表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/46

森へ潜入せよ!

 邪妖族との戦いがあった次の日。

 休暇をもらった6人は町へ遊びに行く、と言って城を出た。

 もちろん、実際に向かう場所はそこではない。


 こっそり森へ行くのだ。


 昨日城に帰還して、森へ調査に行きたい旨を申告した。

 国王も老魔法使いも、まだ早い、考え直してほしい、と引き留めた。

 6人は物わかりの良い学生のような顔で「はい、分かりました」と答えたのだった。


 人通りの少ない路地に入るや、光希が幻影魔法を使う。

「これで僕たちのことを誰も認識できなくなったよ」


「次は私が転移の魔法を使えばいいのね。昨日の町でいい?」

 了解の声が返ってくる。

「じゃあ、皆手をつないで」

 円陣を組んだ6人が、隣り合う相手と手を取り合う。

「行くよ――【転移】!」


 わずかに体が浮かぶ感覚の後、次の瞬間には昨日訪れた町にいた。


「おっ、大成功。早速行きましょ」

「森に入ったら擬態シノビを3つ放つね。私たちの前と左右を先行させて、変わったものや敵がいないか探ってもらうね」

「うん、お願い。後方の警戒は凛太郎さんにお願いして、前は私が行くわ」

「そうしよう。舞には広範囲の警戒をしてもらい、光希はマッピングだな。2人は隊列の中央にいて、前を祥子が、後ろを智也がガードしよう」

「オッケー。オートマッピング機能付きのシリル先生に任せてよ」

「うーん、シリル先生チートすぎる」


 それぞれに役割を決め、森へと入っていった。


 木漏れ日が降りそそぎ、空気はほどよい湿度を含み、快適だ。

 柔らかな草を踏む感触も心地よい。


「ここ、すごく居心地がいい場所ね。ラスボスのところへ向かっているはずなのに、森林浴してる気分になるわ」

 困惑しながら祥子が言う。


「私もそんな風に思ってたの。まさか魔王の罠ということはないでしょうけど」


「僕の幻影魔法はまだ効いているから、相手には見えてないと思うんだけどな」


「擬態シノビがたまに邪妖族を見かけるけど、のんびりしているみたい。あ、ちょっと待って。この先を真っ直ぐ行ったところに大きな石碑が建ってる」

 擬態シノビは空を飛ぶ生き物に擬態しているようで、視点は下から上へ移動していく。


「文字が刻んであるね。

『ファズマ王国に召喚されし異世界の勇者たちよ。召喚主たちの罪を知れ。そのうえで行動を決めよ』

――ですって」


 6人は顔を見合わせる。


「やっぱり王国は腐ってた説?」

 智也が呆れの混じった笑い顔を浮かべる。


「ファズマ王国が邪妖族に襲われる原因は自分たちにあるのに、それを隠しているか事実をねじ曲げるかしているのかしら」

「やだ。ありえそうでコワイ」


「この石碑には、魔道具みたいに術式が刻んである。データを送るから、皆も見てみて」

 自分が見ていた映像を通信機能を使って仲間にもシェアする。


 森の中にぽっかりと開けた場所があり、その中央に黒い石碑が建っている。

 縦長で平べったく、上3分の1ほどは何も刻まれてなく、ツルツルとした光沢がある。

 その下に先ほどの文言が大きく刻んである。

 さらにその下。丸い宝石のようなものがはめ込んであり、その中に術式が刻んである。


 その術式を大写しでとらえる。

 光希はそれを見ながら術式を読み解く。


「映像を再生する機能のようだね。あの宝石に触れると起動するんだと思う。実物を見ないと判断できないけど、触ったらアカンボタンの可能性もあるね」


 気になる文言を見せることで、魔道具に触れなくてはならない気持ちにさせる。

 そして触れたが最後、恐ろしいトラップのえじきになる。


 そういった危険が待ち受けていることも考慮しなくてはならない。

 歴代の勇者たちは、森へ入ったきり戻って来られなかったというのだ。

 警戒を怠ってはいけない。


「でも、行かないと何も進まないことも分かってるのよね」

 6人はそれぞれにため息をついたり考え込んだりする。


 そうして石碑を調べることを決めたのだった。


 森を真っ直ぐ進んでいった6人の目に、2メートルほどの高さがある石碑が見えてきた。石碑のてっぺんには白い蝶が留まっている。擬態シノビだ。

 そこは円形の広場になっていて、中央に石碑、周辺にはいく筋もの道がつながっている。


 6人は道らしき道を通って、真っ直ぐここへたどり着いた。

「まさか、どの町から入ってもここにたどり着くように計算されている?」

 ざわりと背筋に冷たいものが走る。


「舞ちゃん、あの石碑の周辺にトラップがないか探ってもらえる? 祥子は石碑に鑑定魔法をお願い」


 2人にその作業を行ってもらっている間、朝香たちは周囲の警戒をする。


 トラップはない。

 鑑定の結果は、さっき光希が説明した通りの内容だった。


「じゃあ起動してみるね。皆は念のため離れていて」

 1歩踏み出した朝香を、

「ちょちょちょ、待った待った」

と、祥子が引き留めた。


「危ないじゃないのよ。触った途端にどこかに転移させられたら、どうするのよ?」

「私なら脱出魔法が使えるし、いざという時にはファイヤーバードに来てもらうから大丈夫よ。それに擬態シノビを連れて行けば、舞ちゃんに居場所特定してもらえるでしょう?」

 安心させるように朝香が笑いかける。


「大丈夫大丈夫。これ本当に映像再生専用っぽいから」

 光希が軽い調子で歩いていき、無造作に宝石に触れる。


「賢者なのに勇者すぎる」

 ツッコミなのか称賛なのか、よく分からない独り言を智也がもらす。


 宝石に光が灯り、石碑の上部に四角い枠が現れる。

「おお、テレビみたい」

 6人が見守る中、その映像が始まる。

読んでくださって、ありがとうございます。

下のほうにある評価(☆☆☆☆☆)やリアクション、ブックマークなどつけていただけましたら、はげみになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ