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その後のアステリア王国

アステリア王国の国王、王太子たちへのざまあ回(一応)です。

 国王ラールワイーズは、息子たちに不信感を募らせていた。

 今の国の惨状は、息子たちが役目を果たさなかったせいである。

 本人たちは、やたらと強い人間たちに捕らえられ魔族の国で牢に入れられていた。と言い張っている。

 しかし息子たちを見れば、体は健康であるどころか栄養状態がすごく良く、装備には傷一つない。


 何をしていたのか正直に話すように諭しても、本当に牢の中にいたのだと答えるばかり。

 結局、離宮で謹慎させたままになっている。


 その王太子たちは、囚われていた際に食べた食事が忘れられないでいた。

「料理の名前も食材もわからないが、どうにかして再現できないものか」

「肉や野菜は似たようなもので代用できますが、調味料が……。不思議な味わいと香りで、原料の見当さえつきません」

 醤油や味噌だけでなく、出汁の存在にも気づいていない。


 王太子たちが何やら厨房で騒がしくしているという話を聞き、国王たちは頭を痛めた。

「まったく、一体どうしてしまったというのだ」

「娼館でおかしな薬でも盛られたのでしょうか」

 今までは野心に満ちた、行動力のある子どもたちだったというのに。


 悩む国王たちのもとに、ある時魔道具が届いた。

 国王の執務室の机の上に、気が付けば存在していたのだ。

 勇者たちが事前に用意しておいたものを、魔王が頃合いを見て転移の魔法で届けたのだが、それは彼らの知るところではない。


 その魔道具には手紙が添えられている。


「もしもご子息たちに不信感を抱かれ、親子の間に溝ができてお困りのようでしたら、この魔道具の使用をお勧めします。

ご子息たちが目的を忘れたわけではなかったことを、この映像が証明してくれます。

 勇敢戦隊スクウンジャーより」


「スクウンジャー? あいつらか……」

 国王と宰相、騎士団長は苦い顔をする。


 魔王とその配下を完膚なきまでに痛めつけようとしていたところを、邪魔した連中。

 他国では彼らの活躍を描いた映像が人気を呼んでいるらしいが、ラールワイーズ王たちにとっては腹立たしい存在でしかない。


 だが無視できない文言がある。

 結局国王たちはその魔道具を起動した。


 はじめに現れたのは、森の中で休憩中の王太子たちだった。

 これから魔王の妹をさらうことになっていて、その段取りを確認し合っているようだ。

 そこに6人組の人間が現れ、魔族の肩を持つような発言をする。

 王太子たちはなす術もなく捕らえられ、牢に入れられた。


(リアンナが王太子たちを殴ったシーンは編集でカットされている。以降、魔王や妖精女王の関与を気づかれぬように編集した映像が流れていく)


 次に映し出されたのは、雪山の中。

 牢の周辺に色とりどりの「魔貴石」が落ちている。

 王太子たちは這いつくばって遠くの石すらも集めようとしている。


「なんと……!」

 国王たちは感動した。

 息子たちは嘘などついていなかったのだ。

 敵方に捕らえられても、せめて「魔貴石」だけでも集めようと懸命に努力していたのだ。


 次に出てきたのは、楽しく食事する王太子たちの姿だった。

 よほど美味しいのか、少々行儀が悪いくらいの食べっぷりだ。


 その食事のバリエーションの豊富なこと。

 本当にこれは牢の中なのか? と疑問に思うほど待遇がいい。

 確かに太って帰ってくるわけだ。


 納得する気持ちを抱きながら映像を見ているうちに、問題のシーンに差し掛かる。

 王太子たちのいる場所が急速に上昇して、山の途中にある岩場を見下ろす形になる。


 そこで国王たちは見てしまった。


 そこは魔竜のトイレだった。

 魔貴石とは、魔竜のフンが結晶化したものだったのだ。

 自分たちは、魔竜のフンを独占するために戦争を起こそうとしていたのだ。

 諸外国にそれを知られれば、アステリア王国は何代にもわたって笑いものにされていただろう。


 というか、国王たちはその「魔貴石」を素肌に身に着け、妻や愛人にもプレゼントしている。

 周囲に自慢もした。

 せっせと磨いて口づけてもいた。


「う、うおおおおおお!」

 国王はたまらず身に着けていた「魔貴石」のアクセサリーをかなぐり捨てた。

 床に落ちたそれらを、げしげしと踏みつける。


「陛下、いかがなさいました!?」

 扉の向こうで護衛の兵たちが問いかけてくる。


「だ、大事ない。虫がおっただけだ」

 これは、自分たち以外には秘密にしなければならないことだ。


 そして理解した。

 自分たちの息子たちは、嘘などついていなかった。

 自分たちが「魔貴石」を身に着けているのを知ったからこそ、息子たちはその正体を言い出せなかったのだ。


「離宮に行き、息子らの謹慎をといてやらねばならぬな」

 国王の言葉に、宰相も騎士団長も大きくうなずく。


 離宮では、息子たちが厨房で何やら作業をしている。


 今ならばわかる。

 牢での食事が忘れられないのだ。

 どうにかして再現しようとしているのだ、と。


「ゴーミクズーダよ。私はお前のすべてを赦す。謹慎は只今より解除とする」

 国王の後ろで宰相も騎士団長も「優しくも厳しい父の顔」でうなずいている。


 親子の和解の瞬間である。


 それから国王たちは暴走した。

 王太子たちの忘れがたい味を再現するために、国中の料理人を呼び寄せたり、食材を求めて他国へ人員を派遣したり、熱心に行動した。


 ついに完成した「酸味もあるのにまろやかさもある黄色いソース(注;マヨネーズ)」で集団食中毒が発生し、それまで黙って耐えていた家臣たちがブチ切れた。

 穏やかであるがゆえに国政から離されていた王弟を担ぎ上げ、アステリア王国を造り直したのだった。



読んでくださって、ありがとうございます。

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よろしくお願いします。

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