子作りの回も入れよっか」

「ありがとう。楽しみだわ」


 お茶会は和やかに過ぎていく。

読んでくださってありがとうございます。

評価やブックマーク、リアクションなどいただけましたら、はげみになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ