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森、行っちゃう?

「いやあ、今回の邪妖族も弱かったね。イエローのパンチ1発で、泣いて逃げ帰っちゃうんだから」

 邪妖族が逃げ去った森をスクウンジャーの6人はながめる。

「手かげん用武器のおかげで、攻撃をするのに躊躇しなくてよくなったのが大きいな」


「じゃあこの辺りの調査をしましょうか」

 6人は変身を解除する。


 町に設置された柵は木でできていて、高さは1メートル程度。邪妖族の森と接しているのに、無防備に感じる。

 

「本気で対策するなら、高くて頑丈な鉄柵でもつけるわよね」

 例えるなら勇者の離宮のように。


「兵士の人たちに事情を聞いてみましょうか」

 朝香の提案で兵士の詰め所へ向かう。


「これは勇者様。先ほどはありがとうございました」

 祥子に治療してもらった兵士がにこやかに頭を下げる。

「どういたしまして。もう痛いところはないですか?」

「はい。訓練中の打ち身まで治ってますよ」


「ちょっと教えてほしいんですけど、この町の柵ってもっと頑丈なものにはできないんですか?」

 話の流れで、祥子が主体となって聞き込みをする。

「頑丈に……ですか。しても効果は薄いみたいです。連中は穴を掘るとか空を飛ぶとかできますからね」

「ああ、確かに」

「どうせ効果が見込めないなら、安く簡単にできるものがいい、ということなのでしょう」

 兵士は気楽な調子で笑う。


 柵の件は何となく納得できた。

 6人は森に面した門のそばに戻ってきて、円陣をくむ。


 のぞき見防止にと光希が幻影魔法をかける。邪妖族には、中継カメラのような役割を果たす「目」なる存在があるからだ。


「物理的な柵で邪妖族を防げないなら、魔法的な何かで対策できないかしら?」

 と、祥子が提案してきた。


 うーん、と考え込む仕草をしつつ、智也が答える。

「異世界ものでは、聖女の結界に魔物の侵入を防ぐ効果があるでしょ? で。このメンバーで聖女っぽいのはサチコさんでしょ。こないだ買ったガラス玉にパワーこめてみたら?」


「私は神官であって聖女じゃないよ。まあ試しにやってみるけど」


 祥子は不純物を取り除いておいたガラス玉を、アイテムボックスから4つ取り出す。

 両手のひらにそれらを載せ、祈りを捧げる。


(邪妖族来るな~、邪妖族入るな~。入ろうとしたらビリっと来るくらいして~)

 その祈り(怨念?)の甲斐があったのか、ガラス玉に光が灯る。


 その光は金色に輝くだけでなく、暖かみのあるピンク色を帯びている。


「そのストロベリーブロンドの光! いかにも聖女っぽい」

「ちょ、やめて。悪役令嬢ものだと『ざまあ』されるほうじゃない」

 智也の指摘に、嫌なものを想像する祥子。


「別に婚約破棄とか追放とかに加担してないから、大丈夫でしょ。とりあえず、鑑定鑑定♪」

 智也が促し、祥子と光希が鑑定魔法を使う。


『祥子の祈り石。長澤祥子が「邪妖族来るな~、邪妖族入るな~。入ろうとしたらビリっと来るくらいして~」と祈りを捧げてできた結界石。町の4隅に配置することで町そのものを覆う結界を作れる』


 鑑定の文言を読み、祥子は固まり、光希はふき出す。

「どうかしたの?」

 皆が不思議そうに2人を見ている。


「あ、大丈夫。町の4隅に置いたら結界作れるって」

 と、光希がフォローする。


「この石は検証のためにどこかに設置したいけれど、どうするべきかしらね」


「光希の頭にはこの国の地図が入ってるだろう。どこか候補を絞り込んで、そこに置いてみよう」


 光希は気軽にオッケーと答え、地面に森を中心とした地図を描いていく。

 森を中心に15の町があり、バツ印がついているのが邪妖族が現れた町だ。


「じゃあ、行くよ。ど、れ、に、し、よ、う、か、な、て、ん、の、か、み、さ、ま、の、い、う、と、お、り」


「これ、ズコー! っていうところ?」


 脱力した様子で光希の「絞り込み」作業が終わるのを待つ。

「これが……賢者?」

「いやいや、舞ちゃん。”が”じゃなくて”で”だよ」

 舞のつぶやきに智也が失礼な訂正を加える。


 ともあれ、結界石を置いてみる町は選んだ。

 帰りがけにその町に連れていってもらってもいいし、聖獣に乗せてもらって後でこっそり自分たちで置きに行ってもいい。


 次の問題は、今後どうするか。いつまでも訓練と邪妖族退治ばかり続けていても、仕方ない。

 召喚術については、まだ知識をインプットしている途中だ。

 

「森の中に入ってみる? 可能なら魔王にも会ってみたいけど、まずは調査ね」

「お、アサカさんからそれを言い出すとは意外だったな~。何しろ『最初の町』から『ラスダン』にいきなり行くようなものだからね~」

「良いと思うぞ。邪妖族が現れては追い払う、というのを延々と繰り返してもきりがないからな」


「凛太郎さんまで賛成したね~。慎重派3巨頭の最後の1角、舞ちゃんはどう?」

 手をマイクの形にして光希が舞に話を振る。

「私も賛成。脅威度を調べながら進んでみたらいいと思う。もし危険な反応があれば、擬態シノビを置いて帰れば対策をとれると思うし」


「私にも聞いてよ~。私だって慎重だよ?」

「サチコさんが何か言ってるけど、ここはハリセンチョップするところ?」

 智也はにこにこ笑っている。

「ひどっ、智也君ひどっ!」


 じゃれている2人は放っておいて、朝香は他のメンバーの意思を確認する。

「えっと、光希君はどう?」

「うん。僕も賛成」


 祥子と智也が駆け込みで賛成を表明して、森への調査が決定した。


 だったのだが、森へ入ることを空馬車の御者に伝えたところ、全力で止められた。

「ど、どうか今日のところは城へお戻りになってくださいませ。陛下やオズワルド様のあずかり知らぬところで勇者様が行方不明になられたら、私が罰を受けてしまいます」

 泣き出さんばかりの、必死の説得だった。


 彼らの中では「勇者が森へ入る=二度と戻って来ない」という図式が出来上がっているようだ。


 御者の立場を悪くするのも気の毒なので、今日のところは城へ帰り、国王か老魔法使いに報告することにした。

 もちろん、止められたら黙って勝手に行くのだが。

読んでくださって、ありがとうございます。

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